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必ずうまくいく!!一般的衛生管理(その6)
1.一般的衛生管理の運用確認について
 製品の品質を担保するためには、適正な一般的衛生管理が運用されているか手順書や記録を確認することが大切ですが、文書の確認のみでは正確には掌握できない場合もあります。これらを補い正確な情報を得るためには施設における仕組みの点検(現場の確認)が必要です。
2.点検を行うための要件
 点検を行うための3つの要件を以下に示します。
(1)目的
点検の項目は目的により変わります。
[1]日常管理の状況確認
[2]問題箇所の抽出
[3]クレーム再発防止策の構築
[4]原料購入先管理状況の確認
[5]製造委託先管理状況の確認
[6]購入や委託を計画している取引先の選定
(2)評価の基準
 一般的衛生管理については、国や業界が定めたガイドラインや衛生規範、自治体が独自で定めた認証制度の基準などを参考にするとよいですが、評価基準が抽象的な表現になっているものもあり、点検時に認識の差異による誤解を生じる可能性があります。チェックリストでは良・不良或いは可・不可について客観的な基準を設け、点数による判断を行えることが重要です。
(3)目標
 点検によりどのような成果を期待するかを明確にした上で開始することがのぞましいです。
3.点検する際のポイント
・点検は、工程の流れに沿って行います
・従事者の衛生的取扱い(原材料や資材の受入時、製造時、包装時、出荷時)
・従事者の管理(健康状態、入室時)
・施設設備の衛生管理
・施設設備、機械器具の保守点検
・施設や保管庫の環境
・装置の精度管理(金属探知機やX線異物検出装置、計量機器など)
・使用水の衛生管理
・各工程での微生物制御(原材料・中間品・製品の保管、加熱温度・時間、冷却)
・製造工程(適切な仕込み、交差汚染対策)
・防虫、防鼠の衛生対策
・排水及び廃棄物の衛生管理
・包装(シール、巻き締め、ラベルの表示、印字)
・食品7Sの運用状況(整理・整頓・清掃・洗浄・殺菌・躾・清潔)
点検により多くのメリットが期待できます。以下一例をあげます。
(1)施設設備の衛生管理
 拭き取り検査により微生物レベルでの清潔を確認します。ATP検査は現場ですぐに改善が行えるため、組み合わせて運用するとよいでしょう。
(2)施設設備と機械器具の保守点検
 剥れや破損の有無を確認することで異物混入の危険性を排除できます。また正常に作動しているかを確認することで故障に至る前に修理が行え、トラブルによる停止が防止できます。その結果、食品衛生面だけでなく、時間あたりの生産量も安定となり、収益面でも効果が期待できます。また労働災害の発生リスクも低くなります。
(3)防虫、防鼠
 専門業者任せにせず、内部発生させない環境づくりが大切です。そのためには整理・整頓・清掃・洗浄をしっかりと行えていることや製造時の残渣など廃棄物の適切な処理が行えていることが重要です。 
点検を継続的な取り組みとするためには
 最初に年間計画を立て、次いで月単位、週単位、日々の活動まで落とし込みます。この計画が出来上がってから取り組みを開始します。点検により指摘した箇所を改善させる場合には必ず担当者、責任者及びデッドラインを決めます。デッドラインを決めないと、指摘に対する着手・完了がずるずると遅れ、できない理由や言い訳をだらだら言わせる余地を与えてしまいます。
 点検結果が芳しくなかったり、クレームやトラブルが発生し、原因を調査していくと、手順に則って実行されていなかったことがあります。この場合、何故手順に則って実行されていないか要因を探っていくと、手順書が作成されただけで従事者が読まない手順書だったというケースがあります。読まない理由を訊くと文言が形式的であることや難解であることから、読まないではなく、実は読めないということがあります。作成した手順書は運用を開始する前に実際に作業に従事している人に内容を十分理解してもらっているかをヒアリングにより点検することも大切です。
 また導入当初の意義や内容が失われたり忘れられたりしては、方針をいくら掲示しても形ばかりのものになってしまいます。何故この仕組みを導入したのかを従事者が憶えているかについても点検することが大切です。 こういった点検を行うことにより、管理の形骸化を防止することが期待できます。
まとめ
 業務内容によって、職人気質な従事者を雇用している事業所では、職人気質がもたらす弊害として、勘や経験に頼って、作業手順やルールを軽視したり、曖昧にしてしまうことがよくあります。この場合、点検による客観的な評価結果を点数で提示させると単なる叱責や注意よりも意外にすんなりと受け入れてもらえた事例を筆者は多く経験しています。点検の結果は、客観的な証拠であるため、改善のための資源(人、モノ、お金)の必要性を経営層に具申する情報としても有効です。
 最後に「必ずうまくいく!!一般的衛生管理」は今回が最終稿となりました。つたない文書を最終稿までお付き合い下さった方々には厚くお礼申し上げます。ありがとうございました。
参考文献
1)矢野俊博編集:「実践 食品工場の品質管理」幸書房,2008.
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