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「食品の変質要因と包装による変質防止技術」
(独)農業・食品産業技術総合研究機構食品総合研究所
石川 豊
1.食品の品質と鮮度
食品の品質要素は、大きく二つに分けることができる。第一は、食品が本来備えていなければならない「栄養があり、安全である」という「基本的特性」であり、第二は、食品が人間の生理、感覚等に及ぼす作用、働きとしての「機能的特性」である。 基本的特性とは、(1)蛋白質、脂質、炭水化物、繊維や、ビタミン、ミネラルなどの栄養素があり、(2)農薬、重金属、中毒細菌、毒素などの有害物質がなく、「安全で健康に良い」という、食品として先ず持っていなければならない基本的な要素であり、食品の「第一次機能」と言われる。 機能的特性には、人間の感覚器官に与える作用、即ち「食べて美味しい、見て美しい」ということに代表される嗜好特性と、人の生理機能を支える「血圧調節作用」や「コレステロール低下作用」などの生体調節機能を持つという特性がある。前者は食品の「第二次機能」、後者は「第三次機能」と言われ、この食品のもつ第三の機能に着目した食品群をいわゆる「機能性食品」(一部は「特定保健用食品」)と呼んでいる。
さらに、それぞれの食品が持つ品質要素の二次特性として、時間とともに変化する「速度」で表される「流通特性」、「鮮度」がある。食品の「流通特性」とは、流通過程で引き起こされる栄養特性、嗜好特性などの変化を「速度」の概念で示したものであり、流通過程における成分変化が少ないものについては「流通特性が優れている」ということになる。流通過程の成分変化には、乾燥・吸湿という水分の増減、栄養成分・呈味成分などの化学成分の増減、脂質の酸化などがあり、青果物等では、代謝・生理によって引き起こされる鮮度低下、品質低下があり、微生物の成育などによって引き起こされる変敗、腐敗などがある。
また、青果物や魚介類などの生鮮食品では、「鮮度が良い・悪い」という表現が多く使われる。食品の「鮮度」とは、一般に品質低下の速い食品について、収穫・製造後の「新しさ」を概念的に捉えるものであり、品質とは表現法の異なるものである。採りたての野菜はみずみずしく新鮮であるが、品質的には優れたものから劣るものまで大きな幅がある。日が経って変色し萎れた野菜でも、水を打って光に当てると萎れがなくなり色が戻ってくる。しかし、このような場合には鮮度が良くなったように見えるが、成分は消耗されており、品質が良くなったとは言えない。
2.食品の変質要因
食品をそのまま空気中に放置すると、腐敗したり、油焼けや変色を起こしたり、乾燥や吸湿など、様々な変質を起こして品質が低下し、食べられなくなる。食品に起こる変質要因を大きく分けると、生物的要因、化学的要因、物理的要因の3つになる。
(1)生物的な要因で変質が起こる場合の変質要因には、食品素材に含まれる酵素、微生物や外部から進入する害虫・害獣などである。酵素や微生物による変敗が起こる環境条件としては、酸素、温度、水分(水分活性)、pHなどがある。
(2)化学的な要因で変質が起こる場合の変質要因には、食品素材に含まれる脂質、色素、ビタミンや還元糖・アミノ酸などの化学物質や、空気中の酸素による酸化、成分間で起こる化学反応などがある。これらの化学的な変質が起こる環境条件としては、酸素、温度、水分、光線(波長)、金属イオンやポルフィリンなどの触媒物質などがある。
(3)物理的な変質としては、水分や臭い成分が食品に収着・脱着されたり、糖やアミノ酸などの化学成分が結晶化したり、振動や衝撃によって組織が破壊されたりする変質が挙げられる。これらの品質変化の内、水分の移動によるものが最も大きな要因である。
実際の食品では、これらの変質が単独で起こることもあるが、いくつもの変質が同時に起こることが多い。それは、食品が持つ変質要因と、変質を引き起こす環境条件によるものであり、相対的に早く起こるものから変質として現れる。これらの変質要因には、環境条件である酸素濃度、温度、湿度(水分)、光線(波長)、pHなどの環境要因が重要な影響を及ぼしている。これらの変質にかかわる要因と環境条件をまとめて図1に図示した。
図1 食品の変質要因と環境条件
食品の変質は、食品自身に変質の要因があり、同時にその変質が起こる環境条件が整ってはじめて起こるものである。
例えば、食品に変質要因としての好気性細菌がおり、環境条件として水分活性が充分高く、栄養と酸素があり、適当な温度、pHなどの条件が満たされて初めて繁殖し、一般に107以上の菌数になれば腐敗に至る。また、中毒を起こす偏性嫌気性のボツリヌス菌は、その胞子の耐熱性が非常に高いので、食品が土壌由来のこの菌に汚染されていれば、適当な温度、pHで、酸素がなく、充分に低い酸化還元電位になれば繁殖することができ、ボツリヌス菌が繁殖した食品を食べれば致死性の中毒を起こすことになる。
油性食品では、例えば、食品に変質要因として酸化されやすい脂質(脂肪酸)が含まれており、環境条件として酸素があれば油脂の酸化が起こり、光線、金属イオン、酵素などの存在や温度、水分などの条件によって酸化反応が促進される。また、変質要因として高濃度の還元糖とアミノ酸が含まれている場合には、酸素があり温度が高ければ、容易に褐変が起こり、変色と褐変臭の生成が起こる。
ビスケットやスナック食品などの乾燥食品では破損によって商品価値を失うが、このような食品には「割れやすい」という変質要因があり、環境条件としての振動、衝撃がある。
このように、変質要因とそれが起こる環境条件があって初めて変質が起こる。逆にいえば、無菌包装食品が腐敗しないように、変質要因のない食品は、変質の起こる環境条件にあっても変質しないし、乾燥食品が腐敗しないように、変質する環境にないものは、変質要因が存在しても変質しないということが理解できる。多くの保存技術、品質保持技術は、このような考え方にもとづいて変質要因や変質の起こる環境条件をなくす方法として考えだされたものであり、ここでは特に「包装」により変質の起こる環境条件を制御することにより変質防止を行う手法や包装材料について紹介する。
3.包装により制御する環境条件
3−1 酸素
酸素は水とともに普遍的に存在し、食品成分の多くは酸素と結合して品質変化を起こす可能性がある。油を空気にさらしておくと、色が変わって劣化する。脂質の酸化においては、温度や光、金属イオンなども劣化の要因になるが、酸素の存在が最も大きな影響を与える。カット野菜やリンゴが時間とともに褐変する酵素的褐変は、ポリフェノールオキシダーゼによる酸化が原因である。また、カビも普通は好気性で、呼吸をするために酸素が無くては生きることができない。したがって、食品を保存する場合、包装内の酸素を除去することにより品質劣化を抑制でき、長期保存が可能となる。
包装容器やフィルム内の食品が酸素により劣化することを防ぐ方法についてまとめた。
3-1-1酸素遮断性包装
ビンや缶の場合、密封してしまえば容器外から酸素が入ってくることはない。しかし、プラスチック容器や袋の場合には酸素が少なからず透過する特性があるため、酸素透過を遮断する工夫が必要となる。
a)金属箔包装容器
金属箔は最も優れた酸素遮断性を持っている。アルミ箔(7、9、12μm)とポリエチレンテレフタレート(PET)(12μm)、延伸ナイロン(ONY)(15〜25μm)、2軸延伸ポリプロピレン(OPP)(18〜30μm)などの基材フィルム、無延伸ポリプロピレン(CPP)、中密度ポリエチレン(MDPE)、直鎖低密度ポリエチレン(LLDPE)などのヒートシール材(シーラント)を積層したパウチとして使用されることが多い。ビンや缶と同様、酸素透過はゼロであり、カレー等のレトルトパウチに使われている。
b)アルミ蒸着フィルム
金属箔と違って酸素透過がゼロではないが、酸素透過性が極めて低いのが特徴である。PET、OPP、ONYなどの二軸延伸フィルムのほか、CPP、低密度ポリエチレン(LDPE)のような無延伸フィルムに200〜500Åの厚さでアルミを蒸着する。ポテトチップなど酸化しやすい食品に使われている。
c)シリカ蒸着フィルム
アルミ箔や蒸着フィルムは酸素遮断性が良いが袋の中が見えない。主としてPETまたはONYフィルム上に酸化ケイ素膜を真空蒸着して製造されるため、透明で袋の中を見ることができ、電磁波を透過するので電子レンジによる加熱調理や金属探知機による異物検査も可能である。
d) 酸素高遮断性プラスチック包装容器
酸素高遮断性のプラスチック包装資材としては、エチレン・ビニルアルコール共重合体(EVOH)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ポリアクリロニトリル(PAN)、MXD6ナイロンなどがある。EVOHフィルムは、1972年に食品用の包材として初めて“かつお削節”用の包材して用いられ、EVOH樹脂と他の樹脂との共押出しによる包材としては、1973年に、それまでのガラス製包装容器に代わって、マヨネーズ用のプラスチックボトルとして使用され、今でも幅広く用いられている。PVDCフィルムは、家庭用ラップフィルムや魚肉ハム・ソーセージ、かまぼこ、チーズなどケーシングとして使われている。
これらの包装材料を使うことで包装食品が外部の酸素と接触することを遮断することが可能であり、酸素による品質劣化を防止することができる。ただし、金属箔以外は酸素透過がゼロではないので注意しなければならない。表1に酸素透過度をまとめておく。
表1 酸素遮断性包装容器の種類と特性
包装資材 |
透明性 |
酸素透過性 |
水蒸気透過性 |
アルミ箔 |
× |
0 |
0 |
アルミ蒸着 |
× |
0.8〜1 (PETベース) |
0.8〜1.4 (PETベース) |
シリカ蒸着 |
○ |
0.6〜1.2 (PETベース) |
0.8〜1.0(PETベース) |
EVOH |
○ |
0〜8(20℃ 0〜85%RH) |
− |
PVDC |
○ |
1.2(25℃) |
2.1(40℃) |
PVA |
○ |
0.3〜6(20℃ 0〜92%RH) |
150 |
PAN *1 |
○ |
0.3(23℃ 0〜90%RH) |
− |
ガラス瓶 |
○ |
0 |
0 |
金属缶 |
× |
0 |
0 |
*1 1mm当たり
酸素透過性: ml/m 2・day・atm 水蒸気透過性: g/m 2・day 40℃90%RH
3-1-2脱酸素剤封入包装
酸素遮断性フィルムを使えば包装後の包装内への酸素の透過を抑えることができるが、密封する際に包装内に空気(酸素21%含む)が残っていれば、これによって酸化劣化が進んでしまう。そこで、容器内の残存酸素を除去する目的で脱酸素剤封入包装が使われている。ただし、この時の包装材料には3-1-1酸素遮断性包装が使用される。脱酸素剤の基本的な構造は、微粒子の鉄粉または酸化鉄の粉末に食塩などの酸化促進剤を塗布し、酸素透過性を制御したフィルムで錆などを外部に出さないように包装したものである。脱酸素剤が発売された当初は和洋菓子類、切り餅(図2)、ナッツ類、珍味、農産加工品、半生麺などへの適用が多かったが、脱酸素効果の認識が広まり、様々な種類の脱酸素剤が開発されるとともに、加工度の高まった畜肉加工品、水産加工品、乳製品、各種惣菜、健康食品などへの利用も広がってきている。
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図2 切り餅の包装 |
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図3 酸素吸収性ポリエチレン・ブローボトルを用いた低カロリーマヨネーズ容器の構造 |
3-1-3酸素吸収剤練込み包装容器
フィルム自体に酸素吸収機能を持たせたことで、液体食品への適用、加熱処理への対応が可能となった。また、液中の溶存酸素を効率的に吸収することができる上、酸素吸収層は電子レンジ耐性を持つという特長がある。酸素吸収剤練込みフィルムを使用した製品形態には、パウチ(平袋、スタンディングパウチ)、 トップフィルム(トレー、ゼリー容器の蓋材)、立体成型品、ガセット袋(ようかんなどの成型食品用)、カップ、マヨネーズ用のブローボトル(図3)といったものがある。
3−2 光
光線は食品の酸化に大きな影響を持っている。太陽光線の主なものは、紫外線、可視光線、赤外線である。光線のエネルギーは、その波長に反比例する。赤外線は分子を振動させる程度であるが、 可視光線になると分子結合を励起させたり、一部の分子を切断できるほどのエネルギーを持つ。色素と酸素が共存すると、一重項酸素を生じる光増感反応を起こす。紫外線は分子、原子同士の結合エネルギーを断ち切るに充分なエネルギーを持つので、紫外線があたった物質がイオン化したり、脂質ではラジカルが生じて自動酸化のきっかけを作る。したがって、様々な食品の品質劣化を防止する上で可視光線、紫外線の遮断は重要な意味を持っている。
3-2-1光線の完全遮断包装容器
金属缶やアルミ箔を使うことにより光を完全に遮断することができる。緑茶の包装では、光を受けると異臭が発生するため古くからアルミ箔積層フィルムが使われている。しかし、アルミ箔積層フィルムは、包材の積層、製袋や包装後のシールなどの機械適性にやや劣ることや、コストがかかること、完全に中味が見えないことなど問題も多い。わが国においては、購買者が中身を透視確認して購入する習慣が根強いため、全てを覆うことは売れ行きにも大きな影響を及ぼすと言われており、すべての食品で使えるわけではない。
3-2-2光線の部分遮断包装容器
光線の部分遮断包材としては、表は全面印刷をして光線の影響を少なくし、中味を見たいという消費者の要求には、裏側に印刷をしない小窓をあける方法が取られている。また、チタン白や酸化鉄などのインキで中味が見えるように薄く印刷したものや、中味が見える程度の薄手の和紙とプラスチックフィルムを積層した包材などがある。
3-2-3紫外線遮断包装容器
紫外線遮断には二つの方法がある。紫外線吸収剤をコーティングして紫外線のみを吸収させる方法と、紫外線のみを散乱させる方法がある。インキなどに用いる白色顔料用二酸化チタンは、粒子径が0.2〜0.3μmで可視光を散乱させるようにしているのに対して0.01〜0.05μmの粒径の超微粒子二酸化チタンは、透明性のある紫外線遮断剤として使用されている。
3−3 水分(湿度)
我々が口にする食品には必ず水分が含まれる。それには、ビスケットや海苔のように水分含量が低い乾燥食品から生鮮食品のような水分含量が高い多水分食品まで広範囲の食品があり、その水分状態は多様である。製造時には適切な水分状態にある食品でも、貯蔵中に吸放湿現象により水分含量が変化すれば食味低下を引き起こす。例えば、乾燥食品を湿度が高い条件に置いておけば吸湿によりテクスチャーの変化、酸化・褐変の進行も認められるようになる。逆に多水分食品を湿度が低い条件下で流通、貯蔵した場合、水分の蒸散による目減りや褐変が促進される。
食品の持つ水分含量(水分活性)を保持するためには包装材料の水蒸気透過性が重要な役割を果たすことになる。プラスチックフィルムの水蒸気透過性は水とポリマーの親和性によりその特性が決定される。プラスチックフィルムにより水蒸気透過性が大きく異なるので使用する場合には注意しなければならない。特に乾燥食品の防湿包装には以下のフィルムが使われることが多い。
3-3-1金属包装容器
アルミ箔包材やアルミ箔積層紙容器、アルミ箔コンポジット缶、アルミ蒸着フィルムなどである。アルミ箔積層フィルム、アルミ箔積層紙容器として使用されている例としては、緑茶の包装やスナック菓子のカップなどがある。アルミ箔コンポジット缶は、円筒形の成形ポテトチップ容器などに使われている。アルミ蒸着フィルムが使われている用途例としては、ポテトチップなどのスナック菓子が最も多く、冷菓、冷凍食品、インスタントコーヒー、ココア、茶葉、クッキー、キャンディーなどにも使われている。
3-3-2シリカ系包装容器
シリカ蒸着フィルムは、スナック菓子、キャンディ、米菓、チョコレート、ケーキ等のスナック・菓子類、レトルト食品、ボイル食品、スープ、水煮野菜等のレトルト系食品などに広く使われている。シリカ蒸着積層紙容器は、ジュース等の飲料容器やチョコレートソース容器などに使われている。
3-3-3ポリ塩化ビニリデン包装容器
ポリ塩化ビニリデン(PVDC)の大きな特徴は、酸素と水蒸気の両方に対して優れたバリアー性を持つということである。水蒸気バリアー性が高いことにより、食品のみずみずしさを保ったり、湿気を防ぐことが可能になる。また、酸素のバリアー性が高いことは酸化による食品の変質を防ぐことができ、各種ガスのバリアー性に優れていることで食品の香りを保ったり、移り香を防いだりすることもできる。さらに、耐熱性、透明性、熱収縮性、コストなどバリアー材としてはトータルバランスに最も優れた樹脂の一つと言える。このような優れた特性を利用して、ハム・ソーセージのような食品の包装フィルムへの用途が開け、さらに、家庭用ラップにおいては、鮮度保持、使い勝手の良さ、密着性などの点が評価され、その多くがPVDCフィルムである。
3-3-4乾燥剤封入容器
フィルム内に食品と一緒に乾燥剤を封入する防湿包装が行われてきた。しかし、この防湿包装に用いられるフィルム、乾燥剤を適正に選択し、包装設計することは簡単ではない。
まず食品包装用に用いられる乾燥剤としては、生石灰(酸化カルシウム)、シリカゲル、塩化カルシウム、モンモリロナイト、合成ゼオライト、アロフェン等がある。それぞれに特徴があり、生石灰は安価であるが吸湿に伴う発熱と体積膨張が著しい。シリカゲルは吸水による潮解や膨潤を起こさず、吸水量を可視化するため塩化コバルトを含浸させたゲルを混在させる場合が多い。合成ゼオライトは安定かつ安全であるが高価であるため使用は限定される。いずれの乾燥剤も有孔ポリオレフィンやポリエチレン不織布からなる小袋で個包装される。
3−4 振動・衝撃
食品が振動・衝撃を受けることによって起こるトラブルにはさまざまなものがある。それらの要素を分類すると、
(1) 輸送中の落下・衝撃など:食品の破損・破壊、包装容器の破損・破裂
(2) トラック、鉄道、船舶などの交通機関そのものの振動・衝撃:食品表面の擦過傷、フィルム包装容器の摩擦ピンホール、屈曲疲労ピンホールの発生、
(3) 積み重ねなどの影響による共振振動、圧縮など:食品のつぶれ・変形、擦過傷など
(4) 紙製ダンボールなどの保存や吸湿に伴う強度変化によるものなど:食品の圧縮つぶれ、圧縮変形
これらの振動・衝撃・圧縮などから商品を守るために緩衝包装がある。緩衝包装の分類を表2に示す。
表2 緩衝材の構成
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分類 |
用途 |
種類 |
減量 |
1 |
発泡容器 |
固定用緩衝材 |
成形加工緩衝材 |
プラスチック系 |
組込み加工緩衝材 |
プラスチック系 |
2 |
発泡シート |
表面保護用緩衝材 |
発泡シート緩衝材 |
プラスチック系 |
3 |
発泡緩衝材 |
充填用緩衝材 |
バラ緩衝材 |
プラスチック系 |
バラ緩衝材 |
植物系 |
4 |
含気成形緩衝材 |
充填用緩衝材 |
エアー緩衝材 |
プラスチック系 |
気泡シート |
表面保護用緩衝材 |
気泡シート緩衝材 |
プラスチック系 |
5 |
パルプモールド |
固定用緩衝材 |
成形加工緩衝材 |
紙系 |
6 |
その他、天然素材
利用緩衝材 |
固定用緩衝材 |
組込み加工緩衝材 |
紙系 |
充填用緩衝材 |
エアー緩衝材 |
紙系 |
紙緩衝材 |
紙系 |
荷崩れ防止用緩衝材 |
エアーダンネージバッグ |
紙プラスチック |
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図4 果実の間に挟む緩衝用のネット状発泡シート |
図5 発泡バラ緩衝材 |
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図6 エア緩衝材 |
図7 パルプモールド成型資材 |
段ボールの強度は、含水率により大きく変化し、その含水率は環境の湿度により大きく変化することが知られている。同じ段ボールでも冬期の乾燥した季節と梅雨のじめっとした季節では、強度は大きく異なる。
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図8 段ボール含水率と圧縮強度 |
図9 温湿度と段ボール含水率 |
例えば、図9から梅雨の季節として温度25℃湿度90%の状態を考えると、段ボール含水率が約14%となる。一方、冬期で温度10℃湿度40%の状態を考えると約7%となり、図8から強度は2倍以上変わってしまうことがわかる。包装食品は、中身の食品の品質はもちろん包装容器や段ボールの損傷があっただけでも返品になることが多々あるので注意が必要である。
4.おわりに
食品の品質を好ましい状態に維持するためにここで紹介したようなさまざまな包装材料が使われている。包装には内容物の表示、小分けなど取り扱いやすさ、利便性なども重要な機能になっている。また最近では、「廃棄処理しやすい、再利用しやすい」という工夫がなされた包装容器も数多く使われるようになっている。食品包装にはこれからも大きな役割が期待されるものと考えられる。
参考文献
1. 平成18年度標準技術集「食品用包装容器」 特許庁(2006)
2. 加藤博通・倉田忠男:食品保蔵学 文永堂出版 (1999)
3. 津志田藤二郎:食品と劣化 光琳 (2003)
4. 第33回段ボール包装設計コーステキスト 日本包装技術協会 (2008)
5. 大須賀弘:新・食品包装用フィルム 日報出版 (2004)
6. 三浦洋・木村進:食品保蔵・流通技術ハンドブック 建帛社 (2006)
7. 日本包装技術協会:食品包装便覧 (1988)
略歴
学歴
昭和60年3月 慶應義塾大学理工学部卒業
昭和60年4月 慶應義塾大学大学院理工学研究科計測工学専攻
前期博士課程入学
昭和62年3月 同上修了 理工学修士取得
平成11年3月 農学博士取得(東京農工大学)
職歴
昭和62年4月 農林水産省食品総合研究所入省
昭和62年10月 同所 食品流通部食品包装研究室配属
平成 8年4月 主任研究官
平成11年6月 筑波大学農林工学系助教授
平成14年7月 独立行政法人食品総合研究所流通安全部食品包装研究室主任研究官
平成15年10月 農林水産省農林水産技術会議事務局研究調査官
平成17年10月 独立行政法人食品総合研究所食品工学部流通工学研究室主任研究官
平成18年 4月 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構食品総合研究所食品
工学研究領域食品包装技術ユニット・ユニット長
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