一般財団法人 食品分析開発センター SUNATEC
HOME >食品表示法の施行と表示基準の動向について
食品表示法の施行と表示基準の動向について
公立大学法人宮城大学
名誉教授 池戸 重信
(内閣府消費者委員会食品表示部会委員)

1 第3ステージに入った新たな食品表示制度の動向

平成21年9月に消費者庁が設置され、それまで厚生労働省(食品衛生法や健康増進法)、農林水産省(農林物資の規格化及び品質表示の適正化に関する法律(JAS法))等複数の省庁で、個別に所管されていた食品表示に関する法令に基づく表示基準の策定事務を同庁が一元的に所管することとなった。
 これを機会に、食品表示に関する法制度を一元化する環境が整ってきたことから、平成23年9月に食品表示一元化検討会を設置し、翌年8月まで、途中パブリックコメントの収集を含め、前後12回、延べ38時間以上に及ぶ検討がなされ、食品表示制度の一元化のための基本的な方向性等のまとめが示された。
 以上が第1ステージとすれば、この検討結果を踏まえて新たな法律である食品表示法案が策定され、平成25年4月の閣議決定後に国会審議がなされ、同年6月28日に公布されたことが、第2ステージといえる。
 食品表示法の施行は、同法の附則で規定されているように、公布後2年を超えない政令で定める時期、すなわち平成27年の夏から施行されることとなっている。
 したがって、その施行日までには、新たな表示基準を定める必要があり、また事業者への普及や準備等の期間を考慮すれば、施行の半年前、すなわち今年末位までには内容が定まっていることが望ましい。
 そのため、昨年11月に内閣府消費者委員会食品表示部会において、同基準に関する審議が開始された。
 すなわち、現在は、新たな食品表示制度への移行における第3ステージといえる。
 一方、前記の食品表示一元化検討会において、十分検討が出来なかったいくつかの課題がある。インターネット販売食品の表示、外食・中食におけるアレルゲン表示、文字の大きさに関する検討、遺伝子組換え表示、加工食品の原料原産地表示等である。
 これらは、いずれも重要で難しい課題であり、消費者庁は準備が整った段階で検討することとしている。
 すなわち、これらの課題の検討結果を踏まえたルール化が、新たな食品制度の最後のステージといえる。

2 食品表示一元化の必要性

これまでの食品表示は、食品衛生法、JAS法、健康増進法、計量法、景品表示法など複数の法律に基づいている。
 このうち、食品一般を対象として、その内容に関する情報を提供させている法律には、食品衛生法、JAS法及び健康増進法の3法がある。これらの3法は、消費者への情報提供を促すため、表示の基準を定め、食品を供給する事業者に対し、特定の事項の表示を義務付け、あるいは事業者が任意に表示する際に遵守すべきことを定めている。
 これらの3法が消費者に対して提供を促している情報は、各法の目的に応じ、
 ・食品衛生法においては、食品の安全性の確保のために公衆衛生上必要な情報
 ・JAS法においては、消費者の選択に資するための品質に関する情報
 ・健康増進法においては、国民の健康の増進を図るための栄養成分及び熱量に関する情報
 となっている。
 これらの法令により表示が義務付けられる具体的事項を個別にみると、特に食品衛生法とJAS法の間には重複がみられるものがあり、また、用語の使われ方も異なるものがあるなど、現行の食品表示制度は、複雑で分かりにくいものとなっていた。
 たとえば、「名称」、「賞味期限」、「保存方法」、「遺伝子組換え」、「製造者名」などは、食品衛生法とJAS法の両方の法律で表示が義務化され、しかも、法律によって、定義や用語が不統一ということも分かりにくい理由となっていた。
 また、A社が製造した食品をB社がバルクで仕入れで小分け包装した場合、B社は、食品衛生法では「製造者」、JAS法では「加工者」となる。また、天日干し乾燥果実は、食品衛生法では「生鮮食品」、JAS法では「加工食品」など食品衛生法とJAS法で定義が異なるものがあった。
 なお、景品表示法(虚偽、誇大な表示の禁止)、不正競争防止法(商品の品質等の誤認惹起表示の禁止)、計量法(適正な計量の実施を確保)などは、食品に限定せず、広く商品等を規制対象とするものである。また、酒税の保全及び酒類業組合等に関する法律、牛の個体識別のための情報の管理及び伝達に関する特別措置法、米穀等の取引等に係る情報の記録及び産地情報の伝達に関する法律等は、食品一般を対象とするものではなく、特定の食品を対象とするものであり、かつ、当該食品に係る諸制度の一部として表示制度が設けられているものである。
 したがって、今回の一元化は、上記の食品に特化した3法の統合を前提とした制度となっている。

3 食品表示法の制定

新しいこの法律は、特に3つの法律が関係することは述べたが、3法のうち、食品表示に関する規定部分が抜き出されて、新しい食品表示法が出来るというイメージである。
 したがって、3つの各法律は表示の部分が抜かれても存続することはもちろんのこと、特に供給サイドにおける対策(食品衛生法では、安全な食品の製造・提供等、JAS法では、良質な品質の食品の提供等)を重点とした規定が残り、消費段階の対応が記された食品表示法と相まって、健全な食生活の実現に有効に機能する仕組みとなる。
 新たな食品表示法の目的をどのように規定するかは、今後の食品表示制度のあり方を定める観点からきわめて重要となる。
 食品表示一元化検討会においては、このような食品の特性等も踏まえた結果、目的は、食品の安全性確保に係る情報が消費者に確実に提供されることを最優先とし、これと併せて、消費者の商品選択上の判断に影響を及ぼす重要な情報が提供されることと位置付けることが適当との結論に至った。そして、公布された食品表示法の目的も同様の内容の規定 (第1条)がなされた。これは、消費者基本法の基本理念で規定されている消費者の権利も反映したものある。
 一方、新しい食品表示制度は、この消費者基本法の基本理念の実現を図る上で重要な施策であることから、消費者の権利を尊重するとともに、消費者の自立を支援することを基本とすべきことを、別途基本理念(第3条)として規定している。
 また、食品関連事業者に対して、実行可能性のあるものとすることや、小規模の食品関連事業者の事業活動に及ぼす影響及び食品関連事業者間の公正な競争が確保されることに配慮する必要があることについても、併せて同法の基本理念として規定されている。
 新たに制定された法律においては、すでに、JAS法で規定された「申出」や景品表示法等で規定されていた「差止制度請求権」の制度も新たに導入された。
 このうち「申出」(第12条)は、何人も、食品の表示が適正でないため一般消費者の利益が害されていると認めるとき、内閣総理大臣等に申出が可能であり、その申出に対して、内閣総理大臣等が必要な調査を行い、申出の内容が事実であれば、適切な措置を講ずるという制度である。
 また「差止請求権」(第11条)は、著しく事実に相違する表示行為やおそれのある場合に、適格消費者団体が差止請求権を発動できる制度である。
 適格消費者団体とは、一定要件を満たしている消費者団体で、全国で現在11団体が認められている。

4 食品表示基準の審議体制と審議方針

新たな食品表示基準は、内閣府消費者委員会の食品表示部会において、審議することになり、昨年9月に委員16名から成る第三次の食品表示部会が発足した。同委員のうち、6名は継続、10名は新たに任命された委員である。
 同部会に課された審議内容は、①食品表示法に基づく表示基準案の作成に関し、消費者庁から受ける諮問に対する調査審議、②栄養表示義務化の検討に関する調査審議、③その他食品の表示に関する調査審議となっており、審議期間期間は、平成25年11月~平成27年8月、ただし、①については、平成25年6月までとなっていた。
 なお、今回の審議内容は、多岐にわたり、慎重に審議する必要があるため、食品表示部会の下に、「栄養表示に関する調査会」、「生鮮食品・業務用食品の表示に関する調査会」及び「加工食品の表示に関する調査会」の3つの調査会を設置して検討することとなった。
 このうち「栄養表示に関する調査会」では、栄養表示に関する対象成分、対象食品、対象事業者、表示方法等の論点の検討について、「生鮮食品・業務用食品の表示に関する調査会」では、①生鮮食品関係の個別品質表示基準等の整理・統合、現行制度に係る用語の統一、業者間取引における表示方法の整理等、②食品表示基準に関する検討のうち、栄養表示に関する調査会及び加工食品の表示に関する調査会の所掌に属さないもの(添加物のみ販売する場合の表示方法等を含む)についての検討を、そして、「加工食品の表示に関する調査会」では、加工食品関係の個別品質表示、基準等の整理・統合、現行制度に係る用語の統一、アレルギー表示、レイアウト及び文字の大きさ等について検討することとなり、今年の6月までに、各々6回、5回及び8回の開催・検討された結果を、食品表示部会に報告された。この間、食品表示部会においても、中間報告を含め前後4回審議された。
 今回の新基準策定は、具体的には、現行の58本の基準を1本に統合することであるが、その場合、消費者の求める情報提供と事業者の実行可能性とのバランスを図り、双方に分かりやすい表示基準を策定することとなっている。
 そして、次のような方針が示された。

(1)
原則として、表示義務対象範囲(食品、事業者等)については変更しない
・例外として、食品衛生法とJAS法の基準の統合に当たり、加工食品と生鮮食品の区分などを変更

(2)
基準は、食品及び事業者の分類に従って整序し、分かりやすい階層構造とする。
・食品について、「加工食品」、「生鮮食品」、「添加物」に区分
・食品関連事業者等について、「食品関連事業者に係る基準」、「食品関連事業者以外の販売者に
 係る基準」に区分

(3)
(2)の区分ごとに、食品の性質等に照らし、できる限り共通ルールにまとめる。

(4)
現行の栄養表示基準を、実行可能性の観点から義務化にふさわしい内容に見直す。
・対象成分、対象食品、対象事業者等について規定

(5)
安全性に関する事項に係るルールを、より分かりやすいように見直す。
・例えば、アレルギー表示のうち、特定加工食品(※)に係る表示(例えば、原材料として「マヨネーズ」と
 表示した場合に、「卵」を含む旨の表示を省略できるとするもの)の見直し

(※)一般的にアレルゲンを含むことが知られているため、それを表記しなくても、アレルゲンを含むことが
   理解できると考えられてきたもの[例:マヨネーズ(卵)、パン(小麦)]

 一方、食品表示基準の骨格イメージは、食品表示法第4条第1項において、食品表示基準は、「食品及び食品関連事業者等の区分ごとに」定めることが明記されており、で示すように9つのマトリックスごとに決めることになっている。
 そして、上記の審議結果を踏まえて消費者庁が策定した食品表示基準案が、平成26年同年7~8月に示され、パブリックコメントが求められた。この結果、約4,300のコメントが寄せられた。

図.食品表示基準骨格イメージ(案)(PDF:296KB)

5 食品表示基準における主な現行基準との変更内容

パブリックコメント等を踏まえ、食品表示部会において、主な課題に関し今年9月24日、10月3日及び同月15日の3回の審議が行われた(10月31日にも審議予定)。
 以下、上記3回の審議を終えた時点での主な変更予定内容を示す。

1) 加工食品と生鮮食品の区分の統一

JAS法と食品衛生法において異なる食品の区分(たとえば、食肉をカットしただけでパッキングされたものは、JAS法では生鮮食品、食品衛生法では加工食品として表示義務対象)について、JAS法の考え方に基づく区分に統一・整理する。
 JAS法では、「製造」又は「加工」されたものは「加工食品」、「調整」又は「選別」に当たるものは「生鮮食品」となっており、前者には消費期限又は賞味期限(期限表示)、後者には原産地表示の義務が課せられている。
 ただし、生鮮食品、加工食品いずれを問わず、食品の安全性上の観点、すなわち、これまで、主として食品衛生法に基づき基準が適用されてきた観点から必要と判断された場合は、これまで通り安全性に関する項目(保存方法、アレルゲン等)及び今後安全性に関して必要と判断される項目について、義務が課せられることになっている。

2) 製造所固有記号の使用に係るルールの改善

現在、食品事故発生時等に、保健所などが製造場所を確認できるように、製造者の氏名、住所の表示が義務付けられているが、それに代わるものとして消費者庁に届けることを前提として「製造所固有記号」(以下、固有記号という)の表示も認められている。
 この記号表示について、今後は以下のようなルールが示されている。

資材の共通化という事業者のメリットを維持する観点から、原則、2以上の製造所において同一商品を製造・販売する場合のみ、固有記号の利用を認める(これまでは、一つの製造所でも可)。
固有記号を利用する事業者には、消費者からの問合せに応答する義務を課す。
消費者庁に新固有記号データベースを構築し、消費者からの検索が可能となる一般開放及び事業者からの電子申請手続について検討する。

3) アレルギー表示に係るルールの改善

現在、卵、小麦、エビ、カニなどの7つのアレルゲンについては、義務表示となっているが、卵を用いて作るマヨネーズやオムレツ、小麦を用いるうどんなどは、誰もが常識的に卵や小麦が使用されていることが理解されているとの前提のもとに、「特定加工食品」として、例外的に表示の義務が免除されていた。しかし、今回、確実な安全性の担保のために特定加工食品及びその拡大表記(注)を廃止することになった。

(注)
卵を用いて作るマヨネーズやオムレツ、小麦を用いるうどんなどは、誰もが常識的に卵や小麦が使用されていることが理解されているとの前提のもとに、「卵」や「小麦」等のアレルゲン表示を省略できる食品をいう。

また、消費者の商品選択の幅を広げるため、個別表示を原則とし、例外的に一括表示を可能とすることとなった(現行では、どちらの方式でも選択可)。ちなみに、「個別表示」とは、たとえば、ある加工食品で、原材料として「醤油」や「マヨネーズ」が使用されている場合には、原材料表示欄に「醤油(大豆、小麦…)」や「マヨネーズ(卵、…)」のように個別原材料ごとにアレルゲンを表示する方式のことで、「一括表示」とは、原材料名表示欄に「醤油、マヨネーズ…(大豆、小麦、卵…)のように、最後にまとめて表示する方式のことである。ただし、一括表示する場合、一括表示欄を見ることでその食品に含まれる全てのアレルゲンを把握できるよう、一括表示欄に全て表示することになる。

4) 栄養成分表示の義務化

食品関連事業者に対し、原則として、全ての消費者向けの加工食品及び添加物への栄養成分表示の義務付けが課せられる。
 【義務項目】エネルギー、たんぱく質、脂質、炭水化物、ナトリウム(「食塩相当量」で表示)
 【任意(推奨)項目】飽和脂肪酸、食物繊維
 【任意(その他)項目】糖類、糖質、コレステロール、ビタミン・ミネラル類
 義務項目のうち、ナトリウムは「食塩相当量」で表示するが、任意で「食塩相当量」と併せて括弧書きで「(ナトリウム)」の表示も可能となる。また、食塩を用いていない食品で、任意に表示する場合には、「ナトリウム」と括弧書きで「(食塩相当量)」の表示も可能となる。
 一方、当分の間、中小企業基本法(昭和三十八年法律第百五十四号)第二条第五項に規定する小規模企業者(おおむね常時使用する従業員の数が20人(商業又はサービス業に属する事業を主たる事業として営む者については、5人)以下の事業者)についても、栄養成分表示の省略を認める。
 なお、上記の栄養成分表示の義務化は、消費者への普及・啓発や事業者が表示しやすくなるよう日本食品標準成分表データベースの充実作成など、環境整備の状況について見極めることを前提としている。

5) 栄養強調表示に係るルールの改善

現在、栄養成分表示のルールとして、「〇〇ゼロ」「ノン〇〇」「〇〇強化」「低〇〇」「〇〇を含む」等の表示をする場合には、各々その食品の単位重量(容量)当たりの成分含有量の基準に適合していなければならない。
 この場合、基準は絶対値で規定されていた(「100g当たり〇〇mg以上)」など)。
 今後は、相対差の基準も満たさねばならなくなる。具体的には、低減された旨の表示をする場合(熱量、脂質、飽和脂肪酸、コレステロール、糖類及びナトリウム)及び強化された旨の表示をする場合(たんぱく質及び食物繊維)には、絶対差に加え、新たに、原則として25%以上の相対差が必要となる。
 ただし、ナトリウムについては、食品の保存性及び品質を保つ観点から、25%以上その量を低減することが困難な食品については、相対差についての特例を認める。具体的品目としては、味噌や醤油が想定されるが、対象の可否は科学的根拠により判断される。
 一方、強化された旨の表示をする場合(ミネラル類(ナトリウムを除く)、ビタミン類)には、「含む旨」の基準値以上の絶対差に代えて、栄養素等表示基準値の10%以上の絶対差(固体と液体の区別なし)が必要となる。

6) 原材料名表示等に係るルールの変更

現行の表示ルールにおいて、加工食品については、原材料又は添加物を区分し、それぞれに占める重量の割合の多いものから順に表示することになっているが、これまで例外的扱いとなっていたパン類、食用植物油脂などについても、他の加工食品同様の表示となる。

7) 販売の用に供する添加物の表示に係るルールの改善

添加物については、これまでの食品衛生法の義務表示項目に加え、一般消費者向けの添加物には、新たに、「内容量」「表示責任者の氏名又は名称及び住所」が、業務用の添加物には、新たに、「表示責任者の氏名又は名称及び住所」の表示が義務化される。

8) 通知等に規定されている表示ルールのうち、基準に規定するもの

安全性に関する表示ルールをより分わかりやすくする観点から、通知等に規定されているルールを、新たに、食品表示基準に格上げ規定される。具体的には、フグ食中毒対策の表示及びボツリヌス食中毒対策の表示等である。

9) 表示レイアウトの改善

表示可能面積がおおむね30cm2以下の場合は、安全性に関する表示事項(「名称」、「保存方法」、「消費期限又は賞味期限」、「表示責任者」、「アレルゲン」及び「L-フェニルアラニン化合物を含む旨」)については、省略不可となる。
 加えて、表示責任者を表示しなくてもよい場合(食品を製造し、若しくは加工した場所で販売する場合、不特定若しくは多数の者に対して譲渡(販売を除く)する場合又は食品関連事業者以外の販売者が容器包装入りの加工食品を販売する場合)には、製造所又は加工所の所在地(輸入品にあっては、輸入業者の営業所所在地)及び製造者又は加工者の氏名又は名称(輸入者にあっては、輸入業者の氏名又は名称)も省略不可とする。

6 今後のスケジュール

食品表示法の施行は、来年の夏からになるが、以上のようにいくつかの新たな表示ルールの改正を伴うことから、特に印刷内容の変更や在庫の処理等の実態を踏まえて、経過措置期間(食品表示基準の施行後、新ルールに基づく表示への移行の猶予期間)を設けることとなる。すなわち、加工食品及び添加物は5年という方針が示されている。
 さらに、今後の課題で残されている外食・中食におけるアレルギー表示、インターネット販売の食品表示、加工食品の原料原産地表示などについても、準備が整い次第検討されることになっている。

7 機能性表示景品表示法の改正

前記の食品表示法関連の流れとは別に、昨年6月に閣議決定された「日本再興戦略」を受けて、食品の機能性表示のルール化に関して、これまで消費者庁の検討会において検討され、この夏にパブリックコメントが求められた。この関係のルールが決まると、前記の新たな食品表示基準が規定される内閣府令に追加されることになる。
 一方、昨年の末に発生したレストラン等における原材料の不適正表示は、景品表示法に関連する課題として位置づけられ、先般の国会において監視の強化等の改正がなされたところである。

8 新食品表示制度への移行に向けた食産業の対応策

新たな食品表示基準の概要は上記の通りであるが、今回の新基準が規定されている内閣府令は、これまでのJAS法に基づく品質管理基準のような品目別ではなく、項目ごとになっていることから、個別品目を扱っている企業・業界としては、品目別に基準の整理をし、当該品目について、どのような基準が課せられているかの確認が必要となる。
 しかし、上記の変更点を除き、実質的にはこれまでの基準を踏襲していると判断してよい。
 ただし、個別の詳細なルールについては、これまでと同様Q&Aで解説することになっており、消費者庁からも示されることとなっていることから、これらの確認も必要となる。
 いずれにしても、適正な表示をするためには、日常的に的確な情報管理が求められる。すなわち、特に原料の原産地やアレルゲンの有無などの観点から、フードチェーンにおける適正なトレーサビリティの適用が重要視されることから、その前提としての企業内での効果的・効率的なトレーサビリティシステムの導入及びこれらの信頼性の確保のための第3者認証が、ますます必要となってくると判断される。

プロフィール

池戸 重信(いけど しげのぶ)
公立大学法人宮城大学名誉教授

略歴
1972年(昭和47年)東北大学農学部農芸化学科卒業(東京都立大学経済学部中退)、同年農林省入省
以後同省農林水産技術会議事務局連絡調整課公害対策技術係長
環境庁水質保全局水質規制課課長補佐
農林水産省農蚕園芸局肥料機械課課長補佐(バイオテクノロジー室併任)
同省構造改善局資源課(農村環境保全室)課長補佐
食品流通局外食産業室課長補佐
東京農林水産消費技術センター技術指導部長
食品流通局技術室長
東京農林水産消費技術センター所長
食品流通局消費生活課長
独立行政法人農林水産消費技術センター理事長を経て
2005年(平成17年)4月から宮城大学食産業学部フードビジネス学科教授
2007年(平成19年)4月~2009年(平成21年)3月同大学学長補佐
2009年(平成21年)4月から同大学副学長(2011年3月まで)・食産業学部長、7月から特命担当理事(2011年3月まで)
2012年(平成24年)4月~2014年(平成26年)3月宮城県産業技術総合センター副所長兼食品バイオ技術部長及び宮城大学特任教授
現在、宮城大学非常勤講師、香川大学農学部非常勤講師、実践女子大学非常勤講師、日本農業経営大学校非常勤講師
今年度の主な委員等
◎内閣府消費者委員会食品表示部会委員(生鮮食品調査会座長)
◎厚生労働省「食品製造業におけるHACCPによる工程管理の普及のための検討会」委員
◎農林水産省委託事業 (財)食品産業センター「品質管理体制強化対策検討委員会」委員長
◎同「情報共有・事業連携専門部会」座長
◎「ISO/TC34/SC17(食品安全関係ISOの国際委員会)日本国内運営委員会(日本代表組織)」委員長
◎(一社)日本惣菜協会「惣菜管理士試験審査委員会」委員長
◎同協会「店頭表示推進委員会」委員長
◎食品表示検定協会代表
◎(一社)日本トレーサビリティ協会理事
◎(一社)日本農林規格協会理事
◎日本GAP協会技術委員会顧問
◎(財)日本冷凍食品検査協会評議員
◎みやぎ生協食のみやぎ復興ネットワークアドバイザー
◎未来の健康と医・食を考える会世話人
◎農林水産省食農連携コーディネーター
◎宮城県みやぎ食育アドバイザー
◎みちのく6次産業プラットフォーム顧問
◎日本食育学会評議員・編集委員
◎日本食品保蔵科学会理事・評議員
◎NPO法人21世紀の食と健康文化会議理事
◎(一社)東京顕微鏡院技術顧問
◎グリーンプロダクツ研究会会長
◎医療法人仙台今村クリニック理事
著書
・日本規格協会「総量規制の話」
・恒星社厚生閣「食品工業技術概説」、「食品加工技術概論」
・日本食品出版「トレーサビリティって何?」
・サイエンスフォーラム「安心を届ける食品のトレーサビリティ」、「低温流通管理の鉄則」
・PHP研究所「よくわかるISO22000入門コース」
・農文協「食品の安全と品質確保」
・日刊工業新聞社「よくわかるISO22000の取り方・活かし方」
・新日本法規出版「食品安全管理のチェックポイント」、「食品業関係モデル文例・書式集」、「食品表示Q&A」
・ぎょうせい「ISO 22000 実践ガイド」、「ISO食品安全関連法の解説」
・日本食糧新聞社「現場で役立つ食品工場ハンドブックキーワード365」
・幸書房「明日を目指す日本農業」
・ダイヤモンド社「食品表示検定認定テキスト・中級」、「食品表示法逐条解説」
・農業技術通信社「「農場管理を見える化し食の安全を確保するJGAP」 等
昨年度までの主な委員等
・農林水産省「高度化基盤整備に関する検討委員会」(HACCP支援法基本指針検討委員会)座長
・農林水産省補助事業外食・中食産業等食品表示適正化推進協議会
 「加工食品製造・流通表示指針検討会」委員長
・農林水産省東北農政局
 「食料・農業分野における震災復興のための東北農政局・大学・専門家会議」委員
・農林水産省補助事業(株)FMS綜合研究所「食文化・創造事業企画委員会」委員長
・宮城県「売れる商品づくり支援事業計画審査会」委員
・塩竈市「水産業共同利用施設復興整備事業審査会」委員
・消費者庁「食品表示法一元化検討委員会」座長
・農林水産省東北農政局「東北ブロック6次産業化推進行動会議人材育成部会」座長
・日本安全学教育研究会会長
・(社)日本惣菜協会「惣菜表示ガイドライン検討委員会」委員長
・厚生労働省補助事業(社)日本外食品卸協会「受発注等効率化調査検討委員会」委員長
・経済産業省補助事業(株)プロジェクト地域活性「地域新事業移転促進事業運営委員会」委員
・(財)日本適合性認定協会(JAB)「ISOマネージメントシステム認定委員会」委員
・同「ISO食品安全マネジメントシステム認定分科会」委員長
・(株)仙台放送「サンプルスクエアダイレクトショッピング商品選定委員会」委員長
・全国中小企業団体中央会委託事業(株)仙台ソフトウェアセンター
 「ICT利活用型農業MOT人材育成・企画運営委員会」委員長
・同研修会講師・食品トレーサビリティ政策研究会委員
・(株)日本環境認証機構(JACO)「食品安全マネジメント研究会」メンバー
・宮城県GAP推進会議委員
・厚生省「21世紀の国民栄養調査のあり方検討会」委員
・環境庁・厚生省「ダイオキシン類総合調査委員会」委員
・農林水産省東北農政局「東北地域食・農マッチング検討委員会」座長
・総務省補助事業「ユビキタス特区開発・実証企画運営委員会」座長
・農林水産省委託事業 (株)三菱総合研究所「特定JAS規格検討・普及推進委員会」委員長
・農林水産省委託事業(社)食品需給研究センター「食品産業クラスター促進技術対策検討委員会」委員
・農林水産省委託事業(社)日本食品衛生協会「HACCP研修委員会」委員
・農林水産省委託事業(社)日本フードサービス協会
 「外食産業トレーサビリティシステム開発事業検討委員会」委員長
・農林水産省委託事業食品関連産業国際標準システム・食品トレーサビリティ協議会「総合委員会」委員
・農林水産省委託事業(社)農協流通研究所「ユビキタスシステム普及啓発検討委員会」委員長
・農林水産省委託事業(社)食品需給研究センター「ユビキタスシステム開発検討委員会」委員
・農林水産省委託事業(社)農協流通研究所「トレーサビリティ・システム普及啓発作業部会」座長
・農林水産省委託事業(社)食品需給研究センター
 「食品トレーサビリティシステム第三者認証検討委員会」委員
・農林水産省補助事業(財)畜産環境整備機構
 「家畜排せつ物利活用方策評価検討システム構築事業効果評価検討委員会」座長
・農林水産省委託事業(社)外食産業総合調査研究センター
 「外食産業原産地等表示対策事業検討委員会」座長
・農林水産省委託事業(財)食品産業センター「HACCP等普及促進委員会」座長
・農林水産省委託事業(財)食品産業センター
 「品質管理向上推進委員会」委員長
・農林水産省補助事業(社)日本食鳥協会「国産鶏肉適正表示検討会」座長
・農林水産省補助事業(財)食の安全安心財団「食品産業表示推進支援事業検討委員会」委員長
・厚生労働省委託事業みずほ総合研究所(株)
 「中小企業における最低賃金引上げ円滑な実施のための調査等事業食料品製造業業種調査委員会」
 委員
・総務省「「安心・安全な社会の実現に向けた情報通信技術の在り方」に関する調査研究会」委員
・農林水産省委託事業 ㈱流通システム研究センター「流通JAS規格検討・普及啓発検討委員会」委員長
・食品安全委員会委託事業(株)三菱総合研究所「リスクコミュニケーション評価手法検討会」委員長
・経済産業省補助事業(株)プロジェクト地域活性「農商工連携プロデューサー育成事業運営委員会」委員
・(社)日本工業技術振興会「食品流通におけるHACCP導入協議会」学術委員・
 地域連携バイオマス連絡会顧問
・(財)日本適合性認定協会(JAB)「食品安全マネージメントシステム(ISO22000)認定委員会」委員長
・(財)食品流通構造改善促進機構評議員
・(社)日本パン技術研究所「研究調査部諮問委員会」諮問委員 ・仙台白百合女子大学非常勤講師
・敦賀短期大学非常勤講師
・(独)農業・食品産業技術総合研究機構農業者大学校講師、宮城県農業大学校非常勤講師

他の記事を見る
ホームページを見る

サナテックメールマガジンへのご意見・ご感想を〈e-magazine@mac.or.jp〉までお寄せください。

Copyright (C) Food Analysis Technology Center SUNATEC. All Rights Reserved.