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官能評価におけるデータ解析の基礎(2):順位データの編集と解析
東京情報大学総合情報学部 准教授
内田 治

1.順位データの編集

5つのチーズ(A、B、C、D、E)を10人に試食してもらって、おいしい順に順位を付けてもらう試験を行ったとしよう。このときには、後に続く統計解析のことを考えると、次のように入力する必要がある。
回答者 A B C D E
1 5 3 4 2 1
2 5 4 3 2 1
3 4 1 3 5 2
4 4 2 3 5 1
5 4 3 1 5 2
6 5 4 2 3 1
7 5 3 1 4 2
8 5 4 3 2 1
9 1 3 2 4 5
10 3 2 4 5 1

すなわち、Aは何位かという順位を入力する。しかし、解答用紙や何らかの都合で、次のように入力していることがある。
回答者 1 2 3 4 5
1 E D B C A
2 E D C B A
3 B E C A D
4 E B C A D
5 C E B A D
6 E C D B A
7 C E B D A
8 E D C B A
9 A C B D E
10 E B A C D

この入力形式は、1位は何かという入力の仕方である。そこで、このように入力したデータを最初に示したデータ形式に変換する方法を紹介する。

[セルI2]=MATCH(I$1,$B2:$F2,0)
 これをセルI2からM11まで複写すると、データ形式2が完成する。

2.順位データの解析

解析1)平均値と標準偏差の算出
 チーズごとの平均値と標準偏差を求めることが解析の基本である。

 つぎのように関数を入力する。
(セルに入力する関数)
  [I3]=AVERAGE(B2:B11)    ※I3をJ3からM3まで複写
  [I4]=STDEV(B2:B11)       ※I4をJ4からM4まで複写

 解析2)平均値と標準偏差のグラフ
  解析1で求められた平均値と標準偏差のグラフを作成する。
  A B C D E
平均値 4.10 2.90 2.60 3.70 1.70
標準偏差 1.29 0.99 1.07 1.34 1.25

(手順)
 1)平均値のグラフ作成
 セルH2からM3をドラッグし、平均値の折れ線グラフを作成する。

2)標準偏差データの追加
 作成されたグラフをクリックし、メニューから[レイアウト]→[誤差範囲]→[その他誤差範囲オプション]と選択する。

つぎのような[誤差範囲の書式設定]ボックスが現れる。

[縦軸誤差範囲]を選択し、[誤差範囲]→[ユーザー設定]と設定して、[値の設定]をクリックする。



つぎに、[ユーザー設定の誤差範囲]ボックスが現れるので、[正の誤差の値]と[負の誤差の値]にそれぞれ「=sheet1!$I$4:$M$4」と標準偏差の値を範囲指定し、[OK]をクリックする。


[誤差範囲の書式設定]ボックスへ戻るので、[閉じる]をクリックすると、平均値のグラフに標準偏差が追加される。
 レイアウトを整えると、最終的につぎのようなエラーバーチャートが完成する。
解析3)データの集計
 形式2のデータをつぎのような形式に集計する。
  A B C D E
1          
2          
3          
4          
5          

データを集計する際には、「COUNTIF」という関数を利用する。
=COUNTIF(範囲、検索条件)
指定した検索条件に合う文字や数値を数える。
(手順)
 つぎのように関数を入力する。

(セルに入力する関数)
  [I3]=COUNTIF(B$2:B$11,$H3)

 以上のように入力すると、セルI3に「1」と表示され、チーズA(セルB2からセルB11)の中で、Aを1位(セルH3)と評価した人が1人いることがわかる。
 これをセルI3からM7まで複写すると、集計表が完成する。

解析4)集計表のグラフ化
  解析3の集計表をグラフ化する。

 (手順)
 セルH2からM7をドラッグし、棒グラフを作成する。この時、棒グラフの種類は[2-D縦棒]のを選択する。

作成されたグラフをクリックし、メニューから[デザイン]→[グラフスタイル]で任意のグラデーションを選択する。(ここでは、青色のグラデーションを選択)
レイアウトを整えると次のようにグラデーションのグラフが完成する。グラデーションを選択することにより、順位が色の濃淡で把握できるようになる。
解析5)データの転置
 人を列、チーズを行とする形式3のデータへ変換する。
チーズ 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
A                    
B                    
C                    
D                    
E                    
(形式3)

形式3のデータは、形式2のデータの行列を転置したものである。データの行列を入れ替えるときには、「TRANSPOSE」という関数を利用する。
=TRANSPOSE(配列)
指定した配列の行列を入れ替える。
(手順)
 セルH2からR7をドラッグし、つぎのように関数を入力する。
 ※形式2のデータ配列は11×6である。この配列を行列転置した6×11の範囲をドラッグする。

(セルに入力する関数)
  [H2]=TRANSPOSE(A1:F11)

 入力した関数の「=」の前にカーソルを合わせクリックする。そのまま「Ctrl」+「Shift」+「Enter」を押すと、つぎのようにデータ配列が入れ替わる。

解析6)相関行列の算出
 解析5で行列を入れ替えた形式3のデータ表にもとづいて、回答者同士の相関行列を算出する。

 Excelで相関行列を求めるときには、[分析ツール]を利用する。
 [分析ツール]はエクセルのアドイン機能である。
 (手順)
 メニューから[データ]→[データ分析]と選択すると、[データ分析]ボックスが現れるので、[相関]を選択して[OK]をクリックする。

続いて[相関]ボックスが現れるので、
 [入力範囲] →「$I$2:$R$7」
 [データ方向]→[列]
 と設定し、[先頭行をラベルとして使用]にをいれて[OK]をクリックする。
つぎのように、新規ワークシートに相関行列が作成される。
  1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
1 1                  
2 0.9 1                
3 0.2 0.0 1              
4 0.4 0.3 0.9 1            
5 0.0 0.2 0.6 0.7 1          
6 0.7 0.9 0.2 0.5 0.6 1        
7 0.3 0.5 0.5 0.6 0.9 0.8 1      
8 0.9 1.0 0.0 0.3 0.2 0.9 0.5 1    
9 -1.0 -0.9 -0.2 -0.4 0.0 -0.7 -0.3 -0.9 1  
10 0.3 0.1 0.8 0.9 0.4 0.2 0.2 0.1 -0.3 1
                     
回答者9は、他の回答者とマイナスの相関係数になっており、順位の付け方が異質であることが読み取れる。
今回、7月号と8月号で、官能評価データを統計的に解析するための基本的な方法を紹介してきました。
 官能評価のデータは人の感覚を使って得たデータですから、測定器を使って得たデータよりも、個人差や外部環境の影響を受けやすいものです。
 したがって、統計的方法の選択に関して、あまりに厳密性を求めても意味がない反面、感覚を使って得たデータであるからこそ、科学的に、すなわち、 統計学的に解析をして、結果に普遍性を持たせることが重要です。
略歴

内田 治(うちだ おさむ)
東京理科大学大学院修士課程終了
現職
東京情報大学総合情報学部 准教授
著書
JMPによるデータ分析(東京図書)
すぐに使えるExcelによるアンケートの集計と解析(東京図書)
ビジュアル 品質管理の基本(日本経済新聞社)
ほか

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