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食品の官能評価について
コンサルティング室 齋藤 希
食品はもちろん食べる為のものである。しかし、そのおいしさなどを評価するには、味覚だけではなく、味覚を含めた五感(視覚、聴覚、 触覚、味覚、嗅覚)が大きく関わる。
食品をその人の五感を利用して、食品がおいしそうに見えるか、実際においしいか、風味はどうか、食感はどうか、場合によっては、異なった味や臭いを感じないかなどの何らかの評価を行うことが官能評価である。
 官能評価は、食品の開発段階から製造、流通、消費に至る様々な取扱い段階で行われているが、本稿ではその官能評価を官能検査として実施する為のポイントと、官能検査を実際に行うパネリスト選択のための選抜テスト実施例を紹介する。

1.官能検査における留意事項

平成17年に厚生労働省と農林水産省が示した「食品期限表示の設定のためのガイドライン」の中に官能検査についての記載が以下のようにある(以下、ガイドライン抜粋)。
 『一般に主観的な項目(指標)と考えられる「官能検査」における「色」、「風味」等であっても、その項目(指標)が適切にコントロールされた条件下で、適切な被験者により適切な手法によって実施され数値化された場合は、主観の積み重ねである「経験(値)」とは異なり、客観的な項目とすることが可能と判断される』とある。
このことから、官能項目(指標)を適切にコントロールした条件下で、適切な被験者により適切な手法によって実施し、数値化することが必要である。
その為に以下のポイントに留意することが必要である。
 (1)官能検査の実施目的を明確にする。
 (2)官能検査の実施目的にあったパネリストを選択する。
 (3)実施目的にあった官能検査手法(例:2点比較法)を選択する。
 (4)パネリストが適切な検査を行えるような環境を整える。
 (5)統計的解析手法を適用する。
このうち、(4)については検査の目的などによっても異なるが、例としては以下のような点が挙げられる。
・実施する部屋・場所について
特有の臭いがなく、快適な温度、湿度に調節する。騒音がせず、適度な明るさを有する場所を選択する。
・使用する容器や器具について
基本的には臭いや色、模様がなく、全員が同じものを使用する。
・試料温度について
対象となる食品を実際に食べる時の温度で試食する。
低温の試料は、冷蔵庫や冷凍庫から出した時間や温度を一定にする。
・試食量
液体では舌全体を覆う量、固体では噛み応えや舌触りなどを評価できる量
・提示順
パネリストごとに試食順のバランスをとる。
・実施時間
空腹でも満腹でもない時間帯に実施する。
・うがい
検査の始め及び試料と試料の間及び必要と感じるタイミングに水(蒸留水やイオン交換水など)にて口中をあらためる。

2.パネリストの選定

分析型官能検査を実施するためには、試料間の差や標準品との差を判断するため、五感について鋭敏な感度が必要である。
 このため、官能評価パネリスト選定スクリーニングなどを行い、鋭敏な感度を有しているかの確認をし、パネリストを選択する。
嗜好型官能検査を実施するためには、消費者の嗜好を的確に評価できることが必要である。例えば、ターゲットとする年齢層などのように、検査の実施目的にあったパネリストを選択することが必要である。
また、以下のような要因もパネリストを選択するために重要な要素である。
 (1)心身ともに健康である。
 (2)食品に関する知識、経験を有している。
 (3)意欲的で関心が高い。
 (4)偏見がないこと。
 (5)気軽に参加できること。
官能評価パネリスト選定スクリーニング(5味)実施例

1.選定方法

5味識別テストを採用する。
5味(甘味・酸味・塩味・苦味・旨味)溶液を準備し、当てはまる味を被験者に回答させる。
1) 5味(甘味・塩味・苦味・酸味・旨味)溶液の調製
イオン交換水または蒸留水を用いて、各味の溶液を調製する。
各味の溶液の組成及び濃度を表-1に示す。
滅菌の必要はない。
表-1 5味溶液の組成及び濃度
味の種類 呈味物質 試験用(w/w)%
甘味 スクロース 0.4
酸味 酒石酸 0.005
塩味 塩化ナトリウム 0.13
苦味 カフェイン 0.025
旨味 グルタミン酸ナトリウム 0.05
2) 実施手順
(1)官能検査実施前に、各味の溶液を室温に戻す。
(2)各味の溶液を1個ずつ及びイオン交換水または蒸留水2個の合計7個を準備し、これらを試験液とする。
(3)試験液に記号をつける。
 (但し、記号の効果・順序の効果などの影響が出ないように、ランダムに記号付けすること)
(4)各被験者に対して、プラスチック製のコップ7個及び口をすすぐためのイオン交換水又は蒸留水を適量準備する。
(5)7種類の試験液を別々のコップに必要量採取し、被験者に味を識別させ、回答用紙に記入させる。
3) 判定
全ての味を識別できた被験者のみ、適合と判定する。
4) 注意事項
(1)スクリーニングを行なう環境は、周囲の影響を極力受けないようにする。
(2)試験液を入れる容器は、嗅覚、視覚、味覚などに影響を及ぼさないものとする。
 (推奨:無地プラスチックコップ)
(3)個人情報の扱いに注意する。
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参考文献
おいしさを測る 古川秀子 幸書房
 新版 食品の官能評価・鑑別演習 (社)日本フードスペシャリスト協会編 建帛社
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