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![]() 食品表示法の施行と表示基準の動向について
![]() 公立大学法人宮城大学
名誉教授 池戸 重信 (内閣府消費者委員会食品表示部会委員) 1 第3ステージに入った新たな食品表示制度の動向平成21年9月に消費者庁が設置され、それまで厚生労働省(食品衛生法や健康増進法)、農林水産省(農林物資の規格化及び品質表示の適正化に関する法律(JAS法))等複数の省庁で、個別に所管されていた食品表示に関する法令に基づく表示基準の策定事務を同庁が一元的に所管することとなった。 2 食品表示一元化の必要性これまでの食品表示は、食品衛生法、JAS法、健康増進法、計量法、景品表示法など複数の法律に基づいている。 3 食品表示法の制定新しいこの法律は、特に3つの法律が関係することは述べたが、3法のうち、食品表示に関する規定部分が抜き出されて、新しい食品表示法が出来るというイメージである。 4 食品表示基準の審議体制と審議方針新たな食品表示基準は、内閣府消費者委員会の食品表示部会において、審議することになり、昨年9月に委員16名から成る第三次の食品表示部会が発足した。同委員のうち、6名は継続、10名は新たに任命された委員である。
そして、上記の審議結果を踏まえて消費者庁が策定した食品表示基準案が、平成26年同年7~8月に示され、パブリックコメントが求められた。この結果、約4,300のコメントが寄せられた。
5 食品表示基準における主な現行基準との変更内容パブリックコメント等を踏まえ、食品表示部会において、主な課題に関し今年9月24日、10月3日及び同月15日の3回の審議が行われた(10月31日にも審議予定)。 1) 加工食品と生鮮食品の区分の統一JAS法と食品衛生法において異なる食品の区分(たとえば、食肉をカットしただけでパッキングされたものは、JAS法では生鮮食品、食品衛生法では加工食品として表示義務対象)について、JAS法の考え方に基づく区分に統一・整理する。 2) 製造所固有記号の使用に係るルールの改善現在、食品事故発生時等に、保健所などが製造場所を確認できるように、製造者の氏名、住所の表示が義務付けられているが、それに代わるものとして消費者庁に届けることを前提として「製造所固有記号」(以下、固有記号という)の表示も認められている。
3) アレルギー表示に係るルールの改善現在、卵、小麦、エビ、カニなどの7つのアレルゲンについては、義務表示となっているが、卵を用いて作るマヨネーズやオムレツ、小麦を用いるうどんなどは、誰もが常識的に卵や小麦が使用されていることが理解されているとの前提のもとに、「特定加工食品」として、例外的に表示の義務が免除されていた。しかし、今回、確実な安全性の担保のために特定加工食品及びその拡大表記(注)を廃止することになった。
また、消費者の商品選択の幅を広げるため、個別表示を原則とし、例外的に一括表示を可能とすることとなった(現行では、どちらの方式でも選択可)。ちなみに、「個別表示」とは、たとえば、ある加工食品で、原材料として「醤油」や「マヨネーズ」が使用されている場合には、原材料表示欄に「醤油(大豆、小麦…)」や「マヨネーズ(卵、…)」のように個別原材料ごとにアレルゲンを表示する方式のことで、「一括表示」とは、原材料名表示欄に「醤油、マヨネーズ…(大豆、小麦、卵…)のように、最後にまとめて表示する方式のことである。ただし、一括表示する場合、一括表示欄を見ることでその食品に含まれる全てのアレルゲンを把握できるよう、一括表示欄に全て表示することになる。 4) 栄養成分表示の義務化食品関連事業者に対し、原則として、全ての消費者向けの加工食品及び添加物への栄養成分表示の義務付けが課せられる。 5) 栄養強調表示に係るルールの改善現在、栄養成分表示のルールとして、「〇〇ゼロ」「ノン〇〇」「〇〇強化」「低〇〇」「〇〇を含む」等の表示をする場合には、各々その食品の単位重量(容量)当たりの成分含有量の基準に適合していなければならない。 6) 原材料名表示等に係るルールの変更現行の表示ルールにおいて、加工食品については、原材料又は添加物を区分し、それぞれに占める重量の割合の多いものから順に表示することになっているが、これまで例外的扱いとなっていたパン類、食用植物油脂などについても、他の加工食品同様の表示となる。 7) 販売の用に供する添加物の表示に係るルールの改善添加物については、これまでの食品衛生法の義務表示項目に加え、一般消費者向けの添加物には、新たに、「内容量」「表示責任者の氏名又は名称及び住所」が、業務用の添加物には、新たに、「表示責任者の氏名又は名称及び住所」の表示が義務化される。 8) 通知等に規定されている表示ルールのうち、基準に規定するもの安全性に関する表示ルールをより分わかりやすくする観点から、通知等に規定されているルールを、新たに、食品表示基準に格上げ規定される。具体的には、フグ食中毒対策の表示及びボツリヌス食中毒対策の表示等である。 9) 表示レイアウトの改善表示可能面積がおおむね30cm2以下の場合は、安全性に関する表示事項(「名称」、「保存方法」、「消費期限又は賞味期限」、「表示責任者」、「アレルゲン」及び「L-フェニルアラニン化合物を含む旨」)については、省略不可となる。 6 今後のスケジュール食品表示法の施行は、来年の夏からになるが、以上のようにいくつかの新たな表示ルールの改正を伴うことから、特に印刷内容の変更や在庫の処理等の実態を踏まえて、経過措置期間(食品表示基準の施行後、新ルールに基づく表示への移行の猶予期間)を設けることとなる。すなわち、加工食品及び添加物は5年という方針が示されている。 7 機能性表示景品表示法の改正前記の食品表示法関連の流れとは別に、昨年6月に閣議決定された「日本再興戦略」を受けて、食品の機能性表示のルール化に関して、これまで消費者庁の検討会において検討され、この夏にパブリックコメントが求められた。この関係のルールが決まると、前記の新たな食品表示基準が規定される内閣府令に追加されることになる。 8 新食品表示制度への移行に向けた食産業の対応策新たな食品表示基準の概要は上記の通りであるが、今回の新基準が規定されている内閣府令は、これまでのJAS法に基づく品質管理基準のような品目別ではなく、項目ごとになっていることから、個別品目を扱っている企業・業界としては、品目別に基準の整理をし、当該品目について、どのような基準が課せられているかの確認が必要となる。 プロフィール池戸 重信(いけど しげのぶ) 略歴1972年(昭和47年)東北大学農学部農芸化学科卒業(東京都立大学経済学部中退)、同年農林省入省以後同省農林水産技術会議事務局連絡調整課公害対策技術係長 環境庁水質保全局水質規制課課長補佐 農林水産省農蚕園芸局肥料機械課課長補佐(バイオテクノロジー室併任) 同省構造改善局資源課(農村環境保全室)課長補佐 食品流通局外食産業室課長補佐 東京農林水産消費技術センター技術指導部長 食品流通局技術室長 東京農林水産消費技術センター所長 食品流通局消費生活課長 独立行政法人農林水産消費技術センター理事長を経て 2005年(平成17年)4月から宮城大学食産業学部フードビジネス学科教授 2007年(平成19年)4月~2009年(平成21年)3月同大学学長補佐 2009年(平成21年)4月から同大学副学長(2011年3月まで)・食産業学部長、7月から特命担当理事(2011年3月まで) 2012年(平成24年)4月~2014年(平成26年)3月宮城県産業技術総合センター副所長兼食品バイオ技術部長及び宮城大学特任教授 現在、宮城大学非常勤講師、香川大学農学部非常勤講師、実践女子大学非常勤講師、日本農業経営大学校非常勤講師 今年度の主な委員等◎内閣府消費者委員会食品表示部会委員(生鮮食品調査会座長)◎厚生労働省「食品製造業におけるHACCPによる工程管理の普及のための検討会」委員 ◎農林水産省委託事業 (財)食品産業センター「品質管理体制強化対策検討委員会」委員長 ◎同「情報共有・事業連携専門部会」座長 ◎「ISO/TC34/SC17(食品安全関係ISOの国際委員会)日本国内運営委員会(日本代表組織)」委員長 ◎(一社)日本惣菜協会「惣菜管理士試験審査委員会」委員長 ◎同協会「店頭表示推進委員会」委員長 ◎食品表示検定協会代表 ◎(一社)日本トレーサビリティ協会理事 ◎(一社)日本農林規格協会理事 ◎日本GAP協会技術委員会顧問 ◎(財)日本冷凍食品検査協会評議員 ◎みやぎ生協食のみやぎ復興ネットワークアドバイザー ◎未来の健康と医・食を考える会世話人 ◎農林水産省食農連携コーディネーター ◎宮城県みやぎ食育アドバイザー ◎みちのく6次産業プラットフォーム顧問 ◎日本食育学会評議員・編集委員 ◎日本食品保蔵科学会理事・評議員 ◎NPO法人21世紀の食と健康文化会議理事 ◎(一社)東京顕微鏡院技術顧問 ◎グリーンプロダクツ研究会会長 ◎医療法人仙台今村クリニック理事 著書・日本規格協会「総量規制の話」・恒星社厚生閣「食品工業技術概説」、「食品加工技術概論」 ・日本食品出版「トレーサビリティって何?」 ・サイエンスフォーラム「安心を届ける食品のトレーサビリティ」、「低温流通管理の鉄則」 ・PHP研究所「よくわかるISO22000入門コース」 ・農文協「食品の安全と品質確保」 ・日刊工業新聞社「よくわかるISO22000の取り方・活かし方」 ・新日本法規出版「食品安全管理のチェックポイント」、「食品業関係モデル文例・書式集」、「食品表示Q&A」 ・ぎょうせい「ISO 22000 実践ガイド」、「ISO食品安全関連法の解説」 ・日本食糧新聞社「現場で役立つ食品工場ハンドブックキーワード365」 ・幸書房「明日を目指す日本農業」 ・ダイヤモンド社「食品表示検定認定テキスト・中級」、「食品表示法逐条解説」 ・農業技術通信社「「農場管理を見える化し食の安全を確保するJGAP」 等 昨年度までの主な委員等・農林水産省「高度化基盤整備に関する検討委員会」(HACCP支援法基本指針検討委員会)座長・農林水産省補助事業外食・中食産業等食品表示適正化推進協議会 「加工食品製造・流通表示指針検討会」委員長 ・農林水産省東北農政局 「食料・農業分野における震災復興のための東北農政局・大学・専門家会議」委員 ・農林水産省補助事業(株)FMS綜合研究所「食文化・創造事業企画委員会」委員長 ・宮城県「売れる商品づくり支援事業計画審査会」委員 ・塩竈市「水産業共同利用施設復興整備事業審査会」委員 ・消費者庁「食品表示法一元化検討委員会」座長 ・農林水産省東北農政局「東北ブロック6次産業化推進行動会議人材育成部会」座長 ・日本安全学教育研究会会長 ・(社)日本惣菜協会「惣菜表示ガイドライン検討委員会」委員長 ・厚生労働省補助事業(社)日本外食品卸協会「受発注等効率化調査検討委員会」委員長 ・経済産業省補助事業(株)プロジェクト地域活性「地域新事業移転促進事業運営委員会」委員 ・(財)日本適合性認定協会(JAB)「ISOマネージメントシステム認定委員会」委員 ・同「ISO食品安全マネジメントシステム認定分科会」委員長 ・(株)仙台放送「サンプルスクエアダイレクトショッピング商品選定委員会」委員長 ・全国中小企業団体中央会委託事業(株)仙台ソフトウェアセンター 「ICT利活用型農業MOT人材育成・企画運営委員会」委員長 ・同研修会講師・食品トレーサビリティ政策研究会委員 ・(株)日本環境認証機構(JACO)「食品安全マネジメント研究会」メンバー ・宮城県GAP推進会議委員 ・厚生省「21世紀の国民栄養調査のあり方検討会」委員 ・環境庁・厚生省「ダイオキシン類総合調査委員会」委員 ・農林水産省東北農政局「東北地域食・農マッチング検討委員会」座長 ・総務省補助事業「ユビキタス特区開発・実証企画運営委員会」座長 ・農林水産省委託事業 (株)三菱総合研究所「特定JAS規格検討・普及推進委員会」委員長 ・農林水産省委託事業(社)食品需給研究センター「食品産業クラスター促進技術対策検討委員会」委員 ・農林水産省委託事業(社)日本食品衛生協会「HACCP研修委員会」委員 ・農林水産省委託事業(社)日本フードサービス協会 「外食産業トレーサビリティシステム開発事業検討委員会」委員長 ・農林水産省委託事業食品関連産業国際標準システム・食品トレーサビリティ協議会「総合委員会」委員 ・農林水産省委託事業(社)農協流通研究所「ユビキタスシステム普及啓発検討委員会」委員長 ・農林水産省委託事業(社)食品需給研究センター「ユビキタスシステム開発検討委員会」委員 ・農林水産省委託事業(社)農協流通研究所「トレーサビリティ・システム普及啓発作業部会」座長 ・農林水産省委託事業(社)食品需給研究センター 「食品トレーサビリティシステム第三者認証検討委員会」委員 ・農林水産省補助事業(財)畜産環境整備機構 「家畜排せつ物利活用方策評価検討システム構築事業効果評価検討委員会」座長 ・農林水産省委託事業(社)外食産業総合調査研究センター 「外食産業原産地等表示対策事業検討委員会」座長 ・農林水産省委託事業(財)食品産業センター「HACCP等普及促進委員会」座長 ・農林水産省委託事業(財)食品産業センター 「品質管理向上推進委員会」委員長 ・農林水産省補助事業(社)日本食鳥協会「国産鶏肉適正表示検討会」座長 ・農林水産省補助事業(財)食の安全安心財団「食品産業表示推進支援事業検討委員会」委員長 ・厚生労働省委託事業みずほ総合研究所(株) 「中小企業における最低賃金引上げ円滑な実施のための調査等事業食料品製造業業種調査委員会」 委員 ・総務省「「安心・安全な社会の実現に向けた情報通信技術の在り方」に関する調査研究会」委員 ・農林水産省委託事業 ㈱流通システム研究センター「流通JAS規格検討・普及啓発検討委員会」委員長 ・食品安全委員会委託事業(株)三菱総合研究所「リスクコミュニケーション評価手法検討会」委員長 ・経済産業省補助事業(株)プロジェクト地域活性「農商工連携プロデューサー育成事業運営委員会」委員 ・(社)日本工業技術振興会「食品流通におけるHACCP導入協議会」学術委員・ 地域連携バイオマス連絡会顧問 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