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食品事業者における品質保証・品質管理教育の組織的な取組み①
一般財団法人 食品分析開発センターSUNATEC
コンサルティング室

1.はじめに

近年、食品の安全を取りまく環境の大きな変化と、国際化に沿う流れの中、食品衛生法改正などの食の安心・安全への強化に呼応し、食品事業者は品質保証・品質管理に取組むことが求められている。その取組みの一つとして、事業者内の人員に対する教育(訓練含む)を通じて、品質保証・品質管理に必要な力量を持たせることが挙げられる。

品質保証・品質管理のための教育は非常に重要である一方、事業者によっては教育に掛けることができるコストや時間が不足している。このため、事業者は自らに必要な教育について整理し、優先順位を決めて、効率良く、取り組むことが望まれる。

本稿ではその一助となることを期待し、現在多くの食品事業者が取組んでいる食品安全マネジメントシステムのISO22000:2018において要求される力量に対する教育や、更に品質保証・品質管理のために必要となる教育の一部を紹介する。

なお、ISO22000以外の食品安全マネジメントシステムに取組まれている事業者や、現時点でこれらの食品安全マネジメントシステムに取り組んでいない事業者においても、教育は共通する課題と考えられるため、参考にして頂ければと思う。

2.ISO22000:2018にて要求される力量に対する主な教育

 

ISO22000では、要求事項7.2項(力量)をはじめとして、関係する人員に力量を求める項が多く存在しており、それに関連して教育も必要となる(表1)。

 

表1.ISO22000:2018要求事項の中で「力量」の表記がある項

箇条
5.リーダーシップ 5.2 方針 5.2.1 食品安全方針の確立 f)
5.3 組織の役割、責任及び権限 5.3.2 c)
7. 支援 7.1 資源 7.1.2 人々
7.2 力量 a)~e)
7.4 コミュニケーション 7.4.3内部コミュニケーション g)
7.5 文書化した情報 7.5.1 一般 注記
8.運用 8.9 製品及び工程の不適合の管理 8.9.1 一般
8.9.5 回収/リコール
9.パフォーマンス評価 9.2 内部監査 9.2.2 c)

 

【食品安全チームの教育】

要求事項の中でも、食品安全マネジメントシステムの中核であるハザード分析を行う食品安全チームの教育は特に重要と考えられる。

要求事項7.2 c)項では、食品安全チームが多くの分野にわたる知識及び経験をあわせもつことが求められている。

多くの分野にわたる知識には、少なくとも自らの製品、製造工程、使用する装置や施設、食品安全ハザードに関する知識(生物的、化学的、物理的ハザードに関する知識)、食品安全ハザードへの管理手段に関する知識などが挙げられる。

食品安全チームの人員の経験・知識が不足している場合には教育が必須となる。

 

【モニタリングに関わる人員の教育】

ハザード分析によって事業者が決定したCCPなどの管理手段を適切に実施するため、モニタリングに関わる人員の教育も重要である。

要求事項8.7項には、モニタリングや測定自体が適切に行われることが求められ、要求事項8.9項ではモニタリングの結果を評価する人員の力量が求められている。

このため、モニタリングに関わる人員に対し、適切なモニタリング・測定の手順や基準、またこれら逸脱時の対応などについての教育が必要となる。

食品事業者においては、これらの教育が十分にできており、モニタリング評価が適切に実施されることが必要と考えられる。

3.更に教育を検討すべき点

多くの食品安全マネジメントシステムでは、健康被害を引き起こす食品安全ハザードが対象であり、健康被害を引き起こさないような問題は対象外である。

しかし、実際の食品事業者の活動では、健康被害に繋がるクレームより、健康被害に繋がらない品質に関するクレームに苦慮している場合の方が多い。

このことから、健康被害に繋がる食品安全ハザードに関する知識だけでなく、品質や官能に関わるリスクとその予防手段に関する知識の習得が望まれる。

例えば、生物的リスクにおいては、食中毒に繋がる微生物だけでなく、製品の変敗など風味異常を起こす微生物に関しての知識が必要であり、物理的リスクでは、金属片のような硬質異物以外にビニール片などの軟質異物や毛髪などの不快異物の発生リスクに関する知識の習得が必要である。

更に、健康被害に繋がらない品質に関するクレームへの対策として、一般衛生管理に関する全般的な知識の習得や、顧客の品質要求事項、さらにそれらに関わる自組織における管理ルールを周知徹底するための力量も必要となる。

一般衛生管理については、ISO22000においても前提条件プログラムを確立することとされているが、CCPなどの管理手段とは異なり、具体的な力量についての要求はされておらず、十分に実施できてない事業者も多いと考えられ、注意が必要である。

4.おわりに

食品を取り扱う事業者において健康被害を引き起こす問題の発生は絶対に避けなければならず、そのために食品安全マネジメントシステムにある要求事項にて明確に求められている力量を自組織に当てはめて確認することが有効であり、必要に応じた教育を実施することが重要と考える。

また更に、クレームを低減するためには、自組織に発生する品質に関わるリスクの予防に必要な教育を選定し、優先順位を決めて効率的に進めていくことが望まれる。それには、自組織の教育推進責任者の明確化や経験のある第三者組織による教育支援なども有効である。

次号では、継続的な教育体制の構築や教育プログラムの作成、教育を効率的に行うためのノウハウについて紹介する。

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