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アレルギー物質を含む食品の検査方法について
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微生物検査室

1.はじめに

 検査キットの改良に伴い、平成26年3月26日付け にて、消食表第36号「アレルギー物質を含む食品の検査方法について」が最終改正されています。
今回は、アレルギー物質を含む食品についての表示制度および検査について紹介します。

2.アレルギー物質の検査の経緯

アレルギー物質を含む食品について、特定のアレルギー体質を持つ方の健康危害の発生を防止する観点から、平成13年厚生労働省令第23号によりその表示が義務化されています。
アレルギー物質を含む食品の検査方法は、平成14年11月6日付け 食発第1106001号ではじめて通知され、その後、検査方法の改正が順次行われています。
 平成21年9月4日付け 消食表第3号 にて、食品衛生法の規定に基づく表示に関する業務が消費者庁に移管され、アレルギー物質を含む食品の検査方法については、平成22 年9 月10 日付け 消食表第286 号「アレルギー物質を含む食品の検査方法について」にて通知されています。

3.表示の範囲

アレルギー表示の対象となるのは、容器包装された乳、乳製品、乳等を主要原料とする食品、食品衛生法第19条第1項の規定に基づく表示に関する内閣府令第1条第1項に定める食品等(酒精飲料を除く)です。これに加えて、流通過程のものにも表示が義務付けられています。
 アレルギー表示対象品目は、全27品目です。これらは、症状の重篤度、症例数によって区別され、表示が義務付けられている7品目と表示を推奨している20品目に分けられます。 (表-1参照)

表-1 アレルギー表示対象品目

表示

名称

理由

義務

乳、小麦、卵、そば、落花生、えび、かに
(特定原材料)

特に症状が重篤、または症例数が多いため

推奨
(任意表示)

いくら、キウイフルーツ、くるみ、大豆、バナナ、やまいも、カシューナッツ、もも、ごま、さば、さけ、いか、鶏肉、りんご、まつたけ、あわび、オレンジ、牛肉、ゼラチン、豚肉 (特定原材料に準ずるもの)

症例数が比較的少ない、あるいは重篤な例が少なく、現段階では科学的な知見が必ずしも十分でないため

4.検査の目的

食品への特定原材料の混入は、原料からのキャリーオーバーや製造ラインでのコンタミネーションにより生ずるため、製品はもちろん原材料についても検査の必要性があります。
 また、表示違反については行政指導が実施されますので、定期的に製品の安全と表示の適正化を図るために、検査をおすすめします。

5.検査の流れ

検査は、スクリーニング検査、確認検査の2種類の検査からなっており、はじめにスクリーニング検査を実施します。
 スクリーニング検査は定量検査法であり、一般的に検査特性の異なる2種類の検査を組み合わせELISA法により実施します。1回目の検査を行った結果、定量値が8~12μg/gの範囲に入った場合は、再度同じ調製試料から操作を行い、2回目の検査を行います。1回目と2回目の定量値を平均し、その数値をもって結果判定をします。
 スクリーニング検査では、10μg/g以上となった場合、「陽性」と判断します。
 確認検査は、定性検査法で特に表示義務がある小麦、そば、落花生及び甲殻類(えび、かに)についてはPCR法、卵及び乳についてはウエスタンブロット法(WB法)により実施します。
 検査内容詳細については、アレルギー表示に関する情報(消費者庁)の「アレルギー物質を含む食品の検査方法について」をご参考下さい。

SUNATECで使用している検査キット

特定原材料名

キット名

キットメーカー名

定量範囲

牛乳、小麦、そば、卵、落花生

FASTKITエライザ Ver.Ⅲシリーズ

日本ハム株式会社

1~20 μg/g

モリナガ FASPEK エライザⅡ

株式会社森永生科学研究所

1~20 μg/g

甲殻類 (えび・かに)

FAテスト EIA-甲殻類Ⅱ「ニッスイ」

日水製薬株式会社

1~20 μg/g

甲殻類キットⅡ 「マルハニチロ」

マルハニチロ株式会社

1~20 μg/g

6.まとめ

表示との不一致はいかなる場合でもあってはなりません。
 食物アレルギーは、ごく微量のアレルギー物質でも発症する恐れがありますので、コンタミネーション防止が必要です。
 防止策として、①作業エリアの区分けをする、②器具は専用のものを使用する、③製造ラインの洗浄を行う、④原材料を区別して保管する、などが考えられます。
 表示していない特定原材料の有無の確認や、製品の安全を確保する為には、原材料の切り替え時や最終製品のアレルゲン検査の実施が必要になってきます。

7.参考

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