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夏休みの自由研究応援! ~着色料を調べてみよう~
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第一理化学検査室

はじめに

この実験は、科学のおもしろさ・楽しさに触れる機会を通して、子供たちが科学に興味や関心をもってもらうためにご紹介させていただきます。実験材料はいずれも簡単に手に入るものばかりですが、誤った取扱いや操作方法によっては、怪我などにつながる恐れがありますので、ゴム手袋や軍手、メガネの着用など、実験の際にはくれぐれも注意を払って進めていただきます様、よろしくお願いいたします。
 食べ物の色には、素材に由来する色(果汁100%ジュースの色など)の他に、着色料(色をつけるための添加物)でつけられた色(カラフルなドロップやマカロンの色など)があります。着色料は、植物などから取り出してきた天然着色料と化学的につくられた合成着色料に分けられますが、これらの着色料の登場によって食べ物の色が何に由来するのか見た目からは判別が難くなりました。この実験では、食べ物の色が合成着色料(○色△号と呼ばれる着色料)でつけられた色かどうかを判定し、さらにはその合成着色料の色や種類を調べます。後半の種類を調べる方法(ペーパークロマトグラフィーと呼ばれる方法)は、道具の選定も必要になり少し難しいかもしれませんが是非チャレンジしてみてください。

自由研究のテーマ例

自由研究のテーマ例

用意するもの

サンプル

スーパーマーケットなどで購入してください。
合成着色料を含む食品は、食品の表示を参考にして選んでください。

例:着色料(赤色3号)、着色料(赤3)、着色料(○色○号)、着色料(黄○)、着色料(青○)
合成着色料は、12種類存在します。
赤色2号、赤色3号、赤色40号、赤色102号、赤色104号、赤色105号、赤色106号、
黄色4号、黄色5号、
緑色3号、
青色1号、青色2号

天然着色料を含む食品は、食品の表示を参考にして選んでください。
 例:着色料(アナトー)、着色料(カラメル)、着色料(カロテン)、着色料(銅クロロフィル)、着色料(コチニール)、着色料(カロチノイド)、カラメル色素、カロテン色素、コチニール色素、パプリカ色素

原材料の表示例

用具・試薬

全てホームセンターや100円ショップで購入できるものです。代用できるものに変更しても構いません。
・ 鉛筆
・ 容器(市販のコップなど熱湯に耐えられるもの)
・ スポイト(計量スプーンで代用できます)

  ストローでも代用することもできます。ストローを液体に挿しこみ、ストローの端を指で押さえて引き抜くと、液体をストローの中に保持したまま抜き取ることができ、指を離すと中の液体が排出されます。
あらかじめ、ストロー10 cm分の水の重量をはかっておけば、ストロー○○cmあたり水△△gかが分かりますので、水”1 g“を”1 mL”とみなして、ストローに1 mLや2 mLなどの目盛りをつけることができます。

・ ホットプレート(湯煎、蒸し器などで代用できます、ホットプレート使用時には加熱した液が沸騰して飛び散ることがありますので注意してください)

・ 毛糸(ウール100%で着色していないもの、あらかじめ洗剤を用いてよく洗ってください)

・ 食酢(酸度4~5%程度のもの、酢酸の代わりとして使用するので他の成分が多そうなものは避けてください)

[以下はテーマNo.2、3の場合必要]

・ はかり(キッチンスケールなど、最小表示が0.1 gであれば使いやすいです)

・ メスシリンダー(必要であれば用意・作製してください、軽量カップやはかりでも代用できます)
例50 mL目盛りの付け方:細長い容器に水50 gをはかりとり、水面の高さにマジック等で目盛りを書きます。

・ 溶液保管用の容器(フタができるガラス製やプラスチック製のもの、作った溶液を保管するためのものです)

・ 炭酸ナトリウム(例えば、重曹をフライパンで乾煎りすることで作ることができます)
水溶液は強いアルカリ性となるので、取扱いに注意してください。

・ つまようじ、竹串、極細ベビー綿棒など(試験溶液を展開用紙に塗布するために使用します)

・ 展開槽
ペーパークロマトグラフィーを実施するための容器で、展開溶媒を入れ、展開用紙を吊り下げて使用します。このとき、展開用紙の下端を展開溶媒に浸るようにします。展開溶媒が展開用紙に浸み込んでいく際に、展開用紙よりも展開溶媒と相性のよい成分は、展開溶媒とともに上へと移動します。
実施例では、乾物入れを展開槽として使用し、下図のように試験しました。マグカップに割り箸を渡してそこに吊り下げるなど、身近にあるものを利用してください。

・ 展開用紙
水をはじくものは使用できません。実施例では、天ぷら敷紙を使用しました。
紙の厚さで展開時間が変わり、薄いほど早くなります(目安:30分~1日程度)。
厚紙を用いると展開は遅いですが、吊り下げずに立てかけて使用できます。

・ 展開溶媒
使用する展開用紙に合った、適当なものを作ってください(展開溶媒の選定参照)。
完全に色素を分離できないかもしれませんが、簡単に作れる展開溶媒として、0.1%または1%の炭酸ナトリウム溶液や食塩水などが使用できます。

・ 比較標準となる色素(食紅など、テーマNo.3の色素の種類[全12色]を調べる場合に必要です。)
水溶液をそのままペーパークロマトグラフィーに使用することを想定していますが、市販品によってはデキストリンなどの混合物が含まれており、含まれている量が多いと、この実験で行うような精製が必要となるものがあります(ペーパークロマトグラフィーを実施した際の色素の移動距離が混合物の影響で変わってしまいます)。また、12色全てを集めることは難しいので、購入できない色素については、食品の原材料表示を参照してください。(例えば、調べたい食品と赤色2号が使用された食品を一緒に試験して、赤色2号か判断する。)

・ 溶液の作り方の例:1%水溶液の作り方
溶かすもの1 gをはかりとり、水を加えて100 mLとする。
10%水溶液があれば、これを10 mLとり、水で薄めて100 mLとしても構いません。
メスシリンダー(または計量カップやスポイト)がない場合は、はかりを使い、mLをgに読み替えてください。

操作

市販の容器や食酢を用いて実施した際の様子を実施例として写真掲載していますので、参考にしてください。

実施例で使用したサンプル 合成着色料使用 天然着色料使用
使用した食品はゼリービーンズです。
左の写真は合成着色料(黄色4号、黄色5号、青色1号)が使用されたもの、右の写真は天然着色料が使用されたものです。

テーマNo.1~3はここから。

操作①食品からの色素抽出 合成着色料使用 天然着色料使用
サンプルを容器に入れ、水またはお湯を加えて色素を抽出する。
表面だけが着色されているような食品であれば、色素抽出後の固形分は除去します。サンプル量は着色具合で加減してください。
操作①(抽出後) 合成着色料使用 天然着色料使用
溶け残りがあれば、茶漉しなどで取り除く。
操作①(ろ過後) 合成着色料使用 天然着色料使用
ゼリービーンズ表面の色が水に溶けた様子が観察できます。
操作②酸と毛糸の添加 左:合成着色料使用 右:天然着色料使用
抽出液に食酢1 mLと毛糸を加える。
抽出液の色素を全て毛糸に吸着させるためには大量の毛糸が必要(写真では10 m程度使用)ですが、最後のペーパークロマトグラフィーに必要な色素量が確保できれば十分です。目安として、50 cm程度は入れてください。テーマNo.1で毛糸を濃く染めたい場合は、より少量のほうが濃くなります。
操作③毛糸への色素の吸着 左:合成着色料使用 右:天然着色料使用
ホットプレート上または湯煎にて10分間加熱する。
写真は、アルミ鍋にお湯を沸かし、この中で加熱しています。
※ガスコンロなどを使用する場合は、火の取扱いに注意してください。
操作③(加熱後) 左:合成着色料使用 右:天然着色料使用
加熱後の様子です。
毛糸が着色されたかどうか確認します。合成着色料のはずなのに毛糸が着色しない場合は、酸性度が不足している可能性がありますので、食酢を追加してください。
操作③(加熱後、毛糸分離) 合成着色料使用 天然着色料使用
毛糸が着色している様子が観察できます。
抽出液に色が残っているようであれば、毛糸を追加し、再加熱して追加抽出しても構いません。天然着色料の場合は、着色しないか薄く着色します(この着色は後の水洗で落ちます)。
操作④毛糸の洗浄 左:合成着色料使用 中:天然着色料使用 右:使用した毛糸
着色した毛糸を水またはお湯でよく洗う。
付着物が多い時は洗剤を使用しても構いませんが、アルカリ洗剤や漂白剤は避けてください。
天然着色料は毛糸を着色しないので、毛糸が着色されるかどうかで合成着色料を判別できます。
   合成着色料:毛糸が着色する。
   天然着色料:毛糸が着色しない。

テーマNo.1はここまで。

以降はテーマNo.2、3。

操作⑤アルカリ添加と毛糸からの色素溶出 左:合成着色料使用 右:天然着色料使用
0.1%炭酸ナトリウム水溶液50 mL加え、ホットプレート上または湯煎にて10~20分間加熱する。色素が溶出したら、毛糸を除去する。
※加熱したアルカリ溶液を使用します。覗きこんだりせずに、必要に応じてフタをするなど飛び散りに注意してください。操作③と同様、火の取扱いにも注意してください。
操作⑤(加熱後) 合成着色料使用 天然着色料使用
合成着色料の場合、毛糸の色が薄くなり、水溶液が着色される様子が観察できます。
(天然色素は複数成分[混在物含む]が混ざっているため、わずかに色素が抽出されることがありますが、後の操作で判別できるものもあります。)
操作⑥濃縮 左:合成着色料使用 右:天然着色料使用
ホットプレート上または湯煎にて加熱を続けて濃縮し、この液を試験溶液とする。
液体サンプル(例:漬物の浸け汁)の場合、ここまでの抽出操作を省略し、加熱濃縮だけで使用できるものもあります。
操作⑦展開用紙の準備 展開用紙に塗布場所を書き込んだ例
展開用紙に試験溶液を塗布する場所を鉛筆で書き込む。
両端から2 cm、各塗布場所は1 cm以上間隔をあけ、塗布場所が展開溶媒に浸からないように下端より十分な距離をとってください。
塗布場所を間違わない、忘れないために、塗布するものの名称を下端に鉛筆で書き込んでおくか、別にメモを作成しておきましょう。
操作⑧塗布 塗布の様子
つまようじなどの先端に試験溶液を付着させて、展開用紙の印をつけた場所に塗布する。テーマNo.3の場合は、比較標準となる色素も塗布する。
点を打つようなイメージで、できる限り小さく塗布してください。ドライヤーなどで乾かしながら行うと早く小さく塗布できます。
操作⑨展開 展開中
展開溶媒(写真は1%炭酸ナトリウム水溶液を使用)を入れた展開槽に試験溶液を塗布した展開用紙を吊り下げる。
揺らしたり風が当たったりするときれいに展開しません。蓋や覆いをするとより良いです。
展開途中で見えなくなってしまう(色素自体の色が消える、展開中に縦長に伸びて色味が薄くなる)色素もあるので、吊り下げた後は、展開する様子をそっと観察してください。
操作⑩展開用紙の回収、観察 展開後
展開前線が十分上がったところで展開用紙を引き上げ、ドライヤーなどで乾かし、観察する。
テーマNo.2では、展開後の色素の数や色の種類を観察してください。展開前は緑色でも展開後に黄色と青色に分かれる場合や赤色1色だったものが展開すると3種類もの赤色に分かれる場合など、実は複数の色が混ざっていた、ということがあります。含まれている合成着色料については、食品表示を参考にして下さい。
テーマNo.3では、移動した距離と色が一致する色素は同じものと推定できます。写真では、黄色4号と黄色5号が合成着色料使用サンプルから検出したことが分かります。青色1号については、緑色3号と同じ移動距離なので、展開条件を変えて確認するか色で判断する必要があります。検出した色素が確定したら、食品表示と比べてみてください。
(試験溶液には炭酸ナトリウムが含まれるため、たくさんの量を塗布した場合は、移動距離に影響します。また、少量でもアルカリ性を帯びるため、アルカリ性となることで移動距離が変わる色素については注意が必要です。)

操作の補足

この実験では、炭酸ナトリウム水溶液を加熱濃縮するため、アルカリ性が強く、熱い液体を取り扱うこととなります。特にホットプレートで濃縮する場合には沸騰して飛沫を浴びる可能性もありますので、アルカリを抑えておきたい場合には、0.1%炭酸ナトリウム水溶液50 mLに対し食酢1 mLを加えるとほぼ中和させることができます。試験溶液が中性となり安全性は向上しますが、食酢に含まれる酢酸以外の成分の影響を受ける可能性があるため、必要であれば中和してください。また、アルカリに0.1%炭酸ナトリウム水溶液を使用しましたが、通例、0.5%アンモニア水溶液を使用します。加熱濃縮中にアンモニアは揮散するため、試験溶液中にほとんど含まれず、炭酸ナトリウムのように色素の移動に影響しませんが、取扱いの際にはアンモニアの刺激臭を伴うため、使用を避けました。薬局等で購入できますので、使用してみるのもよいかもしれません。
 後半のペーパークロマトグラフィーは事前の条件設定が必要(後述)であり、操作の煩雑さや結果の判断の難しさなどもありますので、毛糸の着色までを実施し、さまざまな食品の色で毛糸を着色することを自由研究としても十分な研究テーマになると思われます。

展開例(テーマNo.3に取り組む方へ)

その他の展開溶媒による展開例を下図に例示しました。塗布した色素は、①赤色2号、②赤色3号と黄色4号、③赤色40号と黄色5号、④赤色102号と緑色3号、⑤赤色104号と青色1号、⑥赤色105号と青色2号、⑦赤色106号です。少し考察を記載しますので、自由研究の参考にしてください。

 A.塩化ナトリウム濃度が高まるにつれて、色素の移動距離は小さくなる傾向が分かります。このことから、食塩や炭酸ナトリウムなどの塩類の濃度が高いほど色素が移動しにくくなることが考えられます。

 B.アルカリ性の炭酸ナトリウムを用いた場合は、黄色4号の移動距離が大きくなりました。また、酸性の酢酸を用いた場合は、赤色3号、赤色104号、赤色105号が移動しませんでした。これらの色素は、展開溶媒の液性(pH)に影響されやすいことが分かります。

 C.ショ糖の場合は、水の場合とほとんど差がありませんでした。いずれの条件もほとんどの色素が展開前線まで移動しているのでショ糖の効果を評価し難いところですが、“水と差がない”ことからショ糖は色素の移動距離に影響しない可能性があり、シロップなどショ糖を主として含むものをサンプルとして扱う場合には、ショ糖濃度が高いと難しいかもしれないですが、毛糸による抽出操作を省略できると思われます。

A~Cから、塩類の濃度と液性が展開条件の性能を決める重要な要素であると考えられます。

0.1%塩化ナトリウム水溶液 0.5%塩化ナトリウム水溶液
1%塩化ナトリウム水溶液 5%塩化ナトリウム水溶液  
 
1%炭酸ナトリウム水溶液 5%酢酸 1%ショ糖水溶液

展開溶媒の選定(テーマNo.3に取り組む方へ)

ペーパークロマトグラフィーを実施するためには、使用する展開用紙に合う展開溶媒を選定する必要があります。展開例で紹介したように塩類の濃度で色素の移動距離をある程度調整できますので、例えば、0.1%、1%、5%などの食塩水で青色1号(移動しやすい色素)、黄色4号(移動が中程度の色素)、赤色40号(移動しにくい色素)などが展開する様子を事前に確認しておくと適切な濃度の予測をつけることができます。使用する展開用紙の種類により色素の移動度合いは変わりますが、色素間の移動距離の比(色素の移動しやすさ)はほぼ同じと考えられますので、今回の実施例を参考にしていただくと、手に入らない色素に対する推察ができます。ただし、糊など紙以外の成分を多く含む場合にはこれらが影響し、異なる結果となる可能性があります。こういったことが起きた場合には、紙質の違いをペーパークロマトグラフィーによる色素の移動度合いで判別する研究に結び付けてもおもしろいかもしれません。
 実施例の条件以外に、他の水溶液や2種類以上のものを溶かした混合溶液を展開溶媒として使用すると、より判別しやすい展開溶媒を見つけることができるかもしれません。さらには、展開用紙を紙(セルロース)以外の材質のもので代用すれば、各色素の移動の様子が大きく変わるので効果的です。

保護者の方へ

この実験は酸性タール色素を検査する方法であり、検査機関で行う方法(2016年7月号の豆知識「食品に含まれる酸性タール色素の試験法」を参照)に比べて正確さは劣るものの、実際の分析の現場で用いられるクロマトグラフィーという物質の分離操作を体感できる方法です。入手が難しい特別な器具・試薬等は使用せずに実施できる方法ですが、一部、加熱操作やアルカリを使用しますので、ゴム手袋や軍手、メガネの着用など、安全面への配慮をお願いします。万が一、使用する薬品が目や口に入った、肌に触れた等の場合には直ちに流水ですすぎ、状況に応じて医療機関で受診していただきますようお願いします。

おわりに

今月は、夏休みということもあり、夏休みの自由研究に利用していただける実験を、「夏休みの自由研究応援! ~着色料を調べてみよう~」と題して、紹介させていただきました。
 この実験は、家庭にあるもの、簡単に手に入るもので実施可能であり、検査機関が行う検査の方法に近い内容となっています。科学のおもしろさ・楽しさに触れる機会として利用していただければ幸いです。くれぐれも怪我等がないよう注意して実施してください。
 本実験に関するお問い合わせは e-magazine@mac.or.jp までお願いします。

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