1986年に、WHOは食品由来の鉛を低減するよう勧告を出した。その後、コーデックス委員会も2004年に、食品の鉛汚染の防止と低減化を図るための行動規範を設定した。
一方、JECFAは1986年に乳幼児のPTWIを25 体重/週に引き下げ、1993年にはその値を全年齢層に拡張した。さらに、2010年6月の第73回会合において用量−反応関係を解析した結果、この量でも小児のIQを低下させ、成人の収縮期血圧を上昇させるため、"health protective"とは考えられないとして、このPTWIを撤回した。閾値が不明であるとして、新しいPTWIは設定されなかった。このJECFAの決定に先立つ2010年3月には、EFSAの委員会CONTAMが「当時のJECFAのPTWI(25 体重/週)はもはや適当ではない」と報告していたところである。
他方、わが国の食品安全委員会はリスク管理機関の要請がなくても「自ら評価」を行う対象として鉛を選定し、化学物質・汚染物質専門調査会に鉛ワーキンググループを設置し、2008年7月から健康影響評価を開始している。JECFAがPTWIを撤回したため、食品安全委員会の評価がにわかに注目されるようになっている。 |