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大豆イソフラボンについて
一般財団法人 食品分析開発センター SUNATEC
第三理化学検査室

大豆イソフラボンとは

大豆イソフラボンは、特に大豆の胚芽(胚軸)に多く含まれているフラボノイドの一種であり、その化学構造が女性ホルモン(エストロゲン)に似ているため、植物性エストロゲンとも呼ばれている。大豆に含まれるたんぱく質、ミネラル等とは異なり、ヒトの体に必須の栄養素とはされていないが、エストロゲン受容体(エストロゲンレセプター)に結合することから、種々の生体作用を発揮することが知られ、注目されている成分である。大豆イソフラボンは、大豆を使った加工食品のほとんどに含まれているが、原料の大豆の種類や食品の製造方法によって含有量は異なる。

大豆イソフラボンの種類・特徴

大豆に含まれるイソフラボン類は、配糖体の糖部分がはずれた構造の非配糖体(イソフラボンアグリコン)であるダイゼイン、ゲニステイン及びグリシテインと、それぞれに3種類の配糖体(ダイジン、ゲニスチン及びグリシチン)、配糖体のアセチル化体、及びマロニル化体の12種が知られている。

大豆・大豆製品に含まれる大豆イソフラボンは、主に大豆イソフラボン配糖体の含有量が多く、その中でもマロニル化配糖体の含有量が最も多い。一方、味噌、納豆等の大豆発酵食品中にはイソフラボンアグリコンが多く含まれている。

また、ヒトが摂取した大豆イソフラボン配糖体は、唾液や小腸粘膜の酵素、あるいは腸内細菌の持つβ-グルコシダーゼ等により、大豆イソフラボンアグリコンとなり、腸管から吸収される。大豆イソフラボンアグリコンであるダイゼイン、ゲニステイン及びグリシテインの構造式を図1に示す。

図1 大豆イソフラボンアグリコン(ダイゼイン、ゲニステイン及びグリシテイン)の構造式

 

大豆イソフラボンの作用、効果

大豆イソフラボン配糖体は、そのままではエストロゲン受容体に結合しないが、体内で大豆イソフラボンアグリコンに変化することによって、エストロゲン受容体と結合する。この作用により、骨粗しょう症の予防や、更年期障害の軽減、乳がん、前立腺がんなどの予防効果が期待されている。

 

大豆イソフラボンの試験方法

大豆イソフラボンの定量分析については、平成18年8月23日付食安発第0823001号 別紙「食品中の大豆イソフラボンアグリコン(アグリコン当量)の試験方法」に基づき、70%のエタノールを抽出溶媒として用い、高速液体クロマトグラフ法にて分離定量する試験方法が一般的である。他には薄層クロマトグラフ法、ガスクロマトグラフ法といった試験方法も報告されている。高速液体クロマトグラフ法により分析した大豆イソフラボンのクロマトグラムを図2に示す。

図2 大豆イソフラボンのクロマトグラム

 

おわりに

世界有数の長寿国である日本において、低脂肪、植物性たんぱく質、カルシウムなどの栄養素に富む食品である大豆・大豆食品を摂取することは、日本人の食事の健康的な因子の一つとなっていると考えられている。平成14年国民栄養調査(厚生労働省)による大豆・大豆製品(豆腐、醤油、味噌など)の食品摂取量から試算した日本人の大豆イソフラボンアグリコンの摂取量は、16~22mg/日とされている。大豆に含まれる大豆イソフラボンを日常の食生活で食品から摂取する分にはあまり心配はないが、サプリメントや特定保健用食品などから摂り過ぎると、健康を害する可能性があるという報告がある。食品安全委員会 新開発食品専門調査会では、「大豆イソフラボンを含む特定保健用食品の安全性評価の基本的な考え方」において、特定保健用食品としての、大豆イソフラボンの安全な一日上乗せ摂取量の上限値を30mg/日(大豆イソフラボンアグリコン換算)としている。この考え方を参考に過剰な摂取とならないように注意が必要である。ひとつの食品・成分に偏ることなく、平成17年6月に厚生労働省と農林水産省が作成・公表した「食事バランスガイド」等を参考に、バランスの良い食生活を心がけていただきたい。

参考資料

※2018年11月1日現在

厚生労働省 「大豆及び大豆イソフラボンに関するQ&Aについて」

 https://www.mhlw.go.jp/houdou/2006/02/h0202-1.html

農林水産省 「大豆及び大豆イソフラボンに関するQ&A」

 http://www.maff.go.jp/j/syouan/nouan/kome/k_daizu_qa/

食品安全委員会 「大豆及び大豆イソフラボンに関するQ&A」

 http://www.fsc.go.jp/sonota/daizu_isoflavone.html

食品安全委員会 「大豆イソフラボンを含む特定保健用食品の安全性評価の基本的な考え方」

 https://www.mhlw.go.jp/houdou/2006/02/dl/h0202-1b.pdf

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