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必ずうまくいく!!一般的衛生管理(その3)
1.一般的衛生管理の具体的事例紹介
  これまで一般的衛生管理と食品7Sとの関係を述べてきました。今回は具体例として、賞味期限・消費期限を設定する際の保存検査時にみられた事例を紹介します。
2.期限設定のための保存検査について
 賞味期限や消費期限の設定については、食品の特性等に応じて、微生物試験や理化学試験及び官能検査の結果に基づき、科学的・合理的に行うこととされており、当該食品に関する知識、経験、情報などを最もよく把握している製造業者等が責任をもって設定する必要があります。期限設定は、用いられる原材料・加工方法・包装形態・保存方法が重要なファクターで、これにより経時的な変化が生ずることは言うまでもありません。したがって、食品が各種条件によってどのように変化していくのかを十分に調べる必要があります。保存条件の設定には、商品保存に影響を与える下記のような項目を検討し、条件内容を絞り込んでいきます。なお、当センターでは、お客様により安心・安全な食品を販売いただく為の期限設定についての各種検査とアドバイスを行っています。
 ・保存温度
 ・保存期間は想定する期限の1.3倍〜2倍をとる
 ・製造工程の殺菌条件等の把握
 ・使用原材料の確認
 ・販売形態の確認 など
3.保存検査の結果が芳しくなかったケース
 生めん類(ゆでめん)の消費期限設定を行うための保存検査を行った際に結果が芳しくなかったケースを紹介します。生めん類(ゆでめん)には、弁当及びそうざい、漬物、洋生菓子、セントラルキッチン/カミサリー・システムと同様に衛生規範があります。衛生規範は、食品衛生法により規格基準の定められていない食品について、食中毒の発生の未然防止のため、製造から販売までの過程全般における取扱い等の指針として、厚生労働省が定めたものです。
 図1に生めん類(ゆでめん)の保存検査の結果を示します。消費期限は4日を設定目標としているため、安全係数(0.8)を考慮して、保存条件は10℃で5日間としました。
しかし保存開始2日目で衛生規範の規格を満たすことができなくなりました。
原因として以下のことが考えられます。
図1 生めん類(ゆでめん)の消費期限設定
@原材料の衛生管理が不適切
 受入検査や確認体制の不備及び保管管理が不十分で、保管中に何らかの二次汚染を受けた可能性があります。
A製造現場の衛生管理が不適切
 製造後の製品が高温や多湿等、商品の品質にとって不適切な条件下に保管された可能性があります。
B標準作業手順が不適切
 工場内の設備・機器・器具の洗浄や殺菌が不十分であることや、製造時の加熱工程(温度、時間)が不十分である可能性があります。この場合、標準作業手順書どおりに行われているか、記録を確認する必要があります。また洗浄方法や殺菌方法に問題がないか、条件を科学的に効果検証し、妥当性の有無を確認する必要があります。
妥当性を確認する一例を以下に示します。
 ・洗浄剤が対象となる汚れに対して効果があるのか
 ・対象となる汚れを除去するに適した温度か
 ・洗浄器具の選択は適切か
 ・使用濃度は適切か
 ・対象となる微生物に対する除菌効果があるか
 ・洗浄除菌剤の希釈濃度に誤りはないか
 ・対象微生物に対する加熱条件(温度や時間)は殺菌効果が十分にあるか
C従業員の衛生管理が不適切
 従業員への衛生教育が不十分であることより、製品が衛生的に不適切な取り扱いを受けた可能性があります。
D商品設計自体の問題
 色調や風味、食感の劣化など品質への影響を避けるために製造条件(特に加熱条件)に無理な箇所はなかったか。水分活性など配合に問題はなかったか。微生物上問題のある原材料を使用していなかったか確認する必要があります。
 上記の問題の原因は一般的衛生管理が十分な機能を果たしていないことより発生しています。当センターでは工場や施設の監査・調査等のコンサルティングを行っていますが、このように検査により顕在化した問題・課題につきましても問題解決のサポートを行っております。
改善への取り組みの一例を示します。
 ・原材料に問題があった場合には再選択を行う。
 ・管理基準に問題があった場合には、製造工程や保管条件等の見直しを行う。
 ・従業員への教育訓練や勉強会の実施
 ・食品7Sの実践(整理・整頓・清掃・洗浄・殺菌・躾・清潔)
 ・第三者機関による外部監査の実施。各種認証制度の活用
4.まとめ
 日常業務ほど慣れが生じ、手抜きや軽視されてしまうおそれがあります。各工程でのプロセスの実施状況、決められたルールの遵守、作業者の衛生的な取扱に対する意識、汚染のない製造環境、これらはすべて一般的衛生管理に関連しています。1つでも正しく実行されないと衛生管理の仕組みが有効に機能せず、工程でのトラブルの発生やヒューマンエラーによる品質の不良が発生し、やがてはクレームが発生し、問題や被害をどんどん拡大させてしまいます。立派なルールをつくっても実行するのはヒトです。管理者は従事者に個々の管理項目やルールの目的・意味を十分に理解させるまで繰り返し説明を行い、手抜きなく1つ1つ確実に実行されているかを確認しながら、次工程に異常が絶対持ち込まれないように仕組み化しなければなりません。
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