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SUNATECセミナー報告

演題

食品を介して人体に危害を及ぼすノロウイルス感染症とその対策について

ご氏名

西尾 治

要旨

始めに
 厚生労働省の病因物質別食中毒統計によると近年のノロウイルスによる食中毒事件数は第1位か2位で、患者数は全体の約50%以上を占め、ノロウイルスによる食中毒防止が大きな問題となっている。

 原因食品
 ノロウイルスによる食中毒の原因食品は大きく2つに分けることが出来る。
 1.二枚貝による食中毒:二枚貝はノロウイルスに感染しているヒトが水環境をノロウイルスで汚染すると、貝の内臓にノロウイルスが蓄積される。内臓がノロウイルスに汚染されている二枚貝を生あるいは加熱不足で食することにより食中毒となる。二枚貝による食中毒事件は近年著しく減少している。
 また、簡易水道・井戸水の水源をノロウイルスで汚染すると飲料水による食中毒が起きる。
 2.食品取扱者が直接あるいは間接にノロウイルス汚染させた食品:ノロウイルス感染者のふん便、嘔吐物から膨大な量のノロウイルスが排出される。それに手等が触れると、そこには大量のウイルスが存在する。そのような手等で、直接・間接に、食品・調理器具を汚染すると食中毒となる。すなわち、ノロウイルス感染者が食品等を汚染し、食中毒を起こすことは、感染者の集団発生を起こしている。その感染者が食中毒を起こす可能性がある。このような食中毒事件は現在90%程度を占めている。
 原因となる食品は基本的に非加熱食品でヒトが素手で触れる可能性の高いもので、刺身、寿司、そうざい(サラダ、和え物)、パン、ケーキ、和菓子、餅、クレープ等である。

 予防
 二枚貝を取り扱うのは最後とし、取り扱ったシンク、調理器具、取り出した内臓等は次亜塩素酸ナトリウム液(1,000ppm)で消毒を行う。手洗いも忘れないことである。
 二枚貝、飲料水を含む食品は85℃、1分間以上の加熱を行えば食中毒は起きない。
 調理従事者は常にノロウイルスに感染しないように努める。ノロウイルス感染時には調理を避ける。また、ノロウイルスには不顕性感染も起きるので、常に排便後、調理前、食事前に手洗いを励行する。なお、トイレの個室内に手洗いを設置し、身を整える前に手洗いを実施することにより、自らの衣類、トイレを含む身の周りの環境の汚染を防ぐことができる。感染拡大防止にはトイレを含むヒトの手が多く触れる身の周りを次亜塩素酸ナトリウム液で消毒する。
 ノロウイルス患者の吐物を介して感染拡大がしばしば見られているので、嘔吐物は次亜塩素酸ナトリウム液(1,000ppm)で直ちに消毒する。

 まとめ
 ノロウイルスによる感染症・食中毒の防止には感染予防が第一である。自己の衛生管理と環境および食品をノロウイルスに汚染しないことである。予防の基本は古くから言われている手洗いと食品は可能な限り加熱することで、多くを予防できる。
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