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品質問題への対応について②
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コンサルティング室

前号につづき、近年製品回収なども多く発生している一般的に健康危害に繋がりにくいと考えられるような品質問題への取組み方法例を記す。

2016年4月号 豆知識『品質問題への対応について①』

品質問題への取組み例②

「既に自組織で挙げている発生要因の深堀」
自組織の危害分析にて既に挙げている発生要因についてクレームの発生状況などを鑑みてテーマを決め、自組織内にてより詳細に発生要因の検討を進め、協議の上で対策を実施することで発生要因を管理する取組み。以下に異物をテーマにした例について述べる。

〈異物発生要因の深堀検討例〉
 深堀検討を進めるにあたり、闇雲に検討するよりも原料、中間製品、製品(以下、原料等)への影響が高い箇所から優先的に取り組むことが推奨される。この中で健康被害に繋がるような大きさの硬質異物や前者に当てはまらない硬質異物、健康被害には繋がりにくいが数多く発生する危険のある軟質異物などについて、異物の種類と問題の大きさを併せて検討することが推奨される。

(1)『原料等に直接触れる設備・機器、器具、作業内容の再確認』

原料等に直接触れる箇所においては、通常、ガラスのような破損しやすい材質の使用は少ないと考えられるが、金属製や樹脂製の硬質異物の発生源は多く存在する。更に、ビニール片などの軟質異物の発生源も多く存在することを認識する必要がある。
 例えば、スライサー、粉砕機などの機器では刃の欠損が起こりやすい。また、移送のために用いられるポンプも羽根の設置不備が生じた際にケーシングと接触することで羽根の破損やケーシングの削れが生じる。異物除去として使用される篩でも、金網部分が破損し、製品に混入した事例がある。もちろん、ネジやボルト、ワッシャー、スプリング、ベアリングなどの設備・機器の部品の欠落なども金属異物に繋がる。また、樹脂製のバットやコンテナ、攪拌のためのカイなどの器具が破損し、樹脂製の硬質異物として製品に混入する事例も多い。
 これらの硬質異物は発生箇所や発生原因によって、健康被害に繋がるような尖った形状で大きな異物が発生する場合もあれば、例えばポンプのケーシングの削れの様に細かな異物が多数発生する場合もある。
 一方、軟質異物(ビニール片、糸片、塗装片、毛髪、虫など)では、健康被害に繋がりにくい異物が多数発生する事例もある。例えば、原料を包んだビニールを誤って原料と共に粉砕機に投入し、小さなビニール片が多数混入した事例はよく発生する。また、原料等に触れる機器のコンベアの一部がほつれた状態となり、繊維やコーティング部分が混入した事例もある。
 このように原料等に直接触れる箇所には様々な異物発生源が存在する可能性があることから、自組織で使用する設備・機器、器具や作業内容がどのような状況で、どのような状態の異物が発生するかについて事前に検討することが必要である。このためには検討を進める品質保証担当者などが製造担当者や工務担当者と設備・機器、器具の管理状況を再確認した上で、必要に応じて管理ルールや作業手順、作業時のチェック体制の見直などが推奨される。

(2)『原料等の周辺に存在する設備・機器、器具、人員が保有する用具の確認』

原料等の周辺に存在する設備としては、例えば、機器の水圧計などのカバーや、労働安全のために設置されるカバーなどが挙げられる。これらの設備がいつの間にかひび割れた状態で放置されていることも多い。また、製造ラインの上部に位置する蛍光灯の基盤部分が錆びていることや、配管に埃等の汚れが蓄積していることも多い。原料等が開放状態で扱われる箇所については特に注意が必要である。
 このような設備・機器に対しては、年間の保全・清掃計画を策定し、管理することが推奨される。
 また、原料等の周辺に存在する器具では、計量カップや温度計、Brix計などの計測具、製造ライン周辺に置かれている開封用のハサミ、カッター(一枚刃)などが挙げられ、人員が保有する用具では、自組織の工場内で携帯が許可されている筆記用具、計測具、携帯電話などや労働安全のためのゴーグルなどが挙げられる。
 これらについても、例えば、使用する間に製造ライン内に落下しない場所で仮置きするルールや使用後の定位置・定数管理の実施状況の再確認が推奨される。

(3)『施設全体の確認』

最後に施設全体における異物発生源としては、多種・多様なものが存在する。
 例えば、製造ラインから離れた場所にあるガラス製や樹脂製の設備として、蛍光灯、窓、ドア、姿見、フォークリフトのランプカバー、時計などが挙げられる。これらのように破損した際に多くの破片が発生する可能性のあるものは、リスト化し、漏れなく把握した上で破損時に破片が飛散しない対策を施し、定期的に破損チェックを実施することが推奨される。
 同様に、天井や壁、配管、空調設備などもカビや塗装片の落下による異物混入や、そ族昆虫の外部からの侵入あるいは内部での発生が懸念されるかの確認についても、必要な頻度で保全・清掃・洗浄計画を策定し、管理することが推奨される。

品質問題への取組み例③

「組織外で発生した問題の自組織への置き換え検討」
 次に、組織外での問題が報道された場合、自組織でも同様の事象が発生することがないか検討することが推奨される。このためには、問題事例の情報や業界内あるいは行政の情報など、必要な情報の入手を担当する部署を決め、定期的に協議を行う体制の構築が必要となる。

品質問題への取組み例④

「ISO/TS 22002-1を参考にした自組織の確認」
 最後に、製品製造に関する前提条件プログラムとしてFSSC22000にて要求されるISO/TS 22002-1を利用して自組織の状況を確認する方法が挙げられる。ISO/TS 22002-1の各項目について自組織に該当するかの検討及び該当する項目が発生要因として挙げられ、管理できているかの確認を進めることが推奨される。

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