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食品の官能検査について
分析業務統括 小林政人
 官能検査は食品のおいしさを評価する上で不可欠な検査である。
 食品を開発する上で、おいしいことは最も重要な要素であり、またそのおいしさが いつまで持続されるかを評価することで、その商品の寿命(消費期限、賞味期限)を決めることになる。
 本稿では官能検査の実施のポイントと、官能検査を実際に行うパネリスト選択のための選抜テスト実施例を紹介する。
1.官能検査とは

人間の持つ5感(味覚、嗅覚、視覚、聴覚、触覚)によって行われる検査である。
人間の感覚を測定器のように活用して特性を評価する場合を分析型官能検査、好き、嫌いのように嗜好(好み)を評価する場合を嗜好型官能検査という。

2.官能検査の意義
最近の分析機器の開発はめざましく、人間の官能評価を数値化する分析機器も多数見られるようになった。
しかし、おいしさは数々の要因が絡み合って認識されるものであり、個々の要因を分析機器で解析することはできても、最終的に人間の評価に勝るものはないと考えられる。
3.官能検査における留意事項
再現性のある信憑性の高い官能検査を行うことが非常に重要である。
そのためには、
(1). 官能検査の実施目的を明確にする。
(2). 官能検査の実施目的にあったパネリストを選択する。
(3). 実施目的にあった官能検査手法(例:2点比較法)を選択する。
(4). パネリストが適切な検査を行えるような環境を整える。
(結果に影響を与えるような心理的、生理的要因を少なくする)
(5). 統計的解析手法を適用する。
などに留意する必要がある。
4.「食品の表示に関する共同会議」での動き

分析型官能検査を実施するためには、試料間の差や標準品との差を判断するため、五感について鋭敏な感度が必要である。
嗜好型官能検査を実施するためには、消費者の嗜好を的確に評価できることが必要である。
また、(1).心身ともに健康である。(2).食品に関する知識、経験を有している。
(3).意欲的で関心が高い。(4).偏見がないこと。(5).気軽に参加できること。
などの要因もパネリストを選択するために重要な要素である。

官能評価パネリスト選定スクリーニング(5味)実施例
味の濃度差識別テスト実施例(2点識別試験法)
5.実施方法
官能検査の手法として、比較する、比較して順位をつける、点数をつける、好きな方を選ぶなどがあり、目的にあった手法を選択する必要がある。
1.比較する手法
(1) 2点比較法(2点識別試験法、2点嗜好識別試験法など)
2点識別試験法とは、ある評価項目について、A、Bを比較し客観的な差異を判断させるもの
(例:Aの方がBより甘い)。
2点嗜好識別試験とは、ある評価項目について、A、Bのどちらがおいしいかの判断をさせるもの。
(例:Aの甘さの方が好ましい)
(2) 3点識別試験法
A、Bの2種類の試料を比較する際に、A、A、Bのように3試料を1組にして提示し、その中から異なる1試料(この場合B)を選ばせる方法。
結果は3点識別試験法のための検定表を用いて有意性を判定する。
2.順位をつける手法
  順位法(スピアマンの順位相関係数、ケンドールの一致性の係数など)
スピアマンの順位相関係数とは、濃度の異なる数個の試料を提示し、濃度の順に 並べることができるかをみる方法で、パネリストの能力をみる場合などに使われ る。 ケンドールの一致性の係数とは、数種の試料に順位をつけた時、パネリスト全体 の評価と一致しているかを評価する場合に使われる。
3.評点をつける方法
  パネリストが決められた尺度に沿って本人の経験と基準をもとに、評点をつける方法である。(良い、やや良い、普通、やや悪い、悪いなど)
食品の期限設定のための官能評価によく使われる方法である。

上記以外にもいろいろな官能検査の手法がある。
官能検査の手法については、官能検査を実施する目的を明確にした上で、適切な検査法を選ぶことが大切である。

参考文献
おいしさを測る 古川秀子 幸書房
新版 食品の官能評価・鑑別演習 (社)日本フードスペシャリスト協会編 建帛社
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