財団法人 食品分析開発センター SUNATEC
HOME >食品事業者にかかわる食品関連法活用へのトピックス 第2回 国際法と国内法との関連

食品事業者にかかわる食品関連法活用へのトピックス 第2回 国際法と国内法との関連

湘南ISO情報センター
矢田富雄
食品安全に関する国際法としてはCodex Alimentarius(コーデックス アリメンタリウス;食品基準)がある。ラテン語で、食品の基準を意味する。1962年に、国連の専門機関である食糧農業機関(FAO)と世界保健機関(WHO)が合同して、国際的に共通な食品の規格制定を決定した。その実施機関がCodex Alimentarius Commission(CAC;FAO/WHO合同食品規格委員会)である。 CAC(食品規格委員会)の役割は、食品中の有害物質限度値を決めたり、衛生的な食品の取り扱い方法を定めたりして、「Codex規格」を制定することであり、そのことにより、人の健康を保護し、公正な食品貿易を促進することを目的としている。
この「Codex規格」は、下記の種類がある。
1)「Codex Standard」
2)「Recommendation
3)「Guideline」
1)「Codex Standard」は食品規格・基準を定めたもので、ナチュラルミネラルウオーターの
  国際規格などがある。
2)「Recommendation」は実施が望ましい勧告であり、食品衛生一般原則などがある。
3)「Guideline」は実施の指針であり、Codex HACCPガイドラインなどがある。
なお、食品添加物に関しては、その審議機関としてJECFA(FAO/WHO Joint Expert Committee on Food Additives ;FAO/WHO合同食品添加物専門家部会)があり、また、残留農薬に関しては、その審議機関としてJMPR(Joint FAO/WHO Meeting on Pesticide Residues;FAO/WHO合同残留農薬専門家会議)があり、それぞれの会議において審議された内容をもとにして、それぞれの部会でCodex 規格が作成されるのである。
一方、ISO(International Organization for Standardization;国際標準化機構)の制定するISO規格も一種の国際法であり、国際規格である。この国際規格には製品の規格や仕事の規格であるマネジメントシステム規格がある。食品品質に関連する規格としては数多くの分析法が作られている。一方、食品に関連するマネジメントシステム規格としては「ISO9001」がある。1987年に制定された。瞬く間に世界各国で取り入れられていった。直接、食品安全に係るマネジメントシステム規格として最初に制定されたのは「ISO22000」であり、「ISO9001」が発行されてから約18年後の2005年の9月である。
これらの国際規格は、それ自体は法的拘束力がないように見られる。すなわち、これらの規格は、当該国が、その国の国内として法制化して初めて法的効果を持つものなのであるからである。したがって海外への輸出を行っていない企業にとっては、この国際規格を参考にすることはよいことであるが、直接、その規格に束縛されることはない。
しかしながら、国際的な商取引の場においては別の側面が見られる。これらは、国際的な商取引では法的拘束力に近い力を持つのである。ただ、これら国際規格の拘束力の特異なところは、これら国際規格より厳しい法律を各国が作ることを抑制しようとしているところにある。もちろん表示の分野においては、その国際規格に適合しないものは適合表示ができないという下限規制的なものもあるが、一般的には上限規制である。その背景には世界貿易の促進の狙いがある。
 世界貿易の自由化促進を推進しているのはWTO(World Trade Organization;世界貿易機関;1995年発足)である。このWTOに加入したほうが有利なために、世界各国がWTOに加盟しているが、その加盟の際には「WTO協定」の締結が必要である。その協定の中に「貿易の技術的障壁に関する協定(The WTO Agreement on Technical Barriers to Trade;TBT協定)」や「衛生植物検疫措置の適用に関する協定(The Sanitary and Phytosanitary Measures Agreement;SPS協定)」が含まれている。
 この「TBT協定」は、ISOなどの国際規格が存在するときには、国内では、その規格以上に厳しい規格や認証規格を作ってはいけないというものである。ただし、このことは、必ずしも加盟国が従う義務はないのであるが、仮に現存するISO規格よりも厳しい規格を制定した場合は、そのことに対して科学的な正当性を示されない限り、非関税障壁と見なされ、WTOに訴えられる可能性がある。「SPS協定」も同様で、国際規格よりも厳しい規格を制定した場合は、そのことに対して科学的な正当性を示さない限り、非関税障壁と見なされ、WTOに訴えられる可能性がある。
 例えば、「TBT協定」に関して述べてみると、食品安全の認証規格の国際規格としてはISO22000がある。しかしながら、特定の国が、その規格以上の厳しい規格を制定する場合には、その科学的な正当性を示さない限り、非関税障壁と見なされて、WTOに訴えられる可能性がある。CodexのHACCPガイドラインも一種の認証規格として使われる場合があり、その規格以上の厳しい規格を制定する場合には、その科学的な正当性を示さない限り、非関税障壁と見なされ、WTOに訴えられる可能性があるのである。一方、「SPS協定」では輸入食品に対し自国内での安全性を確保するための措置をとる場合には、Codex規格があるものは、その規格に基づいて対応することが求められる。例えば、Codexのナチュラルミネラルウオーターは、日本が要求する原水の水質基準が厳しいものであり、Codexの水質基準を超えていたので、日本は水質基準の変更を余儀なくされたのである。
このような規格、基準に関する世界との調和に関しては、国家が制定する規格や基準のみでなく、地方公共団体や非政府機関が制定するものに対しても制約が及ぶのであり、世界との調和を守るように国家が指導していくことが求められている。独自の厳しい規制や規定を制定する時は注意が必要である。
他の記事を見る
ホームページを見る

サナテックメールマガジンへのご意見・ご感想を〈e-magazine@mac.or.jp〉までお寄せください。

Copyright (C) Food Analysis Technology Center SUNATEC. All Rights Reserved.