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![]() 耐熱性好酸性菌について
![]() 一般財団法人 食品分析開発センター SUNATEC
微生物検査室 稲垣暢哉 今月号は、先月号までとは視点を変え、衛生指標菌に含まれていませんが、主に飲料や果汁を含む食品などで品質に影響を及ぼす重要な菌である耐熱性好酸性菌について説明します。 耐熱性好酸性菌とは?耐熱性好酸性菌とは、その名の通り耐熱性があり酸性下の環境を好んで発育する菌の総称のことです。この菌は、1980年代に海外市場で、リンゴジュースの変敗事故の原因となったことでも有名です。この時の原因菌がAlicyclobacillus acidoterrestris (アリサイクロバチルス アシドテレストリス)略してAATであり、この菌は酸性を好む高温性菌であるためThermo-Acidophilic Bacilli(耐熱性好酸性菌)に分類され、略してTABとも呼ばれています。 耐熱性好酸性菌の特徴は、以下の通りです。 耐熱性好酸性菌と食品耐熱性好酸性菌は、主に土壌や果実から分離されます。食品の中でも飲料と特に関わりがあり、耐熱性好酸性菌が増殖することで異臭という品質劣化を引き起こします。その一例としてA. acidoterrestris が挙げられます。この菌は、耐熱性好酸性菌の中では比較的低温域でも増殖する菌でグアイアコール及び2,6-ジブロモフェノールといった、臭気成分を産生し、飲料の変敗要因となる菌です。耐熱性好酸性菌の中でも、品質への影響が高い菌種です。 検査目的耐熱性好酸性菌の検査を行うことで、飲料を中心に品質への影響を予防することができます。本シリーズ7月号でも述べましたが、生菌数は中温性好気性菌の中性域で発育する菌を調べる検査です。耐熱性好酸性菌は酸性下でのみ増殖する菌であるため、通常、微生物検査で行われる生菌数検査では測定することが出来ません。 検査方法一般社団法人日本果汁協会による耐熱性好酸性菌統一検査法について説明します。検査方法は複数ありますので、各検査の特徴を理解し最適な方法を選択することが重要です。耐熱性好酸性菌の検査は、定量検査と陽性・陰性判定検査の2種類があります。定量検査には混釈法、塗抹法、MF(メンブレンフィルター)法の3種類があります。定性検査であれば、混釈法、塗抹法の2種類があります。耐熱性好酸性菌検査の結果、菌の発育が確認された場合、その菌がA. acidoterrestris であるか否かを確認する方法として、ペルオキシダーゼ法又は温度差法があります。今回は、定量検査の中で最も検査に供する量が多く、また、依頼実績も多いMF法について説明します。 結果の解釈現在、日本国内では耐熱性好酸性菌による規制はありません。飲料での微生物による規格は、食品衛生法の清涼飲料水の規格試験で定められています。
参考文献耐熱性好酸性菌統一検査法 ハンドブック (一般社団法人 日本果汁協会) サナテックメールマガジンへのご意見・ご感想を〈e-magazine@mac.or.jp〉までお寄せください。 |
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