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包装餅の微生物変敗と防止技術
食品・微生物研究所
所長 内藤 茂三

1.包装餅の変敗現象

1.1 包装餅の細菌による変敗

小袋の中の生切り餅が、変敗してガスを発生して、餅の表面が乳白色、ピンク色に変色し、開封時に発酵臭がある。原因菌は LactobacillusLeuconostoc の乳酸菌であり、いずれも工場からの二次汚染菌である。 袋が膨張して、餅のpHが低下すると共に、表面にクレーター状の窪みが発生する。 原因の殆どが打ち粉の使用による。検出されたガス発生原因菌であるヘテロ発酵型乳酸菌を表1に示す。

表1 包装生切り餅のガス発生原因菌

Bacillus licheniformis
Bacillus subtilis
Bacillus pumilus
Bacillus coagulans
Paenibacillus macerans
Bacillus mycoides
Bacillus cereus
Paenibacillus polymyxa

 

Leuconostoc mesenteroidesLeuconostoc paramesenteroidesのガス発生型のヘテロ乳酸菌、Lactobacillus cellobiosusWeissella viridescrnsが検出された1,2)。切り餅の変敗性は遅い傾向を示したが、小袋の膨張、切り餅の表面のクレーター状の窪みの原因菌はLeuconostoc mesenteroidesLeuconostoc paramesenteroidesLactobacillus cellobiosusであった。

包装生切り餅の表面がべとつき、軟化して褐色から黄色に変色する。開封時に魚臭がして、表面が軟化している。原因菌は大腸菌群であるErwiniaKlebsiellaが多く、ほとんどが工場からの二次汚染菌である。検出された細菌による褐色及び黄色変色軟化変敗原因菌を表2に示す。

表2 包装生切り餅の褐色及び黄色変色軟化変敗原因菌

Erwinia aroideae
Erwinia carotovora
Klebsiella aerogenes
Klebsiella pneumoniae
Citrobacter freundii
Pseudomonas fluorescens
Pseudomonas putida

 

Erwina aroideaeErwina carotovoraKlebsiella aerogenesKlebsiella pneumoniaeCitorobacter freundiiの大腸菌群やPseudomonas fluorescensPseudomonas putidaのグラム陰性細菌が中心である2)。拡散性黄色色素を産生するPseudomonas putidaや切り餅をベトベトに軟化するのはErwina aroideaeErwina carotovora,であった。

餅の表面に白色斑点、白色クレーター、白色軟化穴が発生しており、開封時に独特のムレ臭がある。この餅からは、Bacillusが検出される。加熱包装後の餅に発生する。この原因菌の多くは原料もち米より検出されることが多い。
検出されたBacillusによる白色軟化穴を発生させる変敗原因菌を表3に示す。

表3 包装生切り餅の白色軟化穴を発生させる変敗原因菌

Bacillus licheniformis
Bacillus subtilis
Bacillus pumilus
Bacillus coagulans
Paenibacillus macerans
Bacillus mycoides
Bacillus cereus
Paenibacillus polymyxa

 

検出されたBacillusB.licheniformisB.subtilis,B.pumilusB.coagulansP.macerans
B.mycoidesB.cereus,P.polymyxaと種類が多い3,4)

切り餅変敗に関する細菌についてまとめると、切り餅小袋の膨張した製品からは、Leuconostoc mesenteroidesLeuconostoc paramesenteroidesのヘテロ発酵型乳酸菌、切り餅の変色や表面の濡れた感じのする変敗餅からグラム陰性細菌で色素を産生するPseudomonasErwiniaの細菌が検出される。また、白色の小孔を伴う斑点状の変敗切り餅からはBacillusが検出される。

これらの切り餅の変敗原因を検討した結果、切り餅小袋の膨張はとり粉の使用による製造法に限定され、切り餅の製造に起因する二次汚染であった。また、変色、表面の濡れによる変敗は、原料処理室の汚染区域と切り餅製造工程間の二次汚染であり、白色斑点状の変敗を示す切り餅は原料の精白米からBacillusが検出され、原料の精白米に起因する一次汚染であった5)

1.2 包装餅の酵母による変敗

生切り餅から市場や流通段階で、シンナー臭(酢酸エチル臭)が発生する。外観は包装がやや膨張し、餅の表面の性状は変化がない。開封時に、強力な酢酸エチル臭とエタノール臭が発生する。

因菌は製造工場からの二次汚染菌である酵母、Wickerhamomyces anomalusである。シンナー臭の発生はいずれも酵母に起因するもので多くの食品で発生し変敗の原因となっている6-9)

生切り餅の表面に白いWickerhamomyces anomalusが菌膜を形成して,酢酸エチル臭で変敗する。原因はWickerhamomyces anomalusがエタノールや酢酸を資化して酢酸エチルを生成するためである。

酢酸エチルが生成されると必ずエタノールの生成が認められるところから酢酸エチル生成にはエタノールが関与する。そこでエタノールから酢酸エチル生成能を検討するため洗浄したWickerhamomyces anomalus菌体にエタノールを添加して酢酸エチルの生成を検討した。培養24時間後にヘッドスペースガス中の3.0~26.4%が酢酸エチルとなり、48時間後ではさらに増加して24.3~55.1%となった。しかし、培養を継続しても酢酸エチルの生成の増加は認められず、むしろ減少傾向を示した。エタノールは酢酸エチルの生成に伴って減少した。アセトアルデヒドは培養初期の24時間後に1.4~4.5%認められたが、培養時間の経過とともに減少した6,7)。酵母による切り餅の変敗は、異臭以外は少なく、Saccharomyces cerevisiaeによる白色斑点が発生することがある。

1.3 包装餅のカビによる変敗

餅に生育するカビは青から緑色のPenicillium、黒色のCladosporium、白色から黄緑色のAspergillus、白色から灰色のMucorが中心である。餅に生育するカビの種類は多いが、殆どが着色変敗で、青、深緑、黄色、赤色等である。その原因は包装袋の傷やピンホール、製造工程での二次汚染である。切り餅のカビによる着色変敗原因カビを表4に示した。

表4 包装生切り餅の着色変敗原因カビ

カビの種類 着色
Cladosporium cladosporioides 深緑色
Cladosporium phaerospermum 深緑色
Aspergillus brasiliensis 黒色
Aspergillus oryzae 黄緑色、橙色、黄色
Penicillium expansum 緑色
Penicillium cyclopium 緑色
Monilia sitophila 赤色
Moniliella suaveolens 赤色
Mucor javanicus 灰色

 

切り餅に生えるカビは青から緑色の青カビであるPenicillium expansum、Penicillium cyclopiumが多く、次に深緑色をしたCladosporium cladosporioides、Cladosporium sphaerospermumが多く、赤色の赤カビであるMonilia sitophila、Moniliella suaveolens、灰色の毛カビであるMucor javanicusが検出されることもある。黒色斑点としてAspergillus brasiliensis、黄緑色、橙色、黄色斑点としてAspergillus oryzaeが検出される。

現在では、カビの生えない真空パックの切り餅が普及しているが、乳酸菌による異臭が発生している。

2.包装餅の製造工程中の微生物汚染による変敗

2.1 包装板餅の軟化穴を発生させる変敗

包装板餅はポリエステル/ポリエチレン又はナイロン/ポリエチレン、ナイロン/無延伸ポリプロピレン(CPP)のラミネートフィルムで包装されており、かつ加熱処理されているため、従来のバラ詰め餅や無包装餅と比較してその貯蔵性は良い。一般に90~95℃で20~30分間湯殺菌がされており、100℃以上の高温度及び長時間の加熱処理では餅の「コシ」を落とし、淡黄色に着色し、さらに艶がなくなるので問題があると言われている。しかしながら、餅製造の原料である餅玄米や精白米及び製造工程(機械、工場)に多数の細菌、特に土壌に由来する耐熱性芽胞菌が付着又は混入してくるため現在の加熱条件では包装餅の完全殺菌は、困難であり、その保存期間は夏期、特に6~9月に製造されたものは1~2週間であり、極めて貯蔵性の悪いものとなっている。9月に製造された市販の包装餅に白色の軟化穴が発生したので検討を行った。変敗した包装餅は製造後3ケ月が経過しており、部分的に変敗が進行しており、異臭は発生していないが、白色の軟化穴が内部まで進行していた。

餅玄米を搗精して精白米とし、水洗、浸漬、水切りをした後に蒸し上げ、餅を調製する。これをポリエステル/ポリエチレンのラミネート袋に入れ成型する。成型後に湯殺菌を行い冷却後に乾燥して製品とする。

特徴はポリエステル/ポリエチレン袋に入れて成型して90~95℃、20~30分間の加熱処理を行う。長期保存を行うとBacillusが増殖して軟化穴が発生して変敗する。

包装餅に白色軟化穴の発生した変敗品の表面及び軟化穴内部より分離・同定した6種類の微生物の分布状況を測定した結果、最も多く検出されたのがPaenibacillus polymyxaで変敗品の表面及び内部よりそれぞれ1.0×107/g、2.0×106/g検出された。

なお正常品にも比較的多く検出され、表面に8.0×103/g検出された。次に多いのがB.pumilusで変敗品の表面のみに検出された。本菌はでん粉分解力を有していないため、餅表面にのみ検出された。本菌は正常品の表面にも1.0×107/g検出され、B.lentusP.maceransB.coagulansB.mycoidesはいずれも変敗品の表面及び内部より検出され、それらの菌数は1.0×104~1.0×105/gであった3)

包装餅の白色軟化穴の生成した変敗品の表面及び軟化穴内部より分離・同定した6種類の微生物の生育温度を検討した。

いずれの菌株も15~20℃より生育が盛んになり、40~45℃まで生育した。しかし、B.coagulansは55℃まで生育することを認めた。生育至適温度は、B.pumilus 30~35℃、B.lentus 25~30℃、P. polymyxa 30~35℃、P.macerans 35~40℃、B.coagulans 35~45℃、B.mycoides 25~30℃であった3)

包装餅に白色軟化穴の発生した変敗品の表面及び軟化穴内部より分離・同定した6種類の微生物の耐熱性を検討した。いずれの菌株も耐熱性の芽胞を有するため100℃では殺菌されず、特にB.coagulansは強い耐熱性を認めた。包装餅は90~95℃で20~30分間湯殺菌されていたが、全ての微生物が生残した。

耐熱性の強い順序は、B.coagulansB.mycoidesB.pumilusP.polymyxaB.lentusP.maceransであった。

包装餅の軟化穴の生成は汚染微生物の産生するα-アミラーゼの作用であることが予測される。そこで包装餅の軟化穴より分離した6菌株のα-アミラーゼ活性を測定した。包装餅の軟化穴が最も多く検出されたPaenibacillus polymyxaに最大のα-アミラーゼ活性を認め、次いでB.mycoidesB.coagulansB.lentusであり、P.maceransはその活性が弱く、B.pumilusにはほとんどα-アミラーゼ活性は認められなかった3)

α-アミラーゼ活性は30℃で培養後、2日目より検出され、徐々に強くなり、6日目に最大になり、以後減少した。

包装餅の変敗部位から検出される微生物は好気性のPaenibacillus polymyxaB.mycoidesB.coagulansが圧倒的に多く、B.pumilusB.lentusP.maceransは比較的少ないという結果及びα-アミラーゼ活性はPaenibacillus polymyxaB.mycoidesB.coagulansに顕著に認められたということから包装餅の軟化穴の生成の原因菌はこれらの3菌種であると考えられる。

包装餅の場合は、包装内が嫌気的に保持されていることにより微生物の生育は阻止されている状態にあるが、長期間(1~3ヶ月)保存すると生菌数が増加して軟化穴の出現という変敗現象が発生した。このことは生理学的には、酸化還元電位(Eh)が低いと嫌気的な状態とされているので、外囲の酸素分圧が高くても包装餅自体の酸化還元電位が低ければ嫌気性菌が生育し、逆に酸素分圧が低くても酸化還元電位が高ければBacillusのような好気性菌が生育できると考えられる。細菌の生育と酸化還元電位の関係は古くから多数研究されており、偏性嫌気性菌については酸化還元電位が-0.1~0.2V以下であれば、たとえ空気を吹き込んでも偏性嫌気性菌が生育する。

しかし好気性菌については複雑で酸素分圧が常圧であれば、酸化還元電位が細菌の生育を決定するという場合や飲料のように酸素分圧が低い状態では培地の酸素含量が細菌の生育を決定するという場合がある。

Bacillusは一部低電位で生育できる菌株と生育できない菌株がある。このように嫌気的な環境下での好気性細菌の生育については、酸素分圧と酸化還元電位の高低が複雑に影響することが考えられる3,4)

包装餅のBacillusによる軟化穴を発生させる変敗現象を防止するためには、まず第1に初発菌数を少なくすること、次に包装内部の酸素分圧を長期間低い状態に維持することが必要である。そのためには原料米の生菌数及び製造工程での二次汚染菌を最少にすること、気体透過度の小さいプラスチックフィルムに包装し、脱気度を更に大きくすることが必要である。多様な生育を示す微生物の中には、培地の酸化還元電位が生育に影響を示す場合が多い。一般的に、培地の酸化還元電位が低いと嫌気度が高い。培地の酸化還元電位が高いと好気的である。したがって低い酸化還元電位を好む微生物は嫌気呼吸を行なうと言える。中でも高い嫌気度を要求する微生物として有名なものがメタン菌であり、培地の酸化還元電位(⊿E'0)は-0.33V以下でなければならない。他にも一般的な硝化細菌、脱窒菌、硫酸還元菌などは得てして低い酸化還元電位を要求する8)

2.2 包装板餅の酸敗・軟化変敗

包装餅は、ポリエチレン/ポリエステル積層のフィルムで包装されており、かつ、加熱処理をされているため従来の無包装製品に比較してその貯蔵性は良い。しかし加熱温度が80~90℃、20~30分の湯殺菌であるため、耐熱性芽胞菌による変敗が多い。包装餅が全面に渡って変敗が進行し、酸敗臭が発生し、内部まで軟化していた。原因菌は原料米に由来するB.coagulansB.subtilisであった3,4)

包装餅の変敗原因菌の汚染源は原料米であり、精白、蒸煮により容易に減少することは出来るが、85℃の湯殺菌では完全に殺菌することは出来なかった。包装餅の変敗部位から検出される菌はB.coagulansが圧倒的に多く、B.subtilisは少ないという事実から殺菌対象はB.coagulansが適当と考えられる。

3.包装餅の変敗防止

3.1 包装生切り餅のオゾン処理による微生物制御

1)好気性細菌の制御

包装生切り餅を長期間貯蔵した場合の変敗現象防止にオゾンを用いて検討した9)。オゾン処理した生切り餅は貯蔵前の菌数が減少した。無処理生切り餅の貯蔵前の菌数は1.5×104/gであり、その大部分はBacillusMicrococcusが占めていたが、30℃で70日間貯蔵中に菌数は増加し、特にMicrococcusが4.0×106/gと著しく増加した。生切り餅に1ppmオゾン処理を行うと貯蔵前の菌数は4.2×103/gまで減少したが、70日間貯蔵後には無処理生切り餅とほぼ同数の6.5×106/gとなった。しかし生切り餅に25ppmオゾン処理を行うと貯蔵前の菌数は1.7×103/gまで減少し、70日間貯蔵後では1.2×105/gとなった。生切り餅に50ppmオゾン処理を行うと貯蔵前の菌数は5.7×102/gまで減少したが、70日間貯蔵しても7.5×104/gより増加することはなかった。

なおオゾンの代わりに空気処理を行うと貯蔵前の菌数は1.0×104/gとなり、ほぼ無処理生切り餅と同じであったが、70日間貯蔵後では著しく増加して6.2×107/gとなった。いずれの生切り餅においても70日間貯蔵後にBacillusが1.0×102~1.0×104/gであったが、Micrococcusは著しく増加して1.0×103~1.0×107/gとなった。生切り餅をオゾン濃度25ppm以上で処理すると貯蔵中の好気性菌の増殖抑制効果が認められた。次に生切り餅の貯蔵中における官能的及び外観上の変化を観察した結果、無処理区は貯蔵70日後、空気処理区は35日後に弱い脂肪酸臭及び表面にわずかな白斑点が発生した。オゾン濃度1ppm処理区は70日後に脂肪酸臭及び表面にわずかな白斑点が発生し、さらに軟化した。しかしオゾン濃度25ppm処理区は120日後、オゾン濃度50ppm処理区は240日後においてはじめて脂肪酸臭が発生した9)。ワキシーコーンスターチで製造した生切り餅を適正濃度のオゾンで処理することにより、好気性菌は減少し貯蔵後の菌数の増殖が抑制された10)

 

2)嫌気性細菌の制御

オゾン処理を行った生切り餅の貯蔵前の嫌気性菌数が減少した。無処理区、空気処理区、オゾン1ppm処理区、オゾン25ppm処理区、オゾン50ppm処理区の嫌気性菌数はそれぞれ、1.8×103/g、6.2×102/g、2.0×102/g、1.0×102/g、7.0×10/gであった。貯蔵20日後ではそれぞれ、1.0×106/g、6.8×105/g、1.5×104/g、2.5×103/g、7.5×102/gとなり、貯蔵70日後ではそれぞれ3.5×106/g、8.5×105/g、7.5×104/g、8.1×103/g、1.0×103/g、貯蔵100日後でそれぞれ4.5×106/g、2.0×106/g、1.0×105/g、9.0×103/g、3.5×103/gとなった9)

生切り餅にオゾン処理することにより貯蔵中の嫌気性菌の増殖が著しく抑制され、またオゾン処理濃度が高いほど抑制効果が高いことを認めた。嫌気性菌のうち、乳酸菌の増殖がオゾンにより顕著に制御された。

3.2 米粒付着菌の除去へのクエン酸の利用

餅の製造において主として問題となる微生物にBacillusがあり、米粒付着菌であるBacillusは強いマグネシウム吸着性を有している。Bacillusを液体培地を用いて振とう培養した後、菌体を回収し、各種界面活性剤で洗浄して溶出成分を検討した結果、マグネシウムが多く検出された10)。その結果、米粒付着菌であるBacillusは強いマグネシウム吸着性を有していることが確認できた。米粒に付着するマグネシウムを除去することはBacillusを除去することなり、有機酸が有効であった。有機酸洗浄によるBacillusの除去効果を検討した11)

米粒の各種有機酸による洗浄効果、有機酸洗米によるBacillusの除去効果、塩化マグネシウムとクエン酸洗米法による菌数の変化を測定した11)

餅の品質に影響のない有機酸について検討してみると以下のものがあげられる。

もち米を洗浄するのに適切な有機酸

 ① クエン酸:0.05~0.5%

 ② フマル酸:0.05~0.5%

 ③ グルコン酸:0.05~0.5%
もち米を十分水洗して、その後クエン酸で洗浄し、最後に水道水で洗浄するシステムが多くとられている。

餅の品質に大きく影響する微生物はもち米の水溶性たんぱく質の量に大きく関係する。水溶性たんぱく質が多いと微生物、特にBacillusが急激に増殖する。洗米の効果に関係する要因には、精白もち米の水分、水温、撹拌の程度、洗米時間がある。水溶性たんぱく質の除去に効果を示すのは水温であり、10~20℃で最も多く除去できる。また洗米時間は5分間前後が最も水溶性たんぱく質の除去効果が大きい。5分以上洗米をしても大きな差異はなく、3分以下では洗浄不足である。また浸漬中にBacillusが増殖するためにクエン酸を用いてpH調整が必要な場合もある。

文献
  • 1)内藤茂三:『再改訂増補食品の変敗微生物』、 幸書房(2018)
  • 2)江川和徳、石井修一、斉藤昭三:米加工食品製造における微生物制御技術に関する研究(第3報)-生切り餅の変質原因菌について、新潟食研報、21,51-59(1986)
  • 3)内藤茂三:包装食品の微生物変敗防止に関する研究(第3報)-包装餅の変敗菌について-、愛知食品工試年報、22,72-85(1981)
  • 4)山口尹道、生島文雄、小松美博、岸本昭:包装餅の変敗菌について、日食工誌、18,26-28(1971)
  • 5)江川和徳:餅、食品変敗防止ハンドブック(食品腐敗変敗防止研究会編 代表内藤茂三)、サイエンスフォーラム(2006)
  • 6)内藤茂三:包装着色生パン粉の酢酸エチル生成菌に関する研究-1-Hansenula属酵母の分離と酢酸エチル生成について、愛知食品工試年報、23,36-45(1982)
  • 7)内藤茂三:包装着色生パン粉の酢酸エチル生成菌に関する研究-2-Hansenula属酵母の分離と酢酸エチル生成に及ぼす資化性炭素源について、愛知食品工試年報、23,46-55(1982)
  • 8)内藤茂三:食品の微生物変敗防止技術と制御⑬、酸性飲料の微生物変敗と制御、防菌防黴、43,325-335(2015)
  • 9)内藤茂三、寺本祐毅、山口直彦:包装生切り餅の貯蔵性に及ぼすオゾン処理の影響、防菌防黴、15,225-231(1987)
  • 10)内藤茂三:『増補食品とオゾンの科学』、建帛社(2018)
  • 11)江川和徳:洗米による精米の除菌効果、HACCP管理による加工米飯の製造システムと品質保証対策、サイエンスフォーラム(1995)
略歴

内藤茂三

食品・微生物研究所所長

米飯行事食研究会代表

地域福祉食文化研究会代表

食品腐敗・変敗防止研究会代表

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