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微生物定量法によるビタミン分析
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微生物検査室

1 はじめに

栄養表示基準においてビタミン類の表示値は、ビタミンA,D,Eを除いて表示の-20〜+80%の範囲内であることが必須であり、その分析方法は、微生物の生育度を指標とした微生物定量法とHPLC(高速液体クロマトグラフィー)を用いた理化学定量法(HPLC法)がある。これらの分析方法にはそれぞれ特徴があり、今回は微生物を用いた微生物定量法について詳しく紹介する。

2 微生物定量法とは

ビタミンを必須の栄養素として要求する微生物の栄養要求特性を利用して、試料中のビタミン含量を測定する方法である。

3 微生物定量法の原理

微生物の増殖に必要なすべての栄養素を含む培地から、定量したいビタミンのみを除くと、そのビタミンを合成できない微生物は生育できないが、目的のビタミンが存在すれば微生物は生育できる。微生物の生育量は一定の範囲内であればビタミンの濃度に比例するため、その範囲に合わせて、試料を希釈し培地を添加して培養を行う。

4 微生物定量法の特徴(長所、短所)

長所:@定量下限が低い
     微生物を用いているため、ごく微量でも検出でき感度がよい
例)パントテン酸の場合、微生物定量法の方が100倍程度感度がよい

    Aビタミン活性を有する類縁体をまとめて定量できる
例)ビタミンB6
   ピリドキシン(アルコール型)
   ピリドキサール(アルデヒド型)
   ピリドキサミン(アミン型)

短所:@検査に要する時間が長い
 検査の特性上培養時間が必要なため、結果判明までに時間がかかる
    A機器分析に比べ精度が劣る

5 使用菌株、培養温度及び培養時間

ビタミンの種類によって、使用菌株、培養温度及び培養時間が異なる。
検査項目による使用菌株、培養温度及び培養時間を表1に示す。

検査項目による使用菌株、培養温度及び培養時間

6 検査方法

微生物定量法の一例としてナイアシンの検査フローを図1に示す。

微生物定量法によるナイアシン検査フロー

7 まとめ

微生物定量法によるビタミン分析は、微生物を指標としているため、使用する微生物の活性が試験結果に大きな影響を及ぼす。使用する微生物の活性が良くないと、結果が安定しない。また逆に活性が良すぎる場合も試験結果がばらつく要因のひとつになる。そのため、使用する微生物の活性を、ほぼ一定に保つことがこの検査の鍵となる。

参考文献

四訂 早分かり栄養表示基準 解説とQ&A 荘村明彦 中央法規出版 2011年5月20日
微生物学実験書 第5版 二改俊章ら 廣川書店 平成17年 9月1日

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