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保存効力試験と期限設定について

 弊財団で対応している試験のうち、「保存効力試験」と「期限設定」については、その名前からは試験内容などが解り難い点があるかと思います。
 今回は、これらの試験に関連する弊財団メールマガジンバックナンバーと併せて、この二つの試験の内容について簡単にご紹介させて頂きます。

1.保存効力試験について

 保存効力試験は、微生物を用いて点眼薬や化粧品など、多回投与容器中に充填された製剤、または製剤に添加された保存剤(防腐剤)の効力を評価する試験法です。
 保存剤は、それ自体が有毒であることが多いことから、ヒトへの安全性を確保する必要がある一方で、時間経過に伴う製品中の生菌数の増加をなるべく抑えなければなりません。また、保存剤の性質として、共存する成分により不活性化を受ける場合があることや、保存剤の種類により抗菌スペクトルが異なる点があります。このため、保存剤単体、或いはこれを用いた製剤の処方設計段階において、その添加量を可能な限り少なくするための検討試験が非常に重要であり、製品を「保存効力試験法」で評価することが必要となってきます。
 保存効力試験の試験手順については日本薬局方に記載されており、製剤または製剤に添加される保存剤単体に試験の対象となる5つの試験菌種(大腸菌、緑膿菌、黄色ブドウ球菌、カンジダ及びクロコウジカビ)の菌液または胞子浮遊液をそれぞれ接種し、試験菌の経時的な消長を追跡することにより、保存効力の有無を評価する試験です。この試験にて保存効力の有無を判定する基準は製剤の区分ごとに設定されており、また、接種する試験菌種は製剤の製造、使用・保存中にヒトや環境から混入する恐れのある代表的な日和見感染病原体です。これらの指定菌種に加えて、実際の製造現場や製剤そのものの性質などを考慮し、混入、増殖の可能性がある微生物を試験菌株として試験を行うことも重要となってきます。
 保存効力試験の詳細については、弊財団メールマガジンにて過去に取り上げているため、更に詳細な情報に関しては以下のURLの記事を参照下さい。

「保存効力試験について」
(財)食品分析開発センターSUNATEC 微生物検査室室長 吉田篤史

2.期限設定について
 食品の期限表示については、それまでの製造年月日表示に代わり平成7年4月より消費期限または賞味期限(品質保持期限)の表示が行われるようになりました。しかし、平成15年7月に「食品衛生法」及び「農林物資の規格化及び品質表示の適正化に関する法律」に基づく表示基準の改正に伴い、「賞味期限」と「品質保持期限」の2つの用語が「賞味期限」に統一されるとともに、「賞味期限」及び「消費期限」の両者についても定義の統一がなされました。
1)消費期限と賞味期限
 消費期限は、弁当、調理パン、惣菜、生菓子類、食肉、生麺類など、製造日を含めて概ね5日以内で品質が急速に劣化する食品を対象として設定されます。当該食品を定められた方法により保存した場合に、腐敗、変敗その他の品質劣化に伴い安全性を欠くこととなる恐れがないと認められる期限を示す年月日が表示されます。
 賞味期限は、 スナック菓子、即席めん類、缶詰など、品質の劣化が比較的緩やかな食品を対象として設定されます。当該食品を定められた方法により保存した場合において、期待される全ての品質の保持が十分に可能であると認められる期限を示す年月日を示しますが、当該期限を超えた場合であっても、これらの品質が保持されていることがあるものとなります。
2)消費期限と賞味期限の設定について
 消費期限及び賞味期限を設定するにあたり、食品全般に共通する科学的根拠のある期限設定を実施する為に、厚生労働省及び農林水産省より「食品期限表示の設定のためのガイドライン」が公表されました。この中には 1.食品の特性に配慮した客観的な項目(指標)を設定して試験を行い、2.得られた期限に食品の特性に応じた「安全係数」を乗じて表示する期限を設定する。また、3.特性が類似している食品に関する試験結果などを参考にすることも可能であること、4.消費者などから求められた時には情報提供することも記載されています。
 消費期限及び賞味期限は、個々の食品の特性を十分配慮した上で、食品の安全性や品質などを的確に評価するための客観的な項目(指標)に基づき、その期限を設定せねばなりません。この客観的な指標となるものが、数値化することが可能な理化学試験や微生物試験などであり、それらを総合して安全性や品質などを的確に評価可能となる期限を設定することが必要となります。基本的に、ここで設定された期限に対して1未満の係数(安全係数)を乗じ、客観的な指標より得られた期限よりも短い期間を設定します。この「安全係数」は、品質が急速に劣化しやすい食品については、品質が急速に劣化しやすいこともその特性の一つとして考慮し、期限を設定する必要があります。
 特に、客観的な項目については、食品の特性などに応じて、科学的・合理的に行うこととされており、当該食品に関する知識、経験、情報などを把握している製造業者などが責任を持って設定することが求められます。
 賞味期限、消費期限設定については、弊財団メールマガジンにて過去何度か取り上げているため、更に詳細な情報に関しては以下のURLの記事をご参照下さい。

「消費期限、賞味期限の設定について」 
(財)食品分析開発センターSUNATEC 分析業務統括 小林政人


「食品の期限表示についての最近の動き−期限設定時の安全係数をめぐって」
静岡県立大学食品栄養科学部客員教授 米谷民雄先生
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