意外と知らない農畜水産物の部位名称について
一般財団法人 食品分析開発センターSUNATEC
検体調製室 1.はじめに食品検査を自社で実施あるいは第三者機関にご依頼される際、どの部位を検査対象としどの部位を除去して検査を行うかを明確にすることは非常に重要であり、検査結果に大きく影響する。バナナを例にしてみると、微生物検査の場合、皮を含めて検査した場合と皮を除いた後のいわゆる「可食部」のみを検査した場合では、結果は大きく異なってくる。前者に比べて後者の方が圧倒的に生菌数は少ない。また、栄養成分分析の場合、皮を除いた可食部を検査するのが一般的である。ところが、安全性確認のための残留農薬等の検査の場合、検体は果柄部を除去したものと食品、添加物等の規格基準(昭和34 年厚生省告示第370 号)第1食品 Aの部 食品の成分規格(以下、「厚生省告示第370号」という。)に表現されているため、果柄部を除いた後の皮を含めて検査することになる。 このように検査目的によって一般的に除去する部位を検査部位に含める場合と含めない場合があり、あらかじめ除去して欲しい部位を正確に伝えることは非常に重要である。バナナの皮、精肉の筋、魚の骨などであれば誰でも簡単に理解できるが、農畜水産物の部位名には専門的でわかりにくい名称もあり、正確に伝えにくい場合がある。『しいたけのあたまの部分は「傘」、「傘」を支えている部分は「柄」、では、地面や原木に接している「柄」の下部の名前を何というでしょう』のようにクイズの問題になるくらいである(答えは、「2.農産物の部位名の一例」を参照)。そこで本稿では、厚生省告示第370号や日本食品標準成分表で示されている農畜水産物の部位の名称についてその一例を紹介する。 2.農産物の部位名の一例脱穀した種子(大麦)
※1 とうもろこしについて、厚生省告示第370号に示されている検体は、「外皮」、「ひげ」及び「しん」を除いた種子と表現されている。一方、日本食品標準成分表では「しん」の部分は、「穂軸」と表現されている。
※2 うめについて、厚生省告示第370号に示されている検体は、「果梗」及び「種子」を除去したものと表現されている。一方、日本食品標準成分表では「種子」の部分は、「核」と表現されている。 ※3 厚生省告示第370号に示されている食品は「おうとう」、検体は「果梗」及び「種子」を除去したものと表現されている。一方、日本食品標準成分表では食品名は「さくらんぼ」、「果梗」は「果柄」と表現されている。
※4、5 日本食品標準成分表では、たまねぎの根元を「底盤部」、にんにくの根元を「根盤部」と表現されており、同じような部位でも野菜によって異なることがある。
3.畜産物の部位名の一例肉の部位 牛の部位 ぶたの部位 鶏の部位 4.水産物の部位名の一例
海藻の部位 5.さいごに農畜水産物の部位の名称の一例を画像と共に紹介した。とうもろこしのように同じ部位でも出典によって名称が異なっていたり、にんにくとタマネギのように同じ地面に接している部位でも名称が異なっていたり、牛とぶたのように部位によっては種が異なっていても同じ名称を使っていたり、と部位名称の名付けの妙味を知って頂けたと思う。 冒頭にも述べた通り、食品検査を行う場合には、目的に応じて検査対象とする指定部位を正確に示さなければ、求める結果が異なることになるし、ムダな検査となってしまう可能性がある。また、除去すべき部位を除去せずに検査を実施した場合、規格基準への適否判断ができなくなる。本稿を通じて、農畜水産物の正式な部位名称を知って頂くことで、正しい検査の実施に繋げて頂ければ幸いである。また、第三者機関に検査をご依頼される際は、ご依頼内容と合わせて事前に検査対象部位をご相談頂くのもよいでしょう。 参考資料
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