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殺菌効果試験について
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微生物検査室

1.はじめに

これまで、菌株分譲機関から購入する標準菌株や依頼者から提供された菌株を用いた試験として、保存効力試験(メールマガジン2007年4月号)、微生物の接種試験(メールマガジン2013年12月号)を紹介してきた。前者は日本薬局方がベースとなる試験であり、後者は定められた方法がないため依頼者の要望、目的に応じて内容を決めて実施する試験である。今回は、菌株を接種する3種類目の試験として、「殺菌効果試験」について説明する。

2.試験の目的

殺菌効果試験を依頼される目的は、依頼者の要望や製品の使用用途によって様々であるが、主に以下の4つが挙げられる。

1)新規素材のスクリーニング
新しく開発された殺菌成分や殺菌性能を有することが新たに報告された新規成分等について、実際に殺菌効果があるかをスクリーニング的に確認する。

2)製剤の処方検討
1)の結果から、新規素材の候補として挙げられた物質について、適切な配合量を確認する。「適切な」配合量を決めることは、過剰に添加すれば殺菌効果は高くなるものの、安全性への懸念や最終的な製品の原価に反映されるため、非常に重要である。

3)従来製品や他社製品との比較
新製品を開発する上で、これまでの自社製品や他社製品と同等以上の効果が認められることを確認する。

4)その他
すでに流通している製品について目的とするレベルの殺菌効果が発揮されているか(製品として問題ないか)の自主的な確認、製品の用途拡大に向けて従来検討した試験菌株以外の菌株にも効果があるか、また、使用方法を変えた場合に同等の殺菌効果が認められるかを確認する。

3.試験概要及びポイント

試験概要は、「保存効力試験」や「微生物の接種試験」と類似しており、検体に試験菌の試験菌液を接種したものを試料液とし、試料液を所定の時間保存後、その一部を採取し試料液に含まれる殺菌成分や殺菌性を有する物質の効果を不活性化させる。不活性化させた溶液の生菌数を測定するという内容である。
 殺菌効果試験のポイントは、①試験菌液と検体の作用方法、②試験菌株の種類、③試験菌液の接種菌数及び試験菌液の調製方法、④試験菌液と検体の作用温度及び時間、及び⑤生菌数の測定条件の検討(殺菌成分や殺菌性を有する物質:発育阻止物質の不活性化の条件の検討)が挙げられる。
 特に⑤について、本試験では発育阻止物質を含む検体が試験対象となるため、発育阻止物質の効力を不活性化させることなく生菌数測定を行った場合、正しい結果が得られない可能性がある。即ち、発育阻止物質を不活性化できるような生菌数測定条件をあらかじめ設定すること(いわゆる「予備試験」)が重要となる。
 殺菌効果試験では、検体の種類にもよるが発育阻止物質を不活性化することが出来る培地及び希釈水の一例としてレシチン及びポリソルベート80等の不活化剤が添加されたものがよく用いられる。レシチン及びポリソルベート80には、発育阻止物質の効力を不活性化する効果があることが知られている。
 予備試験の実施方法例として、①一定量の検体の希釈液及び試験菌液を不活化剤が添加された寒天培地で混釈したものと、②滅菌水及び試験菌液を不活化剤が添加された寒天培地で混釈したものをそれぞれ培養し、培養後の両者の生菌数に差が認められないことを確認する。表-1に予備試験の結果の一例を示す。黄色ブドウ球菌及びクロコウジカビについては、検討した生菌数測定条件で問題ないと判断されるが、大腸菌については、再検討が必要である。
 なお、日本薬局方の保存効力試験においては、「試験製剤の希釈液は、陽性対照菌数に比較し、50%以上の菌回収率を示すものとする」と記載されているので、参考にするとよい。

予備試験の結果(例)

4.試験実施例

「2.試験の目的 2)製剤の処方検討」の試験実施例を紹介する。新規素材のスクリーニング試験の結果、検体の1%溶液で殺菌効果が示されることが判明したため、適切な添加量を決定するために検体希釈液を調製し、その殺菌効果の検証を行った。その結果、検体の0.01%希釈液までは、目標とする時間(5分間)以内で殺菌効果が確認されたものの、0.001%希釈液においては殺菌効果が確認されないことが判明した(表-1及び写真-1~3参照)。本結果から、製剤への検体の添加量として0.01%程度を目安にする為のデータが得られたことになる。

生菌数測定結果

開始時

写真-1 開始時

保存5分後(0.01%希釈液)

写真-2 保存5分後(0.01%希釈液)

保存5分後(0.001%希釈液)

写真-3 保存5分後(0.001%希釈液)

5.まとめ

殺菌効果試験を実施する上で、はじめに依頼者の要望や製品の使用目的に合わせてどのような試験系で実施するのがより実使用条件に近いのかについて打合せを行い、試験菌液との作用方法、試験菌株の種類、作用温度及び時間等を順番に確認していくことが重要である。また、試験実施にあたり様々なポイントがあるが、特に生菌数測定条件の検討(発育阻止物質の不活性化条件の検討)は、試験操作の中において重要な予備試験となる。弊財団では、打合せから試験計画書の作成、計画書に基づく試験の実施まで対応させて頂きます。

6.参考文献

1)第十七改正日本薬局方 参考情報 G4.微生物関連 保存効力試験法

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