意図的な混入を防ぐための対策として、厚生労働省の研究班がまとめた食品防御ガイドライン(食品製造工場向け)が挙げられます(*注1)。
このガイドラインには、以下のような項目が記載されており、国内の多くの企業が既に対策を検討されています。
【施設管理】
・敷地への侵入防止
・脆弱性が高い個所への見回り、相互監視、カメラの設置
・保管庫の施錠管理
【人的要素(従業員・部外者)】
・従業員教育、意識付け
・施設内での持ち物制限
・工場内の毒劇物・薬剤管理
このうち、特に人的要素の「従業員教育、意識付け」において、検査が非常に有効な手段となると考えられます。
検査には、たとえば、入室時のボディーチェックや持ち物の抜き打ち検査などの対策や、人による官能検査、分析機器を用いて行う検査などが挙げられます。
ボディーチェックや持ち物の抜き打ち検査などは、措置の実施は難しい側面もありますが、不要な物などを確認することが期待できる点から、実施を検討されている企業も少なくありません。
一方、人が測定器の役割を果たす官能検査、分析機器を用いて行う検査についても、フードディフェンスの観点から強化が推奨されます。
検討されるべき検査について
このような検査は、原材料から顧客に至る各段階において、@ サプライヤーにおける検査、A 製造企業での受入検査、B 工程内検査、C 製品検査、そして、D 異常発生時(クレーム含む)の原因特定検査が主なものとして挙げられます。
【@ サプライヤーにおける検査】
サプライヤーにおける検査としては、規格書に関する内容の検査証明書(COA)として、通常、食品安全に関する項目について実施されると考えられます。
これに加えて、対象原材料や過去の事件・事故、また、生産地などにて容易に入手可能な農薬、その他の化学物質を確認し、混入の恐れの対象と考えられる農薬の検査、有害元素検査などの実施をサプライヤーと製造企業にて相談されることが推奨されます。
このような検査は、供給先の管理強化に繋がり、適切な原材料入手のための対外的な説明も可能となります。
【A 製造企業での受入検査、B 工程内検査】
これらの検査については生産中に行われ、即座に問題を察知するためにも、出来るだけ簡便で迅速に結果が得られる検査が求められます。
例えば、これらの検査としては、官能検査やpH試験、特定原材料に対する簡易試験などが挙げられます。実際に、これらの検査は適材適所で実施されておられるでしょう。
ただし、官能検査においては、人が判断基準となることから、各人の意識やスキルによって確認可能な程度が異なります。フードディフェンスについての教育とともに、官能検査員のトレーニングが必要と考えられます。
なお、官能検査において異常が察知された場合には、早急に原因究明のための機器を用いた検査が必要となります(D 異常発生時の原因特定検査)。
これに関しては、2014年5月号のメールマガジン記載のフードディフェンスにおける検査@「異常事態が発生した際に、何らかの物質が混入されているかを確認するための検査」をご参照ください(*注2)。
【C 製品検査】
上記 @ サプライヤーにおける検査と同様に、使用原材料や過去の事件・事故、また、工場付近にて容易に入手可能な農薬、その他の化学物質を確認し、混入の恐れの対象と考えられる農薬の検査、有害元素の検査などの実施を検討されることが推奨されます。
上記のように、自社の各工程においてリスクとして考えられる物質を検討、リスト化することによって、自社内および取引先の関係者とともに、必要なフードディフェンスについての意識を高めることが可能となります。
また、それによって、万が一、問題が発生した際においても、迅速かつ的確な対応を行うことに繋がります。
食品に対する事件・事故の対策は、多くの企業が取組みを開始されています。
必要とされる対策は上述のように多岐にわたり、実施が困難なものもあるでしょうが、食という生活の基本に携わる者として、食品事業者各々がこれらを計画化され、着実に実行されることを推奨します。