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メルマガ豆知識「放射能について」
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第二理化学検査室


  福島原子力発電所事故よる放射能汚染より、これまで専門分野とされてきた放射能に関する知識も、国民に広く知り渡りました。今月号では、食品中の放射性物質検査について簡単にまとめて紹介します。
 放射性物質の有害性は、放射性物質が発する放射線のエネルギーにより、生物細胞内の遺伝子(DNA)が損傷を受けることにより、癌などの障害を発生させることにあります。

1 放射性物質とは

放射性物質は、放射線を発生させる物質を指します。放射線には、原子核から放出されるヘリウム原子に相当する原子核(α線)、原子核から放出される電子(β線)、原子核から放出される電磁波(γ線)などがあります。電灯に例えると、電球に相当するのが「放射性物質」、光に相当するのが「放射線」、また光を発する能力に相当するのが「放射能」となります。
 放射性物質の代表的な物質に、プルトニウム(Pu-239)、ストロンチウム(Sr-90)、ヨウ素(I-131)、セシウム(Cs-134、Cs-137)、コバルト(Co-60)、ラジウム(Ra-226)などがあります。

2 食品中の放射性物質基準値ついて

食品中の放射性物質許容濃度は放射能(Bq/kg)として、2012年4月にそれまでの暫定規制値から放射性セシウム(Cs-134とCs-137合算値)のみを対象とした基準値に改正されました。これは、原子力発電所事故で放出された放射性物質のうち、半減期1年以上のものを考慮し計算に入れた上で、比較的測定に時間を要しないγ線測定による放射性セシウムを指標として用いたことによります。
 この基準値は輸入食品も対象となり、これまでより厳しい基準値となっております。


3 放射性物質の食品への汚染と除去

原子力発電所の事故により、空気中に揮散した放射性物質が、森林や平野に降下します。農産物への汚染経路は、放射性物質の降下による直接の汚染、樹木に付着した放射性物質の果実や新芽への流転、土壌に降下した放射性物質の根からの吸収があります。また、餌となる草、稲わらが汚染されることで、畜産物へ汚染が広がりました。
 放射性物質は雨風によって低地や海に移動します。また動植物に吸収された放射性物質は代謝によって徐々に体外へ放出されます。放射性物質自体も、例えば、ヨウ素の半減期が8日、Cs-134の半減期が約2年であるように徐々に崩壊していきます。
  除染方法として、このように、放射性物質の移動、希釈、放射性物質そのものの崩壊の性質を利用することができます。

4 放射性物質の現在の汚染状況

国内の汚染状況は、東北や関東の一部で農産物、畜産物に基準超えがありますが、全国的には減少しています。
 輸入食品では、チェルノブイリ汚染の影響が残っており、ヨーロッパからの輸入食品の一部で基準超えがあります。2013年4月から2013年11月で、ブルーベリー加工品で2件、冷凍ブルーベリーで1件の放射性セシウムの基準越えがありました。

5 放射性物質の検査方法

放射性物質の検査は、「食品中の放射性物質の試験法について」(平成24年3月15日 食安発第0315第4号厚生労働省医薬食品局食品安全部長通知)に従って行います。
 前処理は食品の種類、食品の形態により異なりますが、魚、野菜、果実等は、水洗後、可食部について細切、均一混合後します。加工品等は、細切混合、またはそのまま混合します。飲用に供する茶は、荒茶又は製茶10g以上を30倍量の重量の熱水(90℃)で60秒間浸出し、40メッシュ相当のふるい等でろ過し浸出液とします。

肉の前処理 飲用茶抽出液作成
肉の前処理 飲用茶抽出液作成

前処理を行った検体を専用容器に入れます。専用容器は、容量、形状が決まっており、検体の量(容量)によって使用する専用容器は異なります。
 専用容器に入れた検体を測定装置「γ線ゲルマニウム半導体検出器」にセットし、放射性物質の放出するγ線を一定時間測定します。測定できる最少濃度(検出下限:Bq/kg)は、専用容器に入れた検体重量と測定時間によって異なります。

測定装置 測定結果
測定装置 測定結果
参考
○厚生労働省HP
  ・食品中の放射性物質の対応
○農林水産省HP
  ・東日本大震災に関する情報
○SUNATECメールマガジンバックナンバー
  ・2012.06低放射線の健康リスク(甲斐倫明)
  ・2012.09〜食品の放射性物質汚染と正しく向き合ために〜放射性物質の食品への影響 (林清)
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