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食品事業者にかかわる食品関連法活用へのトピックス 第3回 大量調理施設衛生管理マニュアル

湘南ISO情報センター
矢田富雄
このマニュアルが厚生省(現厚生労働省)から通知されたのは1997年3月24日のことである。その前年の1996年には全国的にO-157に係る大量の食中毒事件が発生し、再発防止策の一つとしてこのマニュアルが作成されたのである。これと軌を一にして「中小規模調理施設向けの衛生管理の施策」も通知された。また、家庭の台所も食中毒発生の原因場所であるとして、その対策をまとめた「家庭でできる食中毒予防の6つのポイント− 家庭で行うHACCP(宇宙食から生まれた衛生管理)」を発行して啓蒙を図った。
 このマニュアルは食品調理における衛生管理に科学的な視点を持ち込んだものとして注目されるものであり、該当する大量調理施設のみでなく、食品加工における危害要因の管理手段を考えるとき、幅広い応用が期待できる。したがって、食品安全の仕組み構築に携わる組織の担当者や、それを支援するコンサルタント及びその仕組みの審査に携わる審査員は、不可欠な参考資料である。これら業務に係わる者は、その名前を知っているというレベルでは不十分で、どのようなことが書かれているかに関して、その意味も含めてそらんじるくらいの理解が必要である。このマニュアルの本文は12ポイントの大きさではA4で9ページ程度の内容に過ぎない。最新版は平成20年6月18日版である。ただ、このマニュアルは数々の食品安全の管理手段を提供しているが、その食品安全危害要因の許容水準を明らかにしていないので、別途、このシリーズで述べる資料に頼らざるを得ない。したがって、例えば、病原性菌の許容水準は"ゼロ"を想定しているものと考えられる。もちろん、高温に耐える芽胞を持つ菌はこのマニュアルの条件では殺菌できないが、その管理手段は別途このシリーズで述べる予定である。
 この大量調理施設衛生管理マニュアルは厚生省生活衛生局長からの通知である。通知先は各都道府県知事・各政令市市長・各特別区区長あてであり、通知を受けたものが、この内容で関係組織を指導するものである。したがって該当する組織が従わない場合は法処分の対象になる可能性はある。このマニュアルの対象は「同一メニューを1回300食以上又は1日750食以上を提供する調理施設」である。一方、「中小規模調理施設向けの衛生管理の施策の通知」は大量調理施設の定義に達しないところが対象であるが、「大量調理施設衛生管理マニュアル」の趣旨を踏まえた衛生管理が求められている。
大量調理施設衛生管理マニュアル制定の趣旨はHACCPの概念を大量調理施設に導入しようと考えたことにありその管理のポイントは下記のとおりである。
(1)原材料受入れ及び下処理段階における管理を徹底すること。
(2)加熱調理食品については、中心部まで十分加熱し、食中毒菌を死滅させること。
(3)加熱調理後の食品及び非加熱調理食品の二次汚染防止を徹底すること。
(4)食中毒菌の増殖を防ぐため、原材料及び調理後の食品の温度管理を徹底すること。
上記内容に関してどのようなものがあるか、どのように活用できるかを解説していくと次のとおりである。
(1)原材料受入れ及び下処理段階における管理を徹底すること。
  a)原料受入でトレースが取れる情報を保管すること
    (食品衛生法第3条2項の記録の採取と保管の要求事項への対応)
  b)原料の受け入れ検収を実施し、温度測定を実施して記録すること
  c)原材料を適切な温度で保管して生鮮食品は1日で使い切る量を仕入れること
    (原材料保管時に求められる保管温度を示している)
  d)野菜や果物を過熱せずに食事に供する場合は流水で十分洗浄し、必要に応じて所定の濃度の
    次亜塩素酸ナトリウムに一定の時間つけて殺菌し、十分な流水ですすぐことを求めていること。
    (100ppm;10分、200ppm;5分)。これは危害要因である病原菌の管理手段である。
(2)加熱調理食品については、中心部まで十分加熱し、食中毒菌を死滅させること。
  ここで食品の加熱殺菌温度と時間である病原菌の管理手段として75℃で1分以上という基準を
  示している。
  ただし、ノロウイルスの汚染の恐れがある食品は85℃1分以上の加熱が要求されている。
(3)加熱調理後の食品及び非加熱調理食品の二次汚染防止を徹底すること。
  ここでは、従事者の衛生管理、器具容器の殺菌条件、交差汚染の防止、使用水の管理、設備構造の
  規範(望ましい姿)など、いわゆる「前提条件プログラム」注1)に関して要求事項が示されている。
(4)食中毒菌の増殖を防ぐため、原材料及び調理後の食品の温度管理を徹底すること。
  大量調理施設衛生管理マニュアルでは、基本的には耐熱性を持つ菌は殺菌していないので食品
  中に菌がいるのである。その菌を制御するための管理手段が規定されている。
  a)加熱殺菌した食品は30分以内に提供できないものは65度以上で保管するか、10℃以下で
   保管すること。
  b)加熱後の病原菌の発育至適温度帯(50℃〜20℃)の冷却時間を管理手段として示している
   (30分以内に20℃付近、60分以内に10℃付近まで冷却)。
(5)その他の規定
  その他、手順書、記録の様式などをモデルとして示している。

注1)前提条件プログラム;調理施設全体に共通な衛生管理の手法のこと。

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