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東日本大震災からの農水産業復興を支援する食品加工技術(続編)
国立大学法人岩手大学
農学部 応用生物化学課程
三浦 靖

1.乾燥

1−1.食品加工における乾燥
 乾燥とは,溶媒を含有する固体や半固体,液体から溶媒を蒸発させる操作です。食品加工における乾燥の目的は,食品から水を蒸発させて成分の化学的変化や物理的変化を抑制するという保蔵性,生の素材とは異なる風味や食品テクスチャーを付与するという調理・加工,減量・減容による輸送性などです。食品の乾燥においては,乾燥機構のみならず,乾燥工程での食品の物理的変化や化学的変化,さらに乾燥品の品質と保存安定性を理解する必要があります。

1−2.原理と理論
 乾燥は,熱的・拡散的な固液分離操作です。食品の水分含有量を表すのに,普通は湿量基準含水率[kg-水/kg-湿り材料]が用いられます。これは乾燥の進行と共に全質量も減少して計算上不便なので,乾燥が進行しても変化しない絶乾燥固体の質量を基準にし,水分の割合を示したものが乾量基準含水率[kg-水/kg-無水材料]です。固体食品を空気中に放置するとやがて平衡状態に達し,このときの含水率を平衡含水率といいます。平衡含水率は空気の温度・湿度によって異なり,温度が高く,また湿度が低いほど小さく,湿度の影響が大きいです。普通の乾燥装置では平衡含水率以下に含水率を低下させることはできません。固体の含水率からその時の平衡含水率を差し引いた分が,乾燥によって除くことができる水分であり,自由含水率と呼ばれます。
 水分活性とは,一定温度条件下での純水の示す平衡水蒸気圧に対する同条件下における被検物の平衡水蒸気圧との比です。この値は,水が純水と比較してどの程度束縛されているかを示す指標であり,水の関与する化学反応,酵素反応,微生物の生育に強く影響するため,食品の保蔵において重要な意味を持ちます(1)。
 固体食品の乾燥速度は,単位時間に蒸発する水分量[kg・m-2・h-1]または単位時間に減少する含水率[kg・kg-1・h-1]で表わします。乾燥速度は,加熱の方法,空気の温度・湿度・流速,食品の性質と形状や位置により異なります。2(A)は,湿潤試料を温度,湿度,風速などの乾燥条件を一定にして乾燥させた場合の含水率と温度の変化を時間に対して描いた曲線です。また,乾燥速度を含水率に対して描いた図が乾燥特性曲線です(2(B))。固体食品が空気から伝熱を受けて水分を蒸発しながら昇温して空気の湿球温度に達するまでは予熱期間と呼ばれます。乾燥初期において,固体食品の表面は内部からの水の拡散が十分なために常時湿潤であり,蒸発は表面で起こり乾燥速度は一定です(恒率乾燥期間)。含水率が減少して限界含水率wに達すると,水の拡散が蒸発速度に追いつかなくなり,表面が部分的に乾いて乾燥速度が減少します(減率乾燥第1段)。さらに乾燥が進むと,もはや表面への水の拡散がなくなり,蒸発が固体内部で起こるようになり,乾燥速度が急激に減少し,無限時間後には平衡含水率wに達して乾燥速度はゼロになります(減率乾燥第2段)。
 恒率乾燥期間においては,固体の表面温度は空気の湿球温度tw[K]とほぼ等しくなります。乾き固体の単位質量当たりの固体表面積A [m2・kg-1-dry solid],空気の温度t[K],湿度H[kg -vapor・kg-1-dry air],固体の表面温度twにおける飽和湿度Hs[kg -vapor・kg-1-dry air]の場合の恒率乾燥速度Rc[kg-water・kg-1-dry solid・h-1]は次式で表されます。
 Rck'GA(HsH )=hGλw(ttw)
 ここで,k'Gは湿度差ΔHを推進力とする水蒸気の物質移動係数[kg・m-2・h-1・ΔH-1],hGは空気側の境膜伝熱係数[W・m-2・K-1],λwtwにおける水の蒸発潜熱[kJ・kg-1]です。上式は乾燥速度を大きくするためには,固体表面積を大きくし,できるだけ高温で低湿度の空気を用い,通気を良くすればよいことを意味しています。
 減率乾燥期間における乾燥速度は,固体内部の性質や水の存在状態などに由来する水の移動速度に支配されるために,空気の湿度や通風状態にはあまり影響されません。固体の温度は次第に熱風の温度に近づきますが,乾燥速度を増加させるためには,材料を薄層にし,温度を高めるのがよいです。しかし,温度が高すぎたり乾燥速度が速すぎたりすると,乾燥が不均一になり,湾曲やひび割れの原因となるので,適切な加熱方式や乾燥速度を選定する必要があります。乾燥工程の熱風の条件を把握するためには,質量基準湿度図表(基準は乾燥空気1 kg,全圧101.32472 kPa)が役立ちます。

図1 化学的変化,微生物生育および酵素活性に対する水分活性の影響
(熊谷 仁,熊谷日登美,高田昌子,食品工学入門―食品製造・保存の考え方―,(アイ・ケイ・コーポレーション,東京),p.51 (2005))

 

(A)
(B)

図2 定常乾燥条件での含水率、温度および時間との関係(A)ならびに乾燥特性曲線(B)
(古田 武,辻本 進,相良泰行,田門 肇,吉井英文,安達修二,食品工学ハンドブック,日本食品工学会編,(朝倉書店,東京),pp.249-283 (2006))

 

1−3.加工・調理
 @)噴霧乾燥:液体原料を熱風中に微粒化・分散させることにより瞬時に乾燥させて粉末製品を得る手法であり,流動造粒噴霧乾燥装置や密閉噴霧乾燥装置が使用されます。
 A)流動層乾燥:加熱空気を多孔板に上向きに吹き付け,原料を気流中に浮遊させて流動化と同時に乾燥させる手法です。流動化を促進するために撹拌流動層,振動流動層が適用されます。
 B)泡沫乾燥:液状やペースト状,スラリー状の原料を乾燥するために,原料中に少量の起泡剤を添加して激しく撹拌することにより微細で安定な気泡を作り,これを層状にして熱風乾燥する手法です。
 C)撹拌間接加熱通気乾燥:熱風を乾燥器底面から粉粒体層が通気層あるいは最低流動状態になる程度で通気して,粉粒体層の撹拌動力を低減しつつ,回転伝熱管で原料を撹拌して伝熱加熱する手法です。
 D)揚げ乾燥:原料を収納したリテーナが4〜10個装着された型枠が舟型の油槽中をコンベヤ式に通過し,その上をキャタピラ式蓋が押さえて揚げ加工して乾燥させる手法です。
 E)気流乾燥:加熱ジャケットを付けた外筒部および螺旋状気体案内板を付けた内筒からなる乾燥室を気体により搬送される途中で乾燥させる手法です。
 F)電磁波乾燥:2,450MHzの電磁波を照射して加熱乾燥するマイクロ波乾燥,波長域2.5〜25μmの遠赤外線を照射して加熱乾燥する遠赤外線乾燥法があります。

 

2.微生物制御

2−1.食品加工における除菌・殺菌・滅菌
 危害分析・重要管理点(HACCP)方式導入の前提条件となる一般的衛生管理事項(PP)において洗浄・除菌は最も重要な項目です。製造工程での衛生管理の徹底とともに食品の腐敗や劣化を抑制してシェルフライフを保証し,安全かつ食味に影響を与えず効果を発揮する日持向上剤や保存料の開発と利用が重要な課題となっています。従来のように最終的に保存料を添加することで製品の安全性を高めるのではなく,原料段階で初期菌数を減少させ,衛生的環境で製造した製品の安全性や品質を保証するための製剤とその効果的な利用法が求められています。

2−2.原理と理論
 微生物制御は,微生物が置かれた環境因子を生育・増殖の最適条件から越えて設定することによって達成され(3),その方法は物理的,化学的,生物学的方法に大別されます。殺菌は,全ての微生物を殺すことを指し,狭義には指標菌の殺滅を目的にすることをいいます。また,滅菌は全ての微生物を殺すことを指しますが,食品においては耐熱性芽胞菌をも完全に殺滅する条件を適用すると,食品の風味劣化や組織の破壊が生じて食品の品質が著しく損なわれます。そこで,商業滅菌として,これらの菌の残存はやむなしとしている場合が多いです。原理から殺菌を分類すれば,化学的殺菌と物理的殺菌に大別されます。化学的殺菌法とは,化学合成殺菌剤〔@アルコール系殺菌剤,Aハロゲン系殺菌剤素酸(次亜塩素酸系殺菌剤,二酸化塩素系殺菌剤,有機塩素系殺菌剤,ヨウ素系殺菌剤),B過酸化物系殺菌剤,C界面活性剤系殺菌剤(カチオン性界面活性剤,アニオン性界面活性剤,両性界面活性剤),Dビグアニド系殺菌剤,Eアルデヒド系殺菌剤,Fフェノール系殺菌剤],ガス系殺菌剤を用いた殺菌法です。一方,物理的殺菌法は加熱殺菌法と非加熱殺菌法に細分されます。前者には放射伝熱や伝導伝熱による乾熱殺菌法,常圧浸漬や常圧熱交換での伝熱による湿熱殺菌法,過熱水蒸気を用いての対流伝熱および凝縮伝熱を利用した過熱蒸気殺菌法,通電加熱殺菌法,遠赤外線殺菌法,赤外線殺菌法などがあります。後者には,瞬間除圧式殺菌,凍結高圧殺菌法,超音波殺菌法,衝撃波殺菌法,高圧二酸化炭素殺菌法,ミクロバブル超臨界二酸化炭素殺菌法,高圧パルス電場殺菌法,交流磁場殺菌法,マイクロ波殺菌法,紫外線殺菌法,パルス閃光殺菌法,電波放射線殺菌法,荷電粒子線殺菌などがあります。
 加熱殺菌は,従来から食品の殺菌法として幅広く利用されていますが,過加熱による食品成分の物理・化学的変化により風味劣化や変色,退色,状態変化による食品テクスチャーの変化,栄養価の劣化などが生じ,食品によっては著しく品質が低下してしまうことが多いです。近年では食品の品質に対する要求水準が高くなり,加熱殺菌においても短時間処理で食品の品質劣化を最小限に抑えて殺菌を行えるかが装置開発の課題となっています。微生物の死滅と品質低下の温度依存性の違いに基づいて,高温短時間(HTST)処理と低温長時間(LTLT)処理をみると,LTLT処理の場合には品質低下は初期のQ0からQLの水準に低下しますが,HTST処理の場合にはQHの水準にしか低下しません。すなわち,等価な加熱殺菌効果をもたらす両処理の間では,HTST処理の方がLTLT処理よりも品質に及ぼす影響が小さいことが期待できます(図4)。
 一方,非加熱殺菌は,微生物の膜電位差による細胞膜のs不可逆的破壊やタンパク質の変性,酵素の失活などの非加熱効果を利用しており,加熱殺菌と比較して食品の化学変化が起こりにくく,色や風味が保持され,栄養成分の分解などが少ないという特長があります。また,加熱に伴う食品の劣化を低減するために加熱殺菌法と非加熱静菌法を併用する方法もありますが,非加熱殺菌法は商業的には未だ開発段階のものも多く,食品の品質特性に影響を与えない殺菌法の開発が求められています。さらに,総合衛生管理製造や国際的品質保証の観点から,食品製造・加工施設での空中浮遊菌対策や原料水の殺菌などにも最適な非加熱殺菌技術が注目されています。

 

図3 微生物制御における温度-pH-水分活性をとった座標系
(土戸哲明,駒木 勝,渡辺尚彦,戸塚英夫,佐藤正之,高麗寛紀,矢野俊博,小沢貞雄,金子精一,小泉淳一,藤井建夫,高須一重,食品工学ハンドブック,日本食品工学会編,(朝倉書店,東京),pp.387-432 (2006))

 

図4 高温加熱処理と低温加熱処理におけるにおける加熱死滅と品質低下の反応経路の模式図
両処理とも生存数をN0から同じ水準まで低下させた場合に(左側縦軸),両者の所要加熱時間をtStLとすると,初期値のQ0からの品質低下は高温加熱の方が小さい。
(土戸哲明,殺菌,食品工学,日本食品工学会編集,(朝倉書店,東京),pp.15-20 (2012))

 

2−3.加工・調理
 最終平衡pHが4.6以上で,かつ水分活性awが0.85以上でありアルコールを除くすべての食品を低酸性食品と呼び,最終平衡pHが4.6未満の食品を酸性食品,酸または酸性食品が添加された低酸性食品で最終平衡pHが4.6未満,aw が0.85を越える食品を酸性化食品と呼んでいます。酸性食品や酸性化食品では低温殺菌法や熱時充填−保持−冷却するホットパック法で殺菌されています。低酸性食品では383〜398 Kでの高温殺菌が可能なレトルト(高圧釜)を用いたレトルト殺菌が行われています。
 マイクロ波加熱は,誘電体である食品に全方向電界によるマイクロ波(915,2,450MHz)を照射する誘電加熱です。この加熱法の特徴である内部加熱と迅速な温度上昇はHTST殺菌に理想的ですが,加熱むらが生じることがあります。食品の種類・成分,電気的性質,組織や形状によりマイクロ波の吸収・反射の状況が異なるので電界強度の均一化は技術的に困難なため,不均一な電界あ中を移動して,不均一な電界の影響を食品各部が等しく受けるように工夫しています。電磁波はガラス,セラミックス,合成樹脂などを透過するので,これらを用いた包装容器中の食品を加熱することができます。しかし,急速な昇温のため密封容器内の圧力が増加し,容器の破壊・変形,内容物の噴出が起きるので,開放系で加熱した後に蓋締め・密封を行うか,耐圧容器・耐圧加熱治具を用いたり,外圧を加えて加熱することが行われています。マイクロ波殺菌では急速な温度上昇という加熱効果と,微生物のタンパク質の変性や酵素の失活という非加熱効果が併用されています。
 産業分野で主に利用される遠赤外線は2.5μm〜25μm領域であり,放射伝熱により食品の加熱,乾燥,殺菌などに利用されています。遠赤外線の非加熱物への浸透が深くないため,食品の組成,形状,大きさなどの諸要因により食品の表層部と中心部とが必ずしも同様な温度上昇は望めず,一般には表面温度が先に上昇し,中心温度はそれに遅れて上昇します。したがって,中心部の殺菌が十分に行われる条件を設定する必要があります。

 

3.粉粒体処理

3−1.食品加工における粉粒体処理
 食品の加工・製造および保蔵にとって粉粒体技術(粉砕,分級,造粒,混合,乾燥,貯槽,供給,輸送,集塵,包装,計測・制御)は欠くことのできない重要な技術のひとつです。特に,近年は素材の微粒化,高機能化,複合化など,高度な技術が要求されています。

3−2.原理と理論
 @)粉砕
 原料に外力を加えて破壊し,さらに細分化して粒子径の減少化と表面積の増加を図かる機械的操作を粉砕といいます。原料の固体状物質を砕料,生成した細かい粒子を砕生物と呼びます。また,目的とする砕生物の粒子径によりこの単位操作を粗砕,中砕,微粉砕,超微粉砕と呼び分けています。通常,粒子径0.1 mm以下程度を粉体,粒子径0.1〜1.0 mm程度を粒体と呼びます。粉砕の機構は,外力による圧縮(面圧力,1点集中圧,多点分散圧,線圧)・打撃・せん断・切断・折曲,粒子自身の慣性力による衝撃・摩擦,ジェット噴流中における粒子の衝撃,爆破などの形態があります。いずれも粒子を圧縮する外力の作用により粉砕が進行します(5)。粉砕方式として,原料のままで行う乾式と,注水してペースト状にして行う湿式があります。また,原料を同時に供給して同時に搬出する回分式と連続式に大別されます。
 粉砕に要するエネルギーに関する代表的な経験則には,粉砕に要するエネルギーが砕料の表面積の増加に比例するというRittingerの法則,幾何学的に相似な2つの物体がまったく相似的な変形を受ける時,これに要する仕事量が両物体の体積または質量に比例するというKickの法則,一定量の均質な砕粉をある粒子径にするのに必要な仕事量が砕生物の粒子直径の平方根に逆比例するというBondの法則,粉砕仕事量dWと粒子径変化dDの関係を示した次式のLewisの一般式があります。
 dW=−CL・dD/Dn
 ここで,n=2の場合にリッチンガーの法則,n=1の場合にキックの法則,n=1.5の場合にボンドの法則になります。砕料を粉砕して,新しく単位表面積を増加させるのに要する仕事量が粉砕抵抗[N・m・m-2]です。砕料の粉砕されやすさを示す指数であり,砕料や粉砕法により異なる特性値が粉砕能[m2・N-1・m-1]です。

 

図5 粉砕の基本方式
(三輪茂雄,粉体工学通論,(日刊工業新聞社,東京),pp.151-184 (1981))

 

表1 混合操作が対象とする粉粒体,液体および気体の充填状態
(綿野 哲,粉体工学叢書5 粉体粒子の組織制御による機能付与,粉体工学会編,(日刊工業新聞社,東京),pp.101-110 (2008))

 

 A)分級
 ある混合物を成分により二つ以上の画分に分けることを分離(分別,選別),組成を変えずに量的に二つ以上の群に分けることを分割という。分級は,粒子径,形状,密度,色調,電気的および磁気的特性,化学的組成などの物性により区分け分離する操作をいい,乾式分級と湿式分級とに大別され,前者はさらにふるい分けと風力分級とに細分されます。乾式分級では作用する力により重力方式,慣性力方式,遠心力方式に分類されます。分級により粒度調整する目的は,粗大粒子を含まない微粉を得ること,および粒度分布の狭い粉体を製造することです。分級機が理想的分級を達成する質量割合を総合分離効率(Newton効率)といいます。ある粒子径の区分毎の平均回収率をプロットしたのが部分分離効率曲線です。部分分離効率25%に対応する粒子径に対する部分分離効率75%に対応する粒子径の比が分級の鋭さ指数であり,この値が1であれば完全分級,1.4以下であれば極めて良好な分級,1.4〜2.0ならば良好,2.0以上ならば不良と判定する指標になります。細粒側へ持ち込まれた粗粒の量と粗粒側に持ち込まれた細粒の量が等しくなる粒子径を平衡分離粒子径といいます。
 @乾式分級
 A.ふるい分級:ふるい分級は,粗粒除去,分級・整粒,粉抜きの目的で,網目を利用して主に機械的外力により粒子径10 mm〜数十μmの粉体を分画します。網ふるいの正方形網目の寸法は,目開き寸法と線径寸法による目開き表示,または線径の中心間距離が1 in間にある網目数で表すメッシュ表示とがあります。ふるい面の運動は傾斜網面での直線振動や楕円振動,水平網面での直線運動や楕円振動,並流や向流での円振動の6基本形があります。ふるい分けの効率はふるい面と粒子群の相対運動により決まりますが,その尺度として重力加速度に対する振動の最大加速度の比である遠心効果が用いられます。
 B.風力分級:工業的にふるい分けの難しい200〜300μm程度からサブミクロンの大きさまで適用され,気流中に分散させた粒子に外力を作用させて粒子の大きさ,密度差による粒子,粒子群の独自の動きから分級します。一定速度で運動する単一球形粒子が流体の粘性によって受ける抵抗力は,その粒子の投影面積および流体が受ける単位体積当たりの運動エネルギーに比例するというNewtonの抵抗則に従います。
 A湿式分級
 これは液体中にある粒子を重力,遠心力,ふるい分けなどによって分級することです。分級力の主なものは重力であり,液体中における粒子の沈降速度がその密度,大きさ,形状などにより異なることを利用して分級します。
 B)混合
 混合とは物性の異なる数種の粉体の集合体を乾燥した状態または少量の液体を添加した状態で外力によって運動させて均一な成分比の粉体の集合体を作ることをいいます。原材料の配合,製品の均質化,複合材料化や新しい粉粒体の生成に用いられます。混合物は,固相と気相が連続で,液相がなし,または不連続であり,外観がサラサラ〜バサバサ状態です。縦軸に着目成分のある位置における濃度についての標準偏差の対数,横軸に混合時間をとった混合特性曲線は,混合の進行度合いを表わします。混合の進行は,移動(対流)混合域,移動(対流)およびせん断混合域,拡散混合域の3領域に分けられます。混合度Mは次式で表現されるLaceyの式で定義されます。
 M=(σ02−σ2)/(σ02−σr2)
 ここで,σ02は試料の母分散,σ2は試料の分散,σr2は試料の母分散です。Mは混合の度合いを表し,分散状態では0,完全混合状態で1となります。
 C)造粒
 造粒は,粉体を凝集させたり,液体を分散・乾燥させて数百μm〜数 mmの固体の粒状物を形成させることです。造粒の目的は,均一性の向上,定容量性の向上,偏析防止,流動性の向上(通気・通液抵抗の減少),溶解性の向上,溶解・反応速度の一定化,減容効果,付着防止,飛散防止,廃棄物処理などが関連して最終製品の品質向上,工程合理化,公害対策を行うことです。圧縮式造粒装置で作った圧縮造粒物や流動層式造粒装置で作られた顆粒を破砕式造粒装置で整粒する方式を乾式造粒と呼びます。一方,粉体粒子を付着,凝集させるために結合剤を使用し粉体を造粒する方式を湿式造粒と呼びます。造粒物の評価項目は,外観,粒子径・粒度分布,嵩密度,顆粒強度,流動性,安息角,噴流性崩壊性,均一性などがあります。粉体食品の品質特性としては,吸湿性,湿潤性,沈降性,分散性,溶解性などがあります。
 D)表面改質・複合化
 @メカノケミカル法:粉砕はマクロ的には固体を細分化し,ミクロ的には結合を切断します。また,粉砕によって新しい表面が次々と生成し,表面積が増大します。限られた固体粒子に対して粉砕操作を継続すると,破断すべき結合の絶対数が次第に小さくなり,また,破断の確率も低下し,新しい表面の生成が限界に達します。固体の結合の破断は,結合の不安定化(活性化)を意味し,それは常に安定化しようとします。この安定化の手段の一つが周囲の粒子との凝集であり,これによって固体表面の活性が緩和されます。この非加熱で原子・分子レベルでの付加,交換反応をメカノケミカル反応と呼び,これも固体表面の活性の緩和の一つです。微粒子生成過程は化学ポテンシャル増大過程であり,微粒子凝集や吸着,反応などが起こる物質の安定化過程は化学ポテンシャルの減少過程です。
 Aコーティング:コーティングは粒子に食品用乳化剤,タンパク質や多糖類などの高分子,無機物などを被覆して粒子表面を改質する方法です。核粒子に被覆材を溶液として噴霧して付着させ,乾燥析出させて層状に成長させるフィルムコーティング,核粒子に微粉体の被覆材を懸濁液として噴霧して被覆材を固体のまま付着させて層状に成長させる粉末コーティングがあります。コーティングおよび後述するカプセル化の目的は,液体や気体を見掛け上固体に転化する,反応性物質を長期間にわたり混合状態で保存する,環境からの保護,色や風味のマスキング,核物質の放出制御,流動性の改善などです。
 Bカプセル化:粒子表面に皮膜を形成させる方法で,特に1〜数百μmまでの微小なカプセルをマイロカプセルと呼びます。マイクロカプセル化は,化学的技法(界面反応法,in situ法,液中硬化皮膜法など),物理化学的技法(水溶液系からのコアゼルベーション法,有機溶媒系からのコアゼルベーション法,液中乾燥法,溶解分散冷却法,内包物変換法,粉床法など),機械的・物理的技法(気中懸濁液被覆法,噴霧乾燥法,メカノケミカル法,真空蒸着被覆法,静電的合体法,高速気流中衝撃法など)に大別されます。

3−3.加工・調理
 野菜類,果実類,藻類,魚介類の規格外品や未利用部位の粉体を製造する要望があります。いずれの食品素材も水分含量が約82〜94%(w/w)というように高いため,前処理→湿式磨砕→乾燥→粉砕,あるいは前処理→乾燥→粉砕という工程が想定されます。

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