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![]() HACCPに沿った衛生管理の制度化に向けての対応
![]() 山口大学 共同獣医学部
教授 豊福 肇 2018年6月の食品衛生法等の一部改正により、すべての食品事業者にHACCPに沿った衛生管理が制度化される。 2019年5月21日から開始された政令案に対するパブリックコメントでは、法第50 条の2第1項第2号の小規模な営業者その他の政令で定める営業者については、以下のとおりとされている。(施行令第34 条の2関係)
一部、厚生労働省令を見ないと明らかにならないが、概ね、従前から厚生労働省が説明していた範囲が所謂「HACCPの考え方を取り入れた衛生管理=もとの基準B」となるようである。 それでは、「HACCPの考え方を取り入れた衛生管理」の対象事業者は、どういう形で身の丈に合せて対処すればよいかについて、述べてみる。
手引書の内容ほとんどの「HACCPの考え方を取り入れた衛生管理」の手引書は一般衛生管理と重要なチェックポイント(CCPに相当)に分けて構成されており、手引書によっては、製品説明書、フローダイヤグラム、ハザード分析及びそれに基づく重要なハザードとそのコントロール(すなわち推奨されるCCPとその管理のための管理基準、モニタリング方法、改善措置、校正)、記録用紙の例が含まれている。 手引書アプローチは日本だけではない。2006年にHACCPを義務化した欧州では加盟国単位の業界団体が作成したガイドラインはその国の食品安全主管部局が、EU全域をカバーする業界団体が作成したガイドラインはEU DG SANCOが確認し、webサイトで公開されている。 その2006年頃、ベルギー政府の担当者と話した時、「事業者が何もしないよりは、ガイドラインそのままでも衛生管理をやった方が食品安全上、はるかに良い」と言われたのが今でも記憶に残っている。 成功のためのアドバイス【一般衛生管理で頑張りすぎない】一般衛生管理は特に今回の改正で新たなことを求めているわけではない。従来の管理運営基準のなかで、特に重要な項目について、実施の手順と確認の頻度を定め、問題があった場合の対応を事前に決定し、実施後に記録を求めている。記録といっても、一日1行程度の手引書が多い。一般衛生管理に集中しすぎると、本丸であるCCP管理まで行きつけない。また、一般衛生管理は業種が異なっても、共通部分は多いので、他業者の手引書も参考にできる。 なお、記録をどこまで細分化するかは事業者に任せられているので、手引書の記録例を参考に、細分化されている記録用紙を好む場合には、それを用いても構わない。(実施状況を確認するのに、チェックすべき箇所の見落とし等が減るので) 【重要なハザードはそんなに多くはない】一般衛生管理を確実に実施しても、さらに管理が必要な重要なハザードはそんなに多くはない。従って重要なチェックポイント(CCP)も少ない。食品の特性によっては、一般衛生管理の確実な実施で対応できるのでCCPを設定する必要がないとしている手引書もある。自分が製造加工している食品で何が重要なハザードで、どのようにその発生を制御するか、正しく把握し、実施することがHACCPの本質であるので、重要なハザードの正確な把握は必須であり、その支援をすることが手引書の重要な役割である。 【他業種の手引書でも参考になる部分はある】金属異物が重要なハザードとして確認された場合、金属探知機をCCPとして管理する場合の具体的な管理方法は、種々の手引書で紹介されている。また、加熱をCCPとし、温度をモニタリングする場合の温度計の校正手法もいくつかの手引書で具体的に紹介されている。これらはどの食品でも共通なので、他業種の手引書の内容であっても参考にすることはできる。 【講習会】一部の事業者団体は、すでに手引書を参考にした講習会を実施している。2019年度は農林水産省の補助事業で、各種事業者団体による「考え方を取り入れた衛生管理」の講習会が行われるので、まずは受講してみることをお勧めする。 ※2019年6月19日現在、厚生労働省の技術検討会で確認された「HACCPの考え方を取り入れた衛生管理のための手引書」は以下のwebサイトで確認できる。 略歴豊福 肇(トヨフク ハジメ)
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