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HACCP制度化への対応後に求められる取組み
一般財団法人 食品分析開発センターSUNATEC
コンサルティング室

1.はじめに

2018年6月、食品衛生法等の一部を改正する法律が公布された。この改正により、原則全ての食品等事業者(以下、事業者と称す)はHACCPに沿った衛生管理に取組むことが求められた(2021年6月猶予期間終了)。またこれ以外にも、食品のリコール情報の報告制度が創設され、事業者がリコールを行う場合に行政への届出を義務付けることが盛り込まれた1)

食品事故情報告知ネットHP2)によると、2011年に544件だった回収告知件数は2018年に786件と増加傾向になっている(表1  2018年度(4月〜3月)の事故情報についての整理・分析(一部抜粋))。また、その告知理由は健康被害に繋がるものもあれば、繋がりにくいものもある。HACCPへの取組みを契機に食中毒等の問題を防ぐことはもちろんのこと、更に回収告知件数の減少も期待される。

このことから本稿では、事業者がHACCPへの取組み対応後の取組むべき内容について紹介する。

 

表1.2018年度(4月~3月)の事故情報についての整理・分析(一部抜粋)

No 告知理由 2018年
暦年合計
1 微生物及び化学物質の混入(微生物の増殖を含む) 食中毒事故原因の微生物、化学物質 30 (3.8)
2 カビ、酵母等の微生物 104 (13.2)
3 異物(夾雑物を含む)の混入 ガラス片や金属等硬質異物 41 (5.2)
4 昆虫・毛髪等生物由来異物、及び軟質異物 104 (2.9)
5 容器・包装不良 17 (2.2)
6 期限表示の誤記(不適切な表示) 期限表示(設定期限を超えて誤記) 160 (20.4)
7 期限表示(設定期限より前に誤記) 6 (0.8)
8 期限表示(記載もれ、貼付もれ) 12 (1.5)
9 期限表示(印字不明瞭) 1 (0.1)
10 期限表示(その他) 3 (0.4)
11 不適切な表示 食品添加物 4 (0.5)
12 アレルゲン 215 (27.4)
13 誇大表示、優良誤認 4 (0.5)
14 その他の不適切な表示 27 (3.4)
15 表示関連以外の法令違反(その恐れを含む)
(計量法関連(量目など規格不良)、食品衛生法関連(国内未承認の添加物・放射線照射等、残留農薬等違反等))
86 (10.9)
16 品質不良
(殺菌不十分、変色、風味変化などの不良品)
35 (4.5)
17 賞味期限切れ、期限切れ原材料の使用 16 (2.0)
18 その他(お詫びのみで回収理由が不明、判断不能等) 2 (0.3)
合計 786 (100)

2.取組むべき内容

HACCPでは危害要因分析結果に基づき決定した重要管理点(CCP)を確実に管理することによって食中毒等の健康被害に関する問題の発生を防ぐことができる。一方で、挙げられた危害要因の内、CCP以外は一般衛生管理にて対応する。このため、HACCP対応後の事業者が次に取組むべき内容として、一般衛生管理の見直し・強化が挙げられる。

なお、2019年7月26日より意見募集されていた「食品衛生法等の一部を改正する法律の施行に伴う厚生労働省関係省令の整備に関する省令(案)」においても以下のことが記載されている。

 

「食品衛生法等の一部を改正する法律の施行に伴う厚生労働省関係省令の整備に関する省令(案)」抜粋

 

記載された項目は、一般衛生管理の見直し・強化として事業者が取組むべき内容の多くが含まれており、この点からも取組みが必要である。しかし、具体的な内容についてはわかりにくいと考えられる。

そこで、近年国内での認証取得数が増加しているFSSC22000や日本初の食品安全マネジメントシステムであるJFS-C規格の要求事項を参考にすることをお勧めする。特に、FSSC22000にて要求されているISO/TS 22002-1(食品製造)には詳細な項目が記載されており、市販されている解説書を併せて確認することによりハード面だけでなくソフト面の具体的な注意点を把握しやすい。

自組織内の点検としてISO/TS 22002-1の項目について確認することによって、事業者の一般衛生管理に対する理解が深まり、一般衛生管理の見直し・強化に取組むことで更なる効果的なHACCP運用に繋がる。

3.おわりに

食品安全に関する考え方は時代とともに社会に求められる状況に応じて変化していく。それは国内だけでなく、日本を取り巻く海外の要求も場合によっては含まれる。

来年に東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会を迎える中、国内外の人々に対してより良い食品を提供するための取組みが今後も一層進むことが望まれる。

参考文献
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