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ifia 2011 出展者プレゼンテーション 臭気・異臭分析 〜開発からクレームまで〜

1.異臭とは

(1)臭いと化学物質
人間の五感の一つである嗅覚に関与する「におい成分」は、約40万種類以上存在すると考えられている。「におい成分」は、分子量20〜400程度の物質が多く、嗅覚は、これらの「におい成分」が多数混在した複合臭を感じている。においの成分やそのバランスに僅かな違いがあるだけで「異臭」として感じられる事が多々ある。においの中でも不快なにおい、いやなにおいという意味で使われるのが「臭い」という文字である。図1に代表的な臭いとそれに関与する化学物質を示した。
(2)異臭クレームの原因について
異臭クレームとして挙げられるものはどのようなもので、何が原因となっているのか、主要な異臭の種類及びその原因について別紙に記載した。

1)カビ臭

(1)ハロゲン化アニソール
(2)ジェオスミン及び2-メチルイソボルネオール

2)腐敗臭

(1)動物性食品
(2)植物性食品

3)薬品臭

4)石油臭

(1)石油成分由来
(2)非石油成分由来

5)劣化臭

2.異臭クレーム対応を主眼においた分析方法とは

異臭クレームにおける分析ではとにかく迅速性が求められるが、それ以外に要望の高いものを以下に示す。

(1)簡便かつ高感度であること

(2)スクリーニング的に分析できること

(3)異臭の要因となる成分をできる限り変化させることなく分析できること

(4)試料の性状(気体、液体、固体)によって、分析方法を選択せずに分析ができること

3.異臭分析の流れ

異臭分析の流れを図2に示す。定性分析までで十分なのか、定量分析まで必要か、目的に応じて分析に用いる機器の選択を行っている。

4.異臭クレームにかかわる検証事例

異臭クレームが発生した際には、臭気分析によって異臭の原因物質の特定を行うだけでなく、他の分析と併用することにより、調査の精度を高め、原因究明に活用することができる。
(1)酵母による汚染が疑われた柑橘果汁のケース
臭気分析を行ったところ、正常品と比較して、異常品では柑橘類に特有の主要香気成分が減り、エチルアセテート、エタノール、イソブタノール、イソアミルアルコールなどのアルコール類やエステル類が検出された。微生物分析から酵母が多く検出されていたことの裏付けにもつながった。
(2)果汁より薬品臭が発生したケース
臭気分析を行ったところ、異常品のみグアイアコールが検出された。 さらに異常品の遺伝子分析を行ったところ、耐熱性好酸性菌の1種であるAlicyclobacillus.acidoterrestris と同定された。薬品臭の原因は、同菌によるもので再発防止策として、原料果汁の受入基準の見直しを製造先に対し指導した。
(3)会社に設置されているウォーターサーバーにて墨汁臭が発生したケース
臭気分析を行ったところ、2-メチルイソボルネオール(2-MIB)が検出された。さらに異常品の遺伝子分析を行ったところ、放線菌の1種であるNocardia属と同定された。原因究明のために現場調査としてウォーターサーバー内にある各パーツを拭き取り分析を行った結果からウォーターサーバーのメンテナンス不足であることが確認された。墨汁臭の原因は、メンテナンス不足によりウォーターサーバー内で放線菌が繁殖し、2-MIBが産生されたことによるもので製造先に対し、再発防止を目的とした管理手法導入の指導を行なった。

5.商品開発における臭気分析の活用

(1)賞味期限設定
商品の賞味期限設定では、官能分析を実施することがあるが、この際に経時的に商品特有の香りが変化することがある。この結果の裏付けに臭気分析(香気分析)を活用することもできる。
(2)リスク対策
商品への臭いの移行(移り香)の可能性がないか、製造環境・保管環境・輸送環境などの各工程におけるリスク要因の調査に臭気分析を活用することができる。得られた分析結果は、潜在化していた問題を顕在化させ、受入時に確認する基準の見直し、製造施設のレイアウトの見直し、保管場所の見直し、包装資材の選定などに活用することができる。

6.まとめ

臭気分析は、このようにクレーム発生時の分析だけでなく、商品開発やリスクの予見に至るまで幅広く活用をすることができる。
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