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ビタミン(1)(ビタミンとは)
ビタミンとは
 日本国内ではビタミンは長く薬品として分類され、欠乏症などのときに飲むものとされていました。その後の規制緩和で医薬部外品や食品(サプリメント)に区分され、コンビニエンスストアでも販売されるようになり、身近なものになってきたといえます。
 ビタミンを紹介する場合,『ビタミンとは』で始まる事がよくあります。これは,ビタミンは身近でありながら、実はよく知られていないからだといえます。では,ビタミンとはいったい何なのでしょうか。大学等の教科書で言われているビタミンの定義は『微量で動物の栄養を支配し正常な生理機能を調節し、完全な物質代謝をなせる有機化合物で、ヒトの体内では生成されず、それ自体としてはエネルギー源にならない必須栄養物質』(食品化学 朝倉書店)とされています。簡単に言うと、体内で合成できない微量必須有機化合物です。これらを総称してビタミンと呼んでいます。
ビタミンの歴史
 アメリカの学者E.V.McCollumが、牛乳中にネズミの成長に必要な脂溶性と水溶性の未知の栄養素を見出したことが、ビタミンの最初の発見とされています。1915年には,これらの栄養素がFat-soluble A,Water-soluble Bと命名されています。
 18世紀には、航海中に多発する壊血病がレモンやオレンジなどのかんきつ類で予防できることが知られていました。1919年にJ.C.Drummondがこの壊血病予防因子をWater-soluble Cと命名しました。
 これらの因子Fat-soluble A、Water-soluble B、Water-soluble Cを後にそれぞれビタミンA、ビタミンB、ビタミンCと呼ぶようになりました。
 また、アジアなど米を主食とする地域では脚気が多発していました。日本でも脚気は『江戸患い(わずらい)』と言われて幕末のころに流行していました。脚気は玄米に代わり白米が食べられるようになった江戸時代から流行し、明治時代に入ると軍隊では過剰な白米の摂取により脚気が大流行しました。当時の軍医は脚気の原因は白米中心の食事にあると考え、洋食に切り替えたところ脚気の発生が減少したと言われています。しかし、当時は栄養障害説が主流であり白米に抗脚気因子が欠乏しているとされませんでした。その後,オランダの学者が白米に米糠を加えることにより脚気の発生が改善されることを発見しました。その後、日本では東京帝国大学の鈴木梅太郎教授が米糠から脚気の予防因子であるビタミンB1(発見時はアベリ酸,その後オリザニンに改称)を分離しました。 1912年には、このオリザニンの発見などの詳しい論文を発表しましたが、それよりも前にポーランドの学者が同様の物質を単離しvitalとamineの造語によりnitamine(活性なアミン)と命名していました。後に単離された大部分のビタミンはアミンでないため語尾のeを除いてVitaminとなっています。
ビタミンの種類
 ビタミンは発見された順番あるいは生理活性を表す意味からA、B、Cと付けられましたが、その後の研究により重複していたり実は効力が無かったりで欠番になったりしています。また、ビタミンB14、ビタミンBP、ビタミンI(ビタミンB7)、ビタミンJ(ビタミンC2)やビタミンLは,生理活性を持つものとしてビタミンの名前がつけられましたが、本体が解明されないままいつの間にか幻となってしまいました。
 研究者により若干の相違はありますが、ビタミンは現在、4種類の脂溶性ビタミンと9種類の水溶性ビタミンがあります。また、これら以外にビタミンに近い物質として数種類のビタミン様物質があります。代表的なビタミン様物質は、ビタミンFと呼ばれていました必須脂肪酸やカロテノイド、コリン、イノシトール、p-アミノ安息香酸、カルニチン、ビタミンP(ルチン、ヘスペリジン)、リポ酸、カルニチン、オロット酸、パンガミン酸、ユビキノン(コエンザイムQ)ビタミンU(メチルメチオニンスルホニウム)、ピロロキノリンキノンなどです。国内ではビタミンという言葉は慣用的で使われますが、化合物としては多種類に渡っていますので、化合物名で呼ぶことが推奨されています。以下に代表的なビタミン名(慣用名)と化合物名を示します。
分類 ビタミン名 ビタミン活性を持つ化合物名
脂溶性
ビタミン
ビタミンA
(プロビタミンA)
レチノール、レチナール
α-カロテン、β-カロテン、クリプトキサンチン
ビタミンD
(プロビタミンD2
エルゴカシフェロール(D2)、コレカシフェロール(D3)
エルゴステロール
ビタミンE α、β、γ、δ-トコフェロール
ビタミンK フィロキノン、メナキノン、メナジオン
水溶性
ビタミン
ビタミンB1 チアミン
ビタミンB2 リボフラビン
ビタミンB6 ピリドキシン、ピリドキサール、ピリドキサミン
ビタミンB12 コバラミン
葉酸 葉酸(プテロイルグルタミン酸)
ナイアシン
(ビタミンB3
ニコチン酸アミド、ニコチン酸
パントテン酸
(ビタミンB5
パントテン酸
ビオチン
(ビタミンH)
ビオチン
ビタミンC アスコルビン酸
次回はビタミンAとビタミンDについて解説します。
参考文献
・ ビタミン総合辞典 朝倉書店
・ 最新ビタミンブック 主婦の友社
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