リステリア属菌について
一般財団法人 食品分析開発センターSUNATEC
微生物検査室 稲垣暢哉 6月になりました。今年も梅雨の時期到来です。食品に携わる方にとっては、カビの発生や細菌による食中毒の対策など頭を悩ませることもあるのではないでしょうか。 リステリア属菌とは?リステリア属菌は、グラム陽性短桿菌、通性嫌気性の細菌です。また、非芽胞形成菌です。芽胞形成とは、2013年8月号にて述べましたが、高温、凍結、乾燥、酸、アルカリ、紫外線、放射線、殺菌剤等のストレスに対して強い抵抗性を持つ胞子(=芽胞)を形成することであり、リステリア属菌はこの芽胞を形成しないということになります。その他にも、耐熱性はそこまで高くなく、70℃数分の加熱で死滅しますが、0℃でも増殖し、酸にも強く、6%の食塩にも耐性を持つ特徴があります。 食品とリステリア属菌リステリア症の発生例は、サルモネラ属菌、黄色ブドウ球菌を原因とするものに比べて少ないです。しかし、死亡率が極めて高いため注意が必要です。リステリア症は、乳製品、食肉製品、サラダなど、加熱しないでそのまま食べる食品や調理済み食品(ready-to-eat食品)で多く発生しています。これは、先に述べたリステリア属菌の特徴によるものと考えられます。 検査目的国内でのリステリア症は、欧米に比べて少ないと言われています。しかし、食品のリステリア属菌による汚染は欧米とほぼ同等であるという報告もあります。つまり、今後国内でも欧米のように食品によるリステリア症が発生する可能性を否定できないことになります。したがって、乳製品、食肉製品、サラダなど、ready-to-eat食品を中心として、リステリア属菌の検査を行うことは、重要であると考えられます。 検査方法今回は、昨年末に施行となった、非加熱食肉製品およびナチュラルチーズ(ソフトおよびセミハード)を対象とした通知である、リステリア・モノサイトゲネスの検査について(平成26年11月28日食安発1128第2号、平成26年12月25日食安発1225第1号)の検査方法の概略を説明します。この検査は、対象となる食品検体1g当たりのリステリア・モノサイトゲネスの生菌数をn=5で定量試験を行い評価する本試験と、検体量25g当たりの定量試験と定性試験を併用することで評価する予備試験とに分けられます。今回は、この中の本試験について説明します。 a = b / A × C × D a:リステリア・モノサイトゲネスの検体 1gあたりの菌数 結果の解釈
昨年末より施行となった通知では、非加熱食肉製品およびナチュラルチーズ(ソフトおよびセミハード)において、成分規格は100cfu/g以下が基準となっています。この他の食品についても、リステリア属菌が低温増殖性をもつ細菌であることから、増殖する可能性がある食品の場合、検出せず、増殖する可能性の低い食品の場合は、100cfu/g以下と設定するとわかりやすいのではないでしょうか。 参考文献食品衛生検査指針 微生物編 2015 (公益社団法人 日本食品衛生協会) サナテックメールマガジンへのご意見・ご感想を〈e-magazine@mac.or.jp〉までお寄せください。 |
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