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保存効力試験について
 保存効力試験は、「第十五改正 日本薬局方 参考情報 28.保存効力試験法」に記載されています。その記載内容をベースに、保存効力試験の概要を説明します。
背景及び目的
 保存効力試験法は、多回投与容器中に充てんされた製剤(例:点眼薬、点鼻薬など)、又は製剤に添加された保存剤(防腐剤)の効力を微生物学的に評価する方法です。
 本試験は、一般に製剤の処方設計段階や定期的な保存効力の検証などに適用されており、ロットの出荷判定試験としては行いませんが、最終容器に詰められた製剤中の保存剤の効果は、製剤の有効期間にわたって検証しなければならないとされています。
 ところで、保存剤はそれ自体毒性を有する物質です。ヒトへの安全性に対する影響を考慮せず、医薬品GMP:Good Manufacturing Practice(医薬品の製造管理及び品質管理に関する基準)に対応するために、また、単に生菌数の増加を抑制するために、多量の保存剤を使用しないように心掛ける必要があります。つまり、保存剤単体あるいはこれを用いた製剤の処方設計段階において、その添加量を可能な限り少なくするための検討試験が、非常に重要となります。
  以上のことから、本試験はすでに流通している医薬品や化粧品について、その保存効力を確認するための検証試験という位置付けというより、むしろ新しく開発された保存剤単体の適正添加量の検討(写真-1参照)や、処方設計段階にある製剤が実際に保存効力を有するか否かを検討する目的で実施することが多いようです。
保存剤添加量の検討
写真-1 保存剤添加量の検討
2.試験方法及び結果判定
 製剤又は製剤に添加される保存剤単体に、試験の対象となる試験菌(写真-2及び3参照)の菌液又は胞子浮遊液をそれぞれ強制的に接種、混合し、経時的に試験菌の消長を追跡することにより、保存効力の有無を評価します。なお、保存効力の有無を判定する基準は、製剤の区分ごとに設けられています。
  本試験で指定されている5つの試験菌種{大腸菌、緑膿菌、黄色ブドウ球菌、カンジダ(酵母)及びクロコウジカビ(カビ)}は、いずれも製剤の製造、使用若しくは保存中にヒトや環境から混入する恐れのある代表的な微生物で、日和見感染病原体です。これらの指定菌種に加えて、実際の製造現場や製剤そのものの性質等を考慮し、混入、増殖の可能性がある微生物を試験菌株として試験を行うことも重要です。
写真-2
写真-2
(左から)大腸菌、緑膿菌、黄色ブドウ球菌
写真-3
写真-3
(左から)カンジダ(酵母)、クロコウジカビ(カビ)
3.その他
 無菌製剤に接種した試験菌種以外の菌が発見された時は、重大な微生物汚染が起こっている可能性が強く、試験操作又は製造管理上の注意が必要です。また、非無菌製剤中の汚染菌数が、日本薬局方にある「非無菌医薬品の微生物学的品質特性」に定める菌数を超える場合も、同様に試験操作又は製造管理上の注意が必要です。
 なお、日本薬局方(写真-4参照)以外にも製剤又は製剤に添加された保存剤(防腐剤)の効力を確認する試験方法として、USP:United States Pharmacopoeia、EP:European Pharmacopoeiaなどが挙げられる。
4.参考文献
第十五改正 日本薬局方 参考情報 28.保存効力試験法
写真-4
写真-4 第十五改正 日本薬局方
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