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ビタミンB6について
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微生物検査室

1. はじめに

ビタミンは、それ自体が体の構成成分になったり、エネルギー源になるものではないが、正常な生理機能を保つためには必要不可欠な成分である。一般的に脂溶性ビタミン4種類と水溶性ビタミン9種類の合計13種類の有機化合物がビタミンと呼ばれている。

本稿では水溶性ビタミンの一種であるビタミンB6について、その化学的特性、生理作用、分析方法を中心に紹介する。

2. ビタミンB6とは

ビタミンB6は水溶性のビタミンでピリドキシン(図1)、ピリドキサール(図2)、ピリドキサミン(図3)とそれらのリン酸エステル型の化合物の総称であり、たんぱく質の合成や分解、神経伝達物質の生合成に関与する補酵素である。

 

 

3. ビタミンB6の化学的特性

白色から微黄色で水に溶けやすく、エタノールには溶けにくい性質を持ち、光に対して不安定である。

4. ビタミンB6の吸収や生理作用

ビタミンB6は、食品中ではリン酸エステル型で存在することが多いが、摂取後、小腸粘膜上皮細胞のホスファターゼによって遊離型に分解され、空腸から吸収された後に、肝臓に運ばれ、肝臓の細胞中のピリドキサールキナーゼにより、リン酸化される。

生体内では、それらのリン酸化化合物がアミノ代謝や生理活性アミン(セロトニン、ドーパミン、アドレナリン、ヒスタミンなど)の合成に必須な脱炭酸反応やホルモン調節因子として作用する。

ビタミンB6が不足すると、湿疹、口角炎、舌炎、脂漏性皮膚炎、貧血などが引き起こされる。一方、過剰摂取時には、感覚神経障害、末梢感覚神経障害、精巣萎縮、精子数の減少などを引き起こす。

5. ビタミンB6の栄養成分表示

ビタミンB6は食品表示基準において、栄養成分表示の任意表示項目の1つに設定されており、一定値で表示する場合、その表示の許容差の範囲は -20%~+80%と設定されている。

また、栄養機能食品の対象成分として機能の表示を行うことができる。栄養機能食品として販売するためには、1日当たりの摂取目安量に含まれる成分量が0.39~10 mgの範囲内にある必要があるほか、下記に示す栄養成分の機能、注意喚起表示等も表示する必要がある。

 

(1) 栄養成分の機能

ビタミンB6は、たんぱく質からのエネルギーの産生と皮膚や粘膜の健康維持を助ける栄養素です。

 

(2) 摂取をする上での注意事項

本品は多量摂取により疾病が治癒したり、より健康が増進するものではありません。
一日の摂取目安量を守ってください。

 

その他、摂取の方法やバランスのとれた食生活の普及啓発を図る文言など定められた内容を明記する必要があるが、詳細は消費者庁のHPなどを参考にされたい。

栄養機能食品の場合、機能を表示する成分量については、一般的な食品のように、合理的な推定による値は認められず、食品表示基準に定められた方法によって得られた値で表示する必要がある。

6. ビタミンB6の分析

食品表示基準におけるビタミンB6の分析方法は、微生物学的定量法が採用されている。微生物学的定量法は、ビタミンを必須栄養素として要求する微生物を測定対象となるビタミンを除いた培地で培養した際の微生物の増殖具合(濁度)よりビタミンを定量する方法である。試料を酸溶液に溶解後、加圧抽出を行い、エステル型を遊離型に酸加水分解する。加圧抽出後、pH調整、定容を行い、試料溶液を調製する。その後、ビタミンB6定量用培地にピリドキシン標準溶液または試験溶液及び試験菌株(Saccharomyces cerevisiae ATCC 9080)を接種して、一定時間培養後、培養液の濁度(600 nm)を測定し、塩酸ピリドキシン含量を算出する(図4)。得られた値に係数0.8227を掛けて、ビタミンB6とする。

微生物学的定量法の場合、ピリドキシン、ピリドキサール、ピリドキサミンに応答する菌株を使用するため、分別定量をする必要はない点が、大きな特徴として挙げられる。

微生物学的定量法は分析結果が菌株の発育状況に大きく左右される他、試験法の原理や成分自体の特性を理解・把握しておくことは勿論のこと、理化学的処理や微生物を取り扱う技術力、経験が必要とされる難易度の高い試験法であると言える。

 

図4 ビタミンB6分析のフローチャート

 

7. さいごに

ビタミンB6は、にんにく、大豆、ピスタチオ、とり肉、かつお肉などに多く含まれており、たんぱく質からのエネルギー産生などに必要なビタミンである。栄養機能食品の対象成分でもあるが、多量摂取により、健康が増進するものではない。通常の食生活では欠乏することはなく、日頃からバランスのよい食事を心がけたい。

参考文献
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