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2007年に厚生労働科学研究事業の一環としてカビ毒試験法評価委員会が設立されました。本委員会は、食品のマイコトキシン分析および統計解析の専門家を集め、将来我が国で基準値が設定された場合に通知法となりえる方法または実態調査に用いられるマイコトキシン試験法の妥当性を科学的に評価する目的で設立されました。評価までの流れを表1に示しました。本評価委員会の詳細については国立医薬品食品衛生研究所のホームページでご参照下さい。 |
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国立医薬品食品衛生研究所のホームページ
表1 評価までの流れ |
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平成20年度には2つの試験法について評価を行いました。まず始めに、デオキシニバレノール(DON)およびニバレノール(NIV)の同時試験法のコラボラティブスタディ(複数機関共同試験)について簡単にご説明します。DONとNIVは、ムギやトウモロコシ等の病原菌であるFusarium(フザリウム、赤カビ)属のカビが産生する消化器系および免疫系傷害の毒性を示すマイコトキシンです。我が国においては、平成15年に小麦玄麦におけるDONに対して暫定基準値(1.1mg/kg)およびその試験法について定められました。しかし、国産の小麦および大麦においては、これまでにDONとNIVの複合汚染が報告され、また、毒性としてはNIVの方が高いことが報告されていることから、今後、DONとNIVの合計値での基準値設定がなされることが予想されました。そこで、DON通知試験法をもとにした小麦玄麦におけるDONおよびNIV同時試験法(MFCクリーンアップ−HPLC-UV検出法およびLC/MSあるいはLC/MS/MS分析法)のコラボラティブスタディを行い、その妥当性評価を行いました。得られた有効なデータから、回収率、室内併行性(RSDr)、室間併行性(RSDR)およびHorRat等を求めたところ、全ての数値において国際機関が示す基準内であったことが示されました。その結果、本試験法が通知あるいは告示法として示される試験法として問題ないことが判断されました(第96回日本食品衛生学会学術講演会にて発表、厚生労働省科学研究費補助金、食の安心・安全確保推進研究事業「カビ毒を含む食品の安全性に関する研究」平成20年度総括・分担研究報告書参照)。しかし、本年5月に開催された第97回日本食品衛生学会学術講演会では、東京都健康安全研究センターの田端節子博士より、輸入小麦加工品から1.1mg/kgのDONが検出されたことが報告され、今後小麦玄麦だけでなく、他穀類や加工品にも対応出来る試験法の評価が必要と思われます。
次に総AF(AF B1、B2、G1およびG2)試験法のコラボラティブスタディについて説明致します。コーデックス委員会やEUでは表2、3に示しましたように、落花生や木の実(アーモンド、ヘーゼルナッツ、ピスタチオ)や種々の食品に対して総AFの規制を行っています。我々が平成16年度〜18年度に行った国内流通食品のAFの汚染実態調査結果では、落花生においてAFB1の4倍程高濃度のAFG1が検出されることが判明し、また、検疫所等の調査においても、同様な傾向の汚染結果が増加してきました。AFB1以外のAFについては、AFG1で遺伝毒性および発ガン性が認められていますが、AFB2やAFG2に関するデータは現在のところ限られています。しかし、IARCでは、自然界で生じるAF混合物は、AFB1と同様にヒトに対して発ガン性がある物質としています。このような状況から、日本においても総AFの基準値設定が予想されたため、落花生および木の実に対する総AF試験法についてコラボラティブスタディを行い、その評価を行いました。クリーンアップ法としては現通知法で採用しているMFC法とIAC法にほぼ準ずる方法(試料50gに対して、抽出溶媒量を200mlに変更)で、分離−検出系はHPLC蛍光検出およびLC/MS/MS分析法を採用しました。コラボラティブスタディより得られた有効なデータから求めたRSDrやRSDR等の数値は国際機関が示す基準値以内であったため、評価委員会においては、今後通知法あるいは告示法として採用される総AF試験法として問題ないと判断されました。 |
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表2 コーデックス委員会のアフラトキシン基準
表3 EUのアフラトキシン基準 |
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