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食品事業者にかかわる食品関連法活用へのトピックス
第7回 食品衛生法の基本となる規定類 ![]()
湘南ISO情報センター
矢田 富雄
今回は、食品関連法活用へのトピックスの最終回である。食品に係る法令規制要求事項を、法取り扱いの主体者(法執行者及び法受益者(法遵守をする者))としてではなく法関連事項を情報として活用するユーザーとしての立場から、そのトピックスを述べてきた。今回は食品衛生法の基本となる規定類を取り上げてみる。
1.食品等事業者とは 食品衛生法は申すまでもなく執行者は厚生労働大臣であり、県知事であり、市長であり、保健所長であり、特別区長であり、食品衛生監視員である。また、表示の部分は消費者庁長官が関連する。一方、受益者は食品等事業者及び消費者である。この、食品等事業者に関しては、法第3条第1項に規定されている。なお、食品衛生法では消費者に対して求める規定はないが、食品安全基本法第9条に食品安全確保の観点から求められる責務が示されている。
この規定を見ると、食品若しくは添加物を販売しなくても、不特定若しくは多数の者に食品を供与する者は食品等事業者である。したがって、食品の試作サンプルを不特定の者に提供する者も食品衛生法上の食品事業者であり、事前に安全性の確認などが必要となる。また、かつては、学校給食や病院給食を営む事業者は食品衛生法の対象ではないとされたこともあるが、現法規では明確に対象とされている。ただし、学校給食や病院給食を営む事業者に適用される法条項は食品衛生法第62条第3項に明確にされている範囲である。 2.食品とは食品衛生法で食品とは、すべての飲食物をいうのであるが、薬事法に規定する医薬品及び医薬部外品は含まないと法第4条で規定されている。薬事法に規定する医薬品及び医薬部外品以外はすべての飲食物が食品衛生法の対象となる。
3.販売等が禁止される食品
食品として販売するために、採取し、製造し、輸入し、加工し、使用し、調理し、貯蔵し、若しくは陳列してはならないものがある。食品衛生法においては「飲食に起因する衛生上の危害の発生を防止し、もつて国民の健康の保護を図ることを目的とする」との観点から、関連各条項において食品として販売できるものとできないものとを明確に区別している。例えば、第11条第1項で厚生労働大臣は販売の用に供する食品若しくは添加物に関して基準を定めることができるとされ、第11条第2項にはこの基準に合わないものは販売できないと定められている。
一方、法関連各条項に基準が定められていなくとも、法第6条の各号に示される食品は、例外を除いて、販売が禁止されている。本来は、法第6条の各号に規定されているような食品は販売してはならないものである。しかしながら、伝統的な飲食物のなかには、この第6条に該当すると考えられるものがあり、これまでの経験から、特に飲食する人に危害を与えることがないことが判明しているものもある。また、その処置方法によっては人の健康を損なうおそれがないようになるものもある。そのことを考慮して除外する規定があるのである。 しかしながら、食中毒が発生した時には、必ずしも迅速にその原因物質を確認できるとは限らず、、そのような情況のもとでは、その原因が第6条各号に示すような飲食物によるとの疑いがもたれるときには迅速に行政処分を取れるようにする必要があり、この条項が設定されたのである。そのような観点からは、まさに、食品衛生法の基本的な規定である。 ここで、第6条と第11条との関係を述べてみる。1例を示すと、現在話題の放射能に汚染された食品は、2012年3月の時点では第11条第1項にもとづく基準が定められてなく、暫定基準値が示されているのみであったことから、上記規定の第6第2号によって規制されていた。しかしながら、2012年4月1日からはその基準値が食品衛生法第11条第1項で定められたことから、規制の対象条項は第11条第2項となり、基準値を超えるものは販売が禁止されたのである。 法第6条を次に示す。
上記第6条で販売や提供ができないと禁止されている食品は「人の健康を損なうおそれがあるかどうか」がその判断基準となっており、法律でその許容水準が明確に決まっているものはよいが、決まっていないものは判断に迷うことになる。例えば、食品中にボツリヌス菌が存在する場合は、病原微生物に汚染されているのであるから人の健康を損なうおそれがあると考えられ、上記規定の第6条第3号で販売が禁止されるのではないかと考えられる。しかしながら、ボツリヌス菌の芽胞は、pH4.6あるいはaw0.94以下の食品の中では発芽することはなく、毒素を産生することがないので人に危害を及ぼすおそれがないことが「食品添加物等の規格基準」で明確にされているので、その範囲の食品であれば、ボツリヌス菌汚染のおそれがあっても販売等が禁止されることはないのである。 一方、人の健康を損なうおそれがある硬質異物が混入している食品は、上記規定の第6条第4号で販売が禁止される。しかしながら、人の健康を損なうおそれがない程度の異物が含まれている食品は、販売等が禁止されることはないのである。もちろん、該当食品を不潔な扱いをして、本来、混入するはずがない異物が混入しているようでは、上記第6条第4号の規定により販売等が禁止される可能性は大きい。 この異物混入に関しては、どの程度の大きさのものが人の健康を損なうおそれがあるかが論点となる。しかしながら、日本においては、その基準値が明確にされてはいない。一方、米国においてはその基準値が明確にされている。すなわち、FDAは2005年11月29日に「硬質なあるいは鋭利な異物を含む粗悪食品」という規制を発表した。その規制によれば、健康な成人では7mm未満の硬質異物であれば裂傷や重大な傷害の原因になることは殆どないとして、健康な成人を対象にする場合、7mm未満の硬質異物が含まれている食品は粗悪食品としなくてよいとしたのである。これは、米国FDAの危害要因評価委員会が、1972年から26年間の歳月をかけて、食品中の硬質なあるいは鋭利な異物が混入していた約190の事件を精力的に評価した成果である。 なお、米国FDAでは、その水産物HACCPの教育資料第一版(1996年9月発行)の中に、米国における食品企業は、一般的に3mmを超える金属異物を排除することを基準としているとの趣旨が記述されており、3mm未満の金属異物は条件を付けることなく許容できることを示唆したものと考えられる。この記述から、同時に、3mm未満の他の硬質異物に関しても許容されていると類推されるのである。 ただ、これらの数値が日本の法規制のもとで適用できるという保証はないので、硬質異物の限度値を合理的に取り扱うことはできず、日本での食品製造業者にとっては悩みの種となっている。 4.器具及び容器包装とは この法律では、直接食品に接触する器具及び容器包装に関しても、その衛生管理の観点から食品衛生法第18条第1項に規定が設けられている。それを受けて、器具はその材質について、容器包装ではその材質及び溶出試験について「食品添加物等の規格基準」に、その基準値が規定されている。これらの基準は危害要因の許容限界と考えられる。
器具及び容器包装の関する定義を以下に示す。
5.製造・出荷に関する記録の保管 食品衛生法第3条第2項には記録採取保管の規定があり、同第3項では、求められた際にはその記録を国等に提出することが求められている。
この法規定に関連しては、平成15年8月29日付けで食安発第0829001号「食品衛生法第1条の3第2項の規定に基づく食品等事業者の記録の作成及び保存について」との通達が出されている。通達が出された当時の食品衛生法では、該当規定は第1条の3第2項だったのである。 このような記録は食中毒発生時のその原因や対象範囲を特定するためのトレーサビリティを取る際に必要なものであり、注目すべき要求事項である。なお、通達によれば、中小企業とそれ以外企業とでは要求される記録内容が異なっている。中小企業者に対する要求は内容がやや簡便なものとなっている。 6.その他の注目される規格条項
以下にその他の注目される規格項目と概要を記載する
(1)法第13条;総合衛生管理製造過程の要求事項 (2)法第48条;食品衛生管理者設置の要求事項 (3)法第50条第1項;食品への有毒、有害な物質混入防止基準制定の要求事項 (4)法第50条第2項;公衆衛生上講ずべき措置の基準制定の要求事項 (5)法第51条;営業許可の基準制定の要求事項 (6)法第52条;営業許可に関する要求事項 これまで7ヶ月にわたって、法関連事項を情報として活用するユーザーとしての立場から食品に係る法令規制要求事項のなかから、いくつかをトピックス的取り上げて述べてきた。当然のことながら、食品に関連する法令規制要求事項は膨大なものがあり、その場面、場面では該当する法令規制要求事項に立ち入って詳しく解読することが必要となるが、今回、トピックスとして取り上げたものは、食品を安全衛生の側面から取扱う者にとって、特に、共通して重要なものに限っている。 以上
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