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東日本大震災からの農水産業復興を支援する食品加工技術
国立大学法人岩手大学 農学部 応用生物化学課程
三浦 靖

要旨

東日本大震災からの復興に向けての岩手大学の取り組みを紹介するとともに,被災地からの要望が多い食品加工技術のうち,加熱・冷却および凍結・解凍について,その原理や理論を平易に解説します。なお,同じく要望が多い食品加工技術である乾燥,除菌・殺菌・滅菌および粉粒体処理については別の機会に触れます。

 

1.岩手大学での取り組みの概要

岩手県沿岸地で,水産学分野の研究・開発を進めてきた北里大学は,東日本大震災での設備・施設被害により一時撤退を余儀なくされたため,その代わりを岩手大学に期待されています。そこで,2011年10月に「岩手大学三陸復興推進本部」を立ち上げ,地域の要望を最優先として復興支援の取り組みを行うとともに,「釜石サテライト」を設置し,三陸沿岸中部の被災自治体へ積極的に情報の収集・提供を行ってきました。2012年4月1日からは,各部門に専任教員・研究員等を配置し,全学組織の「岩手大学三陸復興推進機構」に改組しました(図1)。また,同月には三陸沿岸北部の被災地自治体の要望を汲み上げるため「久慈エクステンションセンター」,10月には三陸沿岸中部に位置する宮古市や近隣自治体の要望を収集するため「宮古エクステンションセンター」を設置しました。そして,東日本大震災直後から掲げてきた「『岩手の復興と再生に』オール岩大パワーを」のスローガンのもと,早期復興を目指しています。なお,2012年10月1日現在での主な活動を図2に示しました。

図1 岩手大学三陸復興推進機構の組織図(PDF:227KB)
 図2 東日本大震災からの復興に向けての岩手大学の支援活動概要(PDF:399KB)

 

2.SANRIKU(三陸)水産研究教育拠点形成事業

岩手大学三陸復興推進機構は,教育支援部門,生活支援部門,水産業復興推進部門,ものづくり産業復興推進部門,農林畜産業復興推進部門,地域防災教育研究部門の6部門から構成されています。そのうち,水産業復興推進部門は,水圏環境調査班,水産・養殖班,水産新素材・加工技術・加工設備開発班,マーケティング戦略班の4班から構成され,東京海洋大学および北里大学と連携する体制をとっています。このうち,「水産新素材・加工技術・加工設備開発班」は,機能性成分の探索,熱・物質・運動量移動の解析,装置・設備の効率化および水産関連作業の分析・伝承,食品加工技術の革新を担当しています。

 

3.『今日の一円,明日の百円,明後日の一万円』構想

東日本大震災で壊滅的な被害を被った水産加工設備・施設を再建するためには,多大な費用と日数を要します。そこで,早期に生業を再生させつつ,水産資源の生産・加工技術を革新することを目指しています。すぐに着手し,1年間以内にはある程度の成果が出せる案件を「今日の一円」,1年以内には着手し,若干の研究・開発(R&D)が必要な案件を「明日の百円」,2〜3年以内には着手し,本格的なR&Dが必要である案件を「明後日の一万円」と呼ぶことにしました。そして,この順序あるいは並行させてR&Dを進めることにより,水産業再生・復興を早期に実現するように努めています。
 本事業では,低経費で収入を得ることが期待できる乾製品から着手することにし,天日乾燥に替わって,高品質な乾製品を効率よく製造する手法の検討を開始しました。他産地品よりも安価かつ高品質(脂質酸化が抑制され,食塩含量が低く,保存性が良好)な製品を「ハーブ干物」としてブランド化するのが目標です。
 乾製品は,水分活性(水分子の熱力学的自由度を表す物理量であり,食品の保存性の指標)を低下させて保存性を向上させ,生鮮品にはない独特の風味を付与するために製造されています。しかし,製造中に酵素反応や化学反応が進行するために,低温・短時間での加工,酸化防止剤の使用が必要になるばかりでなく,微生物汚染の危険性が高いために,洗浄・殺菌などの前処理や,清浄な環境での加工が必要です。
 著者らは,食塩を水分活性低下剤としてではなく,適度な塩味を付与するための調味剤と位置付け,水分活性の低下ならびに内在酵素を失活させるための食品素材としてグルコン酸塩を選択しました。さらに,脂質の自動酸化を抑制するために,ローズマリー抽出物を用いています。乾燥方法には,低温除湿乾燥法を適用し,段階的に設定した低温・低湿の低速気流中で,原料表層からの水の蒸発速度と内層から表層への水の拡散速度の均衡を図りつつ乾燥させています。

 

4.農水産業復興を支援する食品加工技術

4−1.加熱・冷却
 食品加工の目的は,食品素材を消費者が志向する品質に変換すると共に,食品素材に貯蔵性,広域流通を可能にする輸送性,安全性を付与し,消費および販売における簡便性を向上させ,製品に付加価値などを付与することです。そして,食品加工における加熱処理には, (1)安全性や貯蔵性の向上,(2)除去・分離操作の補助・促進,(3)消化性の向上,(4)嗜好性の改善などの目的があります。表1に食品加工における代表的な単位操作を示しましたが,加熱を伴う処理が多いのが分かります。

表1 食品加工における単位操作と加熱処理(PDF:100KB)

外部から特別な働きかけがない限り,系内に温度差が存在すれば高温側から低温側に熱移動が起こり,両者が温度平衡になろうとします。この熱エネルギーの移動を伝熱と呼びます(図3)。食品の加工・製造に関わる一般的な伝熱の形態には,伝導伝熱(熱伝導),対流伝熱(熱伝達),放射伝熱,沸騰伝熱および凝縮伝熱の5つがあります。伝導伝熱とは静止した同一物体中または接触している2物体間に温度差が存在して高温側より低温側に熱が移動する現象です。物体内の温度分布が時間によって変わらない伝熱現象を定常伝導伝熱といい,物体の温度条件や熱的環境が変化すると新しい熱平衡状態に達するまでの間は物体の温度分布が変化する伝熱現象を非定常伝導伝熱といいます。対流伝熱とは固体壁(混ざり合わない2流体間では流体壁)と,それに接して流れている流体との間に温度差が存在する場合に流体自身の伝導伝熱と流動によるエンタルピー輸送とが同時に行われる伝熱現象です。そして,流れが強制的に引き起こされる場合には強制対流伝熱,流体内の温度の不均一に基づく密度差によって流れが誘起される場合を自由対流伝熱と呼びます。放射伝熱とは,熱放射線と呼ばれる波長0.3〜10μmの電磁波の授受による伝熱現象です。これらの伝熱は,物体や流体の相が伝熱過程で変化しませんが,沸騰や凝縮などの相変化を伴う伝熱現象もあります。沸騰伝熱は,湯を沸かす際に観察される現象ですが,伝熱特性が極めて優れているために,ボイラでは蒸気発生,原子炉ではエネルギー回収,凍結サイクルでは冷却の目的で広く利用されています。凝縮伝熱も極めて優れているので,工業的には熱交換器や凝縮器として利用されたり,熱エネルギーの輸送などに広く利用されています。

図3 伝熱の基本形態(PDF:369KB)

加熱方式は間接加熱と直接加熱に大別され,間接加熱には,蒸気またはガスよる加熱,水や油などの熱媒体による加熱,電気抵抗加熱があります。直接加熱には,ガス・液体・固体燃料による加熱,電磁波加熱〔誘導加熱(通電加熱),誘電加熱(高周波加熱,マイクロ波加熱),赤外線加熱,遠赤外線加熱〕などがあります。そして,高温流体から低温流体に熱を効率よく伝える装置を熱交換器と総称します。
 加熱・冷却が主に関わる加工・調理には,(1)蒸煮・煮炊(@煮る:調味液を熱媒体にして,その中で食品素材を湿式加熱し,食べられる状態にすると共に,調味液の各種成分を食品素材中に浸透・拡散させる操作,A茄でる:水または湯を熱媒体にして,その中で食品素材を湿式加熱し,食べられる状態にするか調理の前処理として行う操作,B蒸す:水蒸気がもつ顕熱および凝縮する際に発生する潜熱を利用して食品素材を湿式加熱する操作,C炊く:初期段階は熱媒体である水の中で穀粒を加熱して煮る操作であり,後期段階は蒸す操作になり,完全に遊離水をなくして食べられる状態にするという煮る操作と蒸す操作,場合によっては焼く操作との複合した湿式加熱操作),(2)揚げ加工:高温の食用油を熱媒体にして,その中で食品素材を乾式加熱し,食べられる状態にする,あるいは乾燥させる操作,(3)焙煎・焙焼・焼成(@焼く:熱源に直接に食品素材をかざして加熱する直火焼き,フライパンや鉄板などを用いた鉄板焼きとオーブン焼きなどの間接焼きする乾式加熱操作,A炒める:熱せられた器具と少量の油脂の顕熱によって食品素材を乾式加熱する操作,B煎る:熱せられた器具と周囲の空気の顕熱によって食品素材を乾式加熱する操作),(4)押し出し成形:エクストルーダを用いて混合・混練,せん断,加熱・冷却,成形,膨化などを同時に短時間で連続処理する操作,などがあります。
 4−2.凍結・解凍
 就労人口の増加やライフスタイルの変化,外食産業の発展などにより,食品には今まで以上に,貯蔵の長期化,規格化,簡便化が求められるようになってきており,これらの要望に応えるものとして冷凍食品があります。凍結は食品保蔵法の1つとして古くから利用されています。低温では食品中の酵素や微生物はその働きが遅くなり,物質の変化が抑えられ,さらに凍結すると,物質の運動性がより束縛されて物質の変化が極めて遅くなります。しかし,凍結した方がより速く反応が進行する場合(スクロースの加水分解,L-アスコルビン酸の酸化,オキシミオグロビンの酸化,タンパク質の不溶化)もあります。
 (1)凍結
 純水は0℃で,その全部が氷に変化します。しかし,食品などのように溶質成分や固体成分が共存する場合には,溶液の束一的性質に基づいて氷点降下が起こり,氷点以下では温度の低下に伴い水の凍結が徐々に進行します。食品中の水は,極性表面に吸着しており緩和時間が10-7 s程度に束縛されている束縛水,緩和時間が10-9 s程度に束縛されている結合水,緩和時間が10-12 s程度に自由に動ける等方性バルク水または自由水に区分されます。これらのうち束縛水は不凍水であり,結合水と自由水は凍結水です。
 食品の温度を経過時間に対して描いたのが凍結曲線(図4)であり,食品表層の温度は指数関数的に低下しますが,中心層では比較的緩慢に低下した後に溶質の濃度によるが−1〜−5℃の範囲で平坦部に近い緩慢な低下を示します。そして,中層の温度は両者の中間的な挙動を示します。この凍結曲線は定性的に次の3相に分けられます。

図4 モデル食品の凍結曲線(PDF:151KB)

第1相:食品が初温から凍結点まで冷却する過程であり,この温度範囲では食品中の微生物や酵素の作用を抑制できないため長時間かかることは,製品の品質には好ましくありません。
 第2相:食品が凍結状態に変わる過程です。多くの食品は凍結濃縮するため,純水の場合のように凍結の開始温度と終了温度が一定しません。真の凍結完了は凍結点曲線と溶質の飽和濃度曲線との交点(共晶点)になります。
 第3相:凍結した食品が凍結貯蔵温度まで冷却する過程です。
 過冷却の状態は熱力学的に不安定であり,水分子は結晶になった方が安定です。氷結晶の生成過程は液体のごく一部が結晶化する氷核生成過程と,この微小結晶が成長する結晶成長過程とに分けられます。食品の凍結は,冷却界面からの凍結界面の進行によって行われることが多く,凍結界面進行速度の駆動自由エネルギーは十分に大きいです。この場合,結晶成長において乗り越えるべきエネルギー障壁は存在せず,結晶成長速度,すなわち凍結界面進行速度は駆動自由エネルギーに比例します。また,核生成速度が大きい温度帯と結晶成長速度が大きい温度帯とは大きくずれており,低い温度に急冷すれば多数の氷核が生成するが成長は抑制されるので多数の微小結晶ができます。逆に高い温度で凍結すれば氷核生成は抑制されるが結晶成長が速いので少数の粗大結晶ができます。微小な氷結晶では,表面張力が粗大な氷結晶よりも大きく,水分子の蒸気圧は粗大な氷結晶のそれより高くなっているため,水分子は粗大な氷結晶へと移動します。
 ガラス状態は,溶融液体から急冷して,過冷却液体,ガラス転移点を経て作られた固化状態をいいます(図5)。ガラス状態は粘度が極めて高い流体であるので,食品内部において反応に寄与する分子や水分子の運動性は極めて低くなっています。これらの効果は食品の保存性を高めることに寄与します。食品をガラス転移点以下の温度に保存すれば,食品中の分子の拡散係数が著しく低下するので褐変(アミノ・カルボニル反応)など化学反応や氷結晶の成長などが抑制できるばかりでなく,脆い食品テクスチャーを付与できます。したがって,冷凍食品中の化学変化に照らし合わせてみれば,最大凍結濃縮相のガラス転移温度こそが貯蔵すべき温度の目安と考えられます。

図5 モデル食品の状態図(PDF:183KB)

冷凍食品製造での凍結速度は,種々の条件により変化し,品質に大きく影響します。凍結界面は食品の表層部では速く移動しますが,中心部ほど移動が遅くなるので,個体全体を一定の速度で凍結することは不可能です。また,食品の構造は不均一である場合が多く,食品中で冷却が最も遅れる部分である温度中心点は必ずしも幾何学的中心点に一致しません。ある初期温度の食品を冷却して凍結させて,さらに温度中心点の温度を所定の終了温度まで冷却するのに要する時間が実際上の凍結所要時間です。最大氷結晶生成帯の通過時間により急速凍結,中速凍結,緩慢凍結などに区分し,急速な凍結ほど微細な氷結晶が生成すると定性的に理解されてきました。この知見には,(1)最大氷結晶生成帯の定義が曖昧である,(2)最大氷結晶生成帯の通過時間が食品の部位により大きく異なることが考慮されていない,(3)生成した氷結晶構造に関する定量的な情報を与えないなどの問題点があります。
 凍結方法は,自然凍結法と機械凍結法とに大別されます。前者には(1)氷の融解潜熱(333kJ・kg-1)を利用する方法,(2)固体二酸化炭素(−78.5℃)の昇華潜熱(574kJ・kg-1)を利用する方法,(3)液化窒素(−195.8℃)の蒸発潜熱(200kJ・kg-1)または液化二酸化炭素(−78.9℃)の蒸発潜熱(575kJ・kg-1)を利用する方法があります。後者には(1)空気圧縮凍結法,(2)蒸気圧縮凍結法,(3)蒸気真空凍結法,(4)吸収凍結法,(5)電子(ペルチェ効果)凍結法などがあります。
 (2)解凍
 冷凍食品は,一般に解凍してから使用しますが,小形の素材型冷凍食品や調理冷凍食品では凍結状態のまま加熱調理することが多いです。解凍は熱移動からみれば凍結の逆であり,食品中の氷結晶を融解させることです。解凍により加工・調理が元の状態のようになりますが,品温の上昇により物理的変化(水分の蒸発,ドリップの発生),化学的変化(酸化,酵素作用),生物学的変化(微生物の繁殖)が起きます。
 図6図4の場合と同様の円柱状ゲルを25℃の水中で解凍した場合の試料表層,中間層,中心層の解凍曲線です。試料の表層の温度は指数関数的に上昇しますが,中心層の温度は比較的緩慢に上昇した後に−5〜0℃の範囲で平坦部に近い緩慢な上昇を示します。中層の温度は両者の中間的な挙動を示す。この解凍曲線は凍結曲線と同様に定性的に次の3相に分けられます。

図6 モデル食品の解凍曲線(PDF:170KB)
図4 モデル食品の凍結曲線(PDF:151KB)

 

第1相:凍結食品が凍結貯蔵温度から解凍温度帯まで加熱される過程です。
 第2相:食品が解凍状態に変わる過程です。多くの食品は溶質を含み、凍結濃縮しながら凍結されたので,解凍の開始温度と終了温度が一定しません。温度中心点の温度が凍結点に達したときに凍結率がゼロになる完全解凍の状態です。
 第3相:解凍食品が解凍媒体の温度まで加熱される過程であり,この温度範囲では食品中の微生物や酵素の作用を抑制できないため長時間かかることは,製品の品質には好ましくありません。また,食品が凍結点に達するまでの時間は,表面に近いほど短く中心部ほど長くなるため,食品の表層部が解凍媒体の高温度に長時間さらされることになり,物理的・化学的な性状にむらが生じ易くなります。
 一般に,空気を解凍媒体に使用すると解凍所要時間が長くなりますが,調理解凍や加熱解凍では短くて済みます。前者を緩慢解凍,後者を急速解凍と呼ばれます。なお,解凍媒体が水の場合には中速解凍になります。畜肉では低温での緩慢解凍の方が融解した水が元の組織に再吸収される時間が与えられるため流出ドリップが減少し,熟成も進行するため望ましいとされています。一方,ブランチング(加熱などによる酵素の不活性化処理)した冷凍蔬菜,加熱処理済みの冷凍剥きエビなどでは急速解凍した方が組織維持が良好とされています。
 解凍を速めるために解凍媒体の温度を高くすることは有効ですが,前述のように品質面で制約があります。そこで,解凍対象の食品を伸展させたり,小分割して表面積を大きくすること,熱伝達率の大きい流体を解凍媒体にし,その流速を高めてさらに熱伝達率を大きくすることが実際的な手段です。また,熱伝導率が凍結部の方が非凍結部より高いため,凍結では外部から内部への熱伝導率が大きいですが,解凍では外部が解凍されると熱伝導率が低下するため,解凍は凍結の場合よりも所要時間は長くなります。
 解凍方法は,外部から食品内部に伝熱する伝熱加熱型解凍と,食品内部から発熱させて昇温させる発熱加熱型解凍とに大別されます。発熱加熱型には,電磁波加熱,オーム加熱(通電加熱),遠赤外線加熱などがあります。電磁波加熱は食品中の電気双極子を持つ成分が電場の方向に配向する運動に伴う内部の摩擦熱が発熱源であり,さらに誘導加熱と誘電加熱との二分されます。誘導加熱は低周波加熱(50/60 Hz)と高周波加熱(〜数百kHz)とに分かれます。誘電加熱は高周波加熱(1〜300MHz)とマイクロ波加 熱(300MHz〜30GHz)とに分けられ,マイクロ波は電子レンジに利用されています。オーム加熱は食品に電流を流した際に内部に発生するジュール熱を熱源にします。遠赤外線加熱は,水分子が5〜25μmの遠赤外線成分をよく吸収して分子運動が活発になり内部摩擦により発熱する原理を利用しています。また,静電気加熱は装置の開発段階です。
 冷凍食品は未だに多くの問題点を抱えています。冷凍米飯は,デンプンが老化して米飯粒が白濁し結着性が低下しても,解凍の際の加熱によりデンプンが再糊化されるので問題は殆どありません。しかし,冷凍寿司では再加熱が不可能なので,解凍後に米飯粒が白濁しゴソゴソとした食感に変化し,放置時間にともなう硬化も速くなってしまいます。また,ホワイトソースやカレールウなどでは解凍後に離水を生じ,再加熱してもざらついた食感になってしまいます。最近,消費量が増加している調理冷凍食品,例えば油ちょう済みの揚げ物や焼成済みのピッザパイでは揚げ衣やクラストのサクサク感が品質の重要因子ですが,数カ月で消失してしまいます。これらの対応策としては,冷凍食品の配合や加工条件を変えたりして,試行錯誤しているのが現状です。解凍処理の後に調理を行う場合には,作業性の観点から半解凍が行われます。一方,畜肉では完全解凍が 行われますが,解凍終了時の品温を低くして,水分の蒸散,脂質の酸化,酵素や微生物の影響を抑制する必要があります。

 

略歴

1981年3月          東北大学農学部食糧化学科卒業
1981年4月〜1983年3月 東北大学大学院農学研究科博士課程前期(食糧化学専攻)
1983年3月          農学修士(東北大学)
1983年4月〜1986年3月 東北大学大学院農学研究科博士課程後期(食糧化学専攻)
1986年3月          農学博士(東北大学,農博第352号)
1986年4月〜1994年3月 三菱化成工業株式会社(現 三菱化学株式会社)
                 総合研究所 研究員
1994年4月          岩手大学農学部 助教授
2007年4月          国立大学法人岩手大学応用生命科学系農学部 准教授
                 農学部応用生物化学課程担当
2011年10月         国立大学法人岩手大学応用生命科学系農学部 教授
                 現在に至る

 

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