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![]() アクリルアミドについて
![]() 一般財団法人 食品分析開発センターSUNATEC
第二理化学検査室 食品の加工中や調理中の加熱などにより化学反応が起こり、予期せず化学物質が生成することがある。生成した化学物質がヒトへ悪影響を及ぼす可能性がある場合、食の安全上のリスクとなり、問題となることがある。ここでは、その代表的な例であるアクリルアミドについて紹介する。 アクリルアミドとはアクリルアミドはアクリロイル基(CH2=CH-CO-)とカルバモイル基(-CO-NH2)を有する化学物質であり、アクリル酸アミドと呼ばれることもある。常温では無臭白色の結晶で、水及びアルコール等に可溶である。 ![]() アクリルアミドは主に紙力増強剤、繊維加工、沈殿物凝集剤、土壌改良材、染料及び接着剤など様々な分野で使用されるポリアクリルアミドの原料に使用されている。 食品中のアクリルアミド2002年にスウェーデン政府より、ストックホルム大学と共同で行った研究の結果、炭水化物を多く含むイモ類を高温で焼いたり、揚げたりした加工食品中にアクリルアミドが高濃度に含まれる可能性があることが世界で初めて発表された。その後の各国での研究の結果、アミノ酸の一種であるアスパラギンとブドウ糖や果糖などの還元糖が化学反応してアクリルアミドが生成していると推測されている。現在、この食品中のアクリルアミドのリスク評価が国際的に進められている。 ![]() アクリルアミドの毒性アクリルアミドは毒物及び劇物取締法上の劇物に指定されており、化学物質排出把握管理促進法(PRTR法)では第一種指定化学物質に指定されている。また、国際がん研究機関(IARC:International Agency for Research on Cancer)の発がん性分類において、アクリルアミドは2Aに分類されている(表1)。しかしながら、動物試験ではアクリルアミドの摂取量が多いほど、発がん率が上昇すると報告されているものの、ヒトに対する発がん性については現時点では確認されていない。 ![]() また、直近の2014年10月に食品安全委員会化学物質・汚染物質専門調査会がアクリルアミドについて、遺伝毒性を有する発がん物質であると評価し、話題となっている。 「アクリルアミドの発がん性については、マウスを用いた試験において、ハーダー腺、乳腺、肺、胃等で発がん頻度の有意な増加が見られており、ラットを用いた試験において、乳腺、甲状腺、精巣等で発がん頻度の有意な増加が見られている。これらの結果から、発がん物質であると考えられた」 必要な取り組み日本を含め多くの国では、食品中のアクリルアミドの基準値は設けられていない。これは、アクリルアミドが遺伝毒性を持ち、わずかな量でもヒトヘ悪影響を及ぼす可能性があるため、摂取許容量を定めることができないことによる。しかし、消費者の健康被害を未然に防止するという観点から、何らかの対策が求められる。 1. 食品中のアクリルアミド含有濃度の低減2009年にコーデックス委員会で「食品中のアクリルアミド低減のための実施規範(CAC/RCP 67-2009)」が国際規格として採択されており、参考になると考えられる。食品中のアクリルアミド濃度を減らすために実践すべき方策として「適切な原材料を選択する」、「原材料の配合比率や組成を見直す」、「調理加工条件、特に加熱条件を見直す」などが挙げられている。 2. アクリルアミド含有食品の摂取量の低減上述した通り、アクリルアミドが含まれている食品は数多く存在しており、我々はそれらの食品から多くの必要な栄養を摂取しているため、アクリルアミドを含有する食品の摂取を減らすことは容易ではない。アクリルアミドを含有する食品の摂取量を極端に減らし、栄養バランスが崩れてしまえば元も子もない。揚げ物や脂肪の多い食品の摂取を控え、バランスの良い食生活を心掛けることが非常に重要である。 参考資料
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