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![]() 卵の栄養機能とアンチエイジング効果
第1回 卵の栄養機能について ![]() 京都女子大学 家政学部 食物栄養学科
教授 八田 一 1.はじめに鶏卵は古くから宗教や文化に関係なく世界中で食品および食品素材として利用されています。人類は数多くの卵料理や卵加工食品を開発し、栄養豊かな食生活に役立ててきました。特に日本人の卵好きと卵料理の多さは世界的にも有名です。各家庭の冷蔵庫には必ずあるように、卵は美味しくて栄養豊富で、家庭料理にかかせない食品です。また、古くからその加熱ゲル化性、起泡性や乳化性が多くの加工食品にも利用されています。 2.卵の食品学的価値鶏の卵は平均一個約65g、掌にのる小さな卵ですが、その食品学的および栄養学的価値はあまりにも大きく計り知れません。食としての歴史は古く、まず鶏の家畜化(養鶏)は今から約9000年前に東南アジアで野生種の赤色野鶏を飼育することから始まりました。家禽化された鶏は約8000年前に中国に入り、大型化されました。そして約5000年前にシルクロードで西アジアに入り、鶏卵の利用は約3500~4000年前に西アジアやインド、中国、エジプト各地で始まったとされています。紀元前27年から約300年間続いた古代ローマ帝国では、食用卵を生産する養鶏業者があらわれ、オムレツなどの卵料理も開発され、その時代のフルコースは卵に始まりリンゴで終わったと伝えられています2)。 3.卵の栄養学的価値卵からヒヨコが生まれます。その中には体の細胞を作る良質なタンパク質や脂質が豊富に含まれています。各種食品タンパク質のアミノ酸組成と栄養価を表1に示します。卵のタンパク質を構成するアミノ酸は、私たちの体に必要な必須アミノ酸を全て満たし、そのアミノ酸スコアは母乳や牛乳と同じく最高点の100です。また、卵タンパク質の栄養価は、ネズミに食べさせてその増体重で評価するタンパク質効率比(体重増加量/摂取タンパク質量)が3.9、生物価((保留窒素量/吸収窒素量)×100)が94、正味タンパク質利用率((保留窒素量/摂取窒素量)×100)が94であります。これらの栄養学的評価値はいずれも牛乳や大豆より高値で、ヒトの母乳に匹敵するため、従来から卵は食品タンパク質の栄養価測定時の標準飼料として用いられています。
次に、卵の栄養素と卵1個から得られる栄養素摂取比率を表2に示します。栄養素は日本食品標準成分表(五訂)から抜粋し、市場に流通する標準的な卵1個の全卵液量を60g(卵黄18g、卵白42g)とした場合の各部分の成分量を計算しました。また、日本人の食事摂取基準(2010年版)から、身体活動レベルが「ふつう」に分類される18-69歳が1日に必要とする推定エネルギー必要量、各種栄養素の推奨量、目安量、および目標量などを男女別に平均化しました。その平均値と卵1個の成分値から、ヒトが1日に必要な各種栄養素量に対し、卵1個から得られる比率(栄養素摂取比率)を計算し、レーダーチャートとしてまとめました(図1)。
4.卵は究極のサプリメント卵に足らない栄養素はビタミンCと食物繊維だけで、私たちは多くの栄養素を、バランス良くしかも濃縮された状態で、卵から得ることができます。平均的な卵のエネルギーは約90kcalで、これは私たちが1日に必要とする推定エネルギー必要量に対して、男性で3.5%、女性で4.5%に相当します。同様な観点から各栄養素の摂取比率を計算した結果、コレステロールの摂取比率が最も高く、男性で34%、女性で42%でありました。その他の栄養素の摂取比率で20%を超えるのは、ビタミンD、B2、B12であります。また、10%を超える栄養素は、タンパク質と脂質、ミネラルではリン、鉄、亜鉛、ビタミンではA、K、葉酸、パントテン酸でありました。 参考文献1) IEC: International Egg Commission, Annual review 2014. 2) 田名部尚子:日本食生活学会誌, 14(2), 84-89(2003). 3) 松下幸子:調理科学,20(4), 319−324(1987). 略歴1979年3月 大阪市立大学 理学部 生物学科 卒業 学位1993年9月 受賞1994年4月 サナテックメールマガジンへのご意見・ご感想を〈e-magazine@mac.or.jp〉までお寄せください。 |
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