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総アフラトキシン試験法について
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第二理化学検査室

1.はじめに

アフラトキシンとは亜熱帯地域に生息するAspergillus属に分類される一部のカビが産生するマイコトキシン(カビ毒)である。アフラトキシンには10種類以上の化合物があるが、毒性や毒力からみて食品衛生上、重要なものはアフラトキシンB1、B2、G1、及びG2である。アフラトキシンを生産するカビは高温多湿な気候で繁殖しやすく、アフラトキシンの主な汚染食品はとうもろこし、落花生、豆類、香辛料、木の実類や一部の穀類である。これらの食品の多くはアフラトキシンを生産するカビが好む気候で育てられており、日本はこれらの食品のほとんどを輸入品に頼っているのが現状である。また、アフラトキシンは熱耐性を有し、通常の加工・調理工程ではほとんど分解されないため、汚染された食品から除去するのは困難である。アフラトキシンによる健康被害を防止するためには、精度の高い分析によって食品中のアフラトキシン汚染を監視することが重要となる。
 日本では昭和46年にすべての食品に対してアフラトキシンB1の規制値(10μg/kg)が設定された。当時は、シリカゲルカラムにより精製した検液を薄層クロマト用プレートにスポットし、展開後、紫外線灯下で薄層クロマトグラムを確認する時、アフラトキシンB1を検出してはならないという方法であった。本法の検出限界が10μg/kgであることから、アフラトキシンB1の規制値が10μg/kgとされてきた。しかし、平成23年10月1日より、食品中に含有されるアフラトキシンの規制が変更され、食品中の総アフラトキシン(アフラトキシンB1、B2、G1及びG2の総和)は10μg/kgを超えないこととなった。本豆知識では総アフラトキシンの試験法について紹介する。

2.総アフラトキシン試験法の概要

総アフラトキシン試験法の概要を図1に示した。均一化した試料をメタノールまたはアセトニトリルを用いて抽出する。精製には逆相樹脂、陰イオン交換樹脂及び陽イオン交換樹脂の混合物が充填された多機能カラムを用いる方法、及びアフラトキシン特異抗体を結合させた樹脂が充填されたイムノアフィニティカラムを用いる方法が示されている。測定機器として蛍光検出器付き高速液体クロマトグラフ(HPLC-FL)もしくは液体クロマトグラフ-質量分析計(LC-MS又はLC-MS/MS)を用い、前者で定量、後者で確認する方法である。HPLC-FLで測定する場合は誘導体化が必要となる。定量限界は各アフラトキシンにおいて1.0μg/kgである。試験法では、LC-MS又はLC-MS/MS により各アフラトキシンを定量することもできるが、定量に際しては、内標準物質の添加又はブランク試料溶液を用いた検量線の作成等、定量性を十分確保して行う旨の注釈があり、定量性が担保されれば、LC-MS(/MS)法での定量が可能である。
 また、試験法には注意点が示されており、妥当な結果を得るためには十分に注意しなければならない。アフラトキシンはガラスに吸着することが知られているが、シラン処理を行ったガラス器具でも吸着する可能性があるため、試験にはポリプロピレン製等の樹脂製の器具または容器を用いるほうが良い。また、夾雑成分が多く含まれる試料において、多機能カラムによる精製では精製不足となることが多いため、イムノアフィニティカラムによる精製が必要となる。イムノアフィニティカラムを使用する際は、カラムの使用期限や精製時の通液速度に注意しなければならない。
 検査結果の算出方法に関しては、「検量線により少数第2位まで各アフラトキシンの分析値を求める。それぞれの値について少数第2位を四捨五入し、得られた値を合算し、さらに少数第1位を四捨五入して総アフラトキシンの定量値とする。」とされており、検査結果の算出時において、二度、四捨五入を行うという特殊な数値の扱いとなっている。総アフラトキシンの算出例を表1に示す。
 なお、試験法では、選択性、真度(回収率)、精度に関する妥当性評価の方法についても言及されているため、注意が必要である。

表1. 総アフラトキシンの算出例
総アフラトキシンの算出例

総アフラトキシン試験法の概要
図1. 総アフラトキシン試験法の概要

3.おわりに

アフラトキシンを含めマイコトキシンは発がん性を有する物質が多いため、様々な国で規制対象となっている。日本では食品中の汚染実態調査が進められており、今後、他のマイコトキシンに対しても新たな規制が設けられることが予測される。カビ毒は非意図的な汚染のため管理が困難である。そのため精度が高く、かつ迅速に検査できる分析法を用いて汚染状況を常に監視することが重要であると考えられる。

参考文献

1. 環食第128号「カビ毒(アフラトキシン)を含有する食品の取扱いについて」
厚生省食品衛生課長通知 昭和46年3月16日

2. 食安発0331第5号「アフラトキシンを含有する食品の取扱いについて」
厚生労働省医薬食品局食品安全部長通知 平成23年3月31日

3. 食安発0816第1号「総アフラトキシンの試験法について」
厚生労働省医薬食品局食品安全部長通知 平成23年8月16日

4. 当財団メールマガジンvol.052(2010):http://www.mac.or.jp/mail/100701/01.shtml

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