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異物・クレーム対応について(その2)
コンサルティング室 齋藤 希
3.自主回収体制の構築
  異物クレームが発生した際に事業者は、発生し得る健康被害の程度や事故拡大の可能性についての判断を行い、必要であれば、あらゆる手段を使って顧客(消費者含め)への問題発生の連絡、告知を行い、問題が発生し得る範囲の製品の飲食を防止する措置(製品回収も含め)を実施する。
  自主回収は、弊財団が在る三重県では、「三重県食の安全・安心確保に関する条例」にて、食品による健康への悪影響を未然に防止するという観点から、県民への周知が必要な情報を県が把握し、その内容を正確かつ迅速に提供することを目的として、平成21年7月1日より自主回収の報告の義務規定が施行されている(参照:三重県ホームページ アドレス  http://www.pref.mie.jp/SHOKUA/HP/housin/kaisyu.pdf)。
 条例による自主回収の報告義務は、三重県以外にも施行されており、例えば東京都食品安全条例に基づく「自主回収報告制度」(平成16年11月1日施行)のように都道府県において様々に取り組みされている。
事業者が問題発生時に自主回収を必要と判断した場合、必要となる様々な情報を正確に入手することで迅速かつ適切な回収対応の実施が可能となる。
  迅速かつ適切な回収対応については、国際的にはCodex委員会が示した「食品衛生の一般原則」に「市場から迅速に回収できる手順を保証すること」とされており、国内では「食品等事業者が実施すべき管理運営基準に関する指針(ガイドライン)について(食安発第227012号)」において、「問題となった製品を迅速かつ適切に回収できるよう、回収に係る責任体制、具体的な回収の方法、当該施設の所在する地域を管轄する保健所等への報告等の手順を定めること」とされている。また、この内容は、三重県においては、食品衛生の措置基準等に関する条例(三重県条例第8号)にも規定されている。
  このように事業者は問題が発生した場合に、誰がどのような情報を入手し、誰がどのような基準にて回収等の判断を行うのか、また、必要な利害関係者(関係行政機関、顧客、消費者等)への対応を誰がどのように行うか、問題となった製品等をどのように取り扱うかなどを想定した手順(書)を、普段から作成し、実際にその通りに対応が可能であるか確認を行っておくことが必要である。
  顧客や消費者から寄せられる異物等のクレーム情報も確実にこの問題発生の一つに該当し、事業者はその情報に対する判断、対応が必要とされる。
4.原因の究明と再発防止対策の構築
  事業者はクレーム発生時の対応として、以下の項目についての実施が必要である。
事実確認
 担当部署による以下の様な情報の入手及び連絡を行い、事前に決められた対策チームの召集を行い、各情報の整理、一元管理、回収判断者へ連絡を行う。
○社外情報(消費者、販売者、保健所等の行政、報道機関など)の入手、整理
 ・連絡のあった日時、連絡者氏名と所属(組織)、住所、連絡先
 ・企業側の対応者と部署
 ・問合せ、連絡内容(対象商品、購入先、発見された状況等)
 ・回答、対応履歴
 ・関連性のある情報の有無
○社内情報(製造部門、営業・販売部門、品質管理部門など)の入手、整理を行う
 ・製造記録、品質管理記録、原材料・包材の使用記録、キープサンプルの分析、確認記録
 ・設備に関する記録
 ・製造に関った従業員等の記録
 ・過去の類似事例の有無
 ・出荷記録、流通・物流履歴
回収必要となれば、自社の回収マニュアルに沿った対応を行う。
原因究明
 問題発生時に行われるが、時には多くの時間が必要となる場合もあり、そのような場合には可能性にもとづく回収判断に前後した徹底的な原因究明を実施する。的確な異物検査を行い、クレームとなった異物を特定した後、混入原因に対する再発防止策を講ずる必要がある。それにはまず確認された異物を以下の要因別に大きく分けて判断し、混入原因の特定を行う。
異物が混入する要因
組織外に由来する要因
 ・購入し、納品された包装資材由来
 ・購入し、納品された原材料由来
 ・製造し、出荷した製品の取り扱い環境由来
組織内に由来する要因
 ・製造施設(環境)からの混入要因
 ・製造設備からの混入要因
 ・製造に携わる作業者からの混入要因
 ・製造作業における混入要因
再発防止対策
 混入要因に対して、的確な再発防止が必要である。
 以下にその例を記載するのでご参考になれば幸いである。
表1:組織外に由来する要因に対する再発防止対策
表2:組織内に由来する要因に対する再発防止対策
 最後に、当財団では、上述の異物検査の実施と共に、事業者内での再発防止実施に関するコンサルティングも行っております。
 また、回収対応体制やトレーサビリティー体制構築に関する御支援も行っておりますので、ぜひお問合せ下さい。
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