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クロラムフェニコール試験法について
一般財団法人 食品分析開発センターSUNATEC
第二理化学検査室

1.はじめに

クロラムフェニコールは、広域の抗菌スペクトルを持つ抗生物質であり、動物用医薬品として家畜の病気の予防や治療のために使用される。クロラムフェニコールは遺伝毒性を有すると考えられており、発がん性を有する可能性が否定できないことから、ポジティブリスト制度導入の際に、その基準値は「不検出」として設定された。不検出基準は、その物質の発がん性や毒性により閾値が設定できないことから、「食品に含有してはならない」とされている。
 ポジティブリスト制度導入時の規制対象物質は「クロラムフェニコール」であったが、動物実験によりクロラムフェニコールグルクロン酸抱合体(以下、グルクロン酸抱合体とする)が生体内で加水分解され、クロラムフェニコールが生成することが確認された。そのため、薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会農薬・動物用医薬品部会(平成26年7月31日)にて、新たにグルクロン酸抱合体が規制対象物質に追加された。規制対象物質の変更に伴い、図1に示すクロラムフェニコール、及びグルクロン酸抱合体を分析可能な試験法が検討され、平成29年2月23日にクロラムフェニコール試験法(告示試験法)が改正された。
 クロラムフェニコール試験法について、従来の試験法との変更点、及び試験法の注意点について紹介する。

2.クロラムフェニコール試験法の概要

クロラムフェニコール試験法のフローチャートを図2に示す。均一化した試料より、クロラムフェニコール及びグルクロン酸抱合体をメタノールにて抽出する。その後、緩衝液存在下でβ-グルクロニダーゼによりグルクロン酸抱合体を加水分解し、クロラムフェニコールへと変換する。加水分解後、クロラムフェニコールを酢酸エチルへ転溶し、ジビニルベンゼン-N-ビニルピロリドン共重合体カラムにより精製する。測定機器は液体クロマトグラフ-質量分析計(LC-MS/MS)を用いる。検出限界はクロラムフェニコールとして0.0005 ppm(ローヤルゼリーについては0.005 ppm)である。
 試験法の改正において、従来の試験法から大きく変更された点は、測定対象化合物にグルクロン酸抱合体が追加されたことである。グルクロン酸抱合体は加水分解によりクロラムフェニコールへ変換して測定する。

3.試験法の注意点

クロラムフェニコール試験法の改正と同時に、試験実施に際しての留意事項が通知されており、特に重要な点はβ-グルクロニダーゼの取扱いである。β-グルクロニダーゼは、酵素由来の妨害ピークが認められる場合があるため、酵素は事前に酵素由来の妨害ピークが定量に影響を及ぼさないことを確認する必要がある。また、試験法に記載された反応条件で既知濃度のグルクロン酸抱合体を加水分解し、加水分解が十分に行われていることを事前に確認することが重要である。加水分解反応の設定温度および反応時間を変更する際には、事前に十分な検討を行わなければならない。

参考資料

【1】生食基発0223第3号「食品、添加物等の規格基準に定められた食品に残留する農薬等の試験法における留意事項について」平成29年2月23日

【2】「平成26年度 食品・添加物等規格基準に関する試験検査等に関する報告書 クロラムフェニコール試験法(畜水産物)」
厚生労働省ホームページ内「(参考)発出した試験法の検討結果」に記載
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/shokuhin/zanryu/
zanryu3/siken.html

【3】「食品、添加物等の規格基準(昭和34年厚生省告示第370号)」第1 食品の部 A 食品一般の成分規格の5の(9)クロラムフェニコール試験法
厚生労働省ホームページ 
http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11130500-Shokuhinanzenbu/0000152374.pdf

【4】食品分析開発センターSUNATEC メールマガジン「動物用医薬品の規制と検査方法」
http://www.mac.or.jp/mail/121101/02.shtml

【5】薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会農薬・動物用医薬品部会議事録 2014年7月31日
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000060460.html

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