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必ずうまくいく!!一般的衛生管理(その3)
1.一般的衛生管理における清掃とは
 一般的衛生管理における清掃とは、単に工場内をきれいに掃除するだけでなく、製品に及ぼす危害を排除することも含めます。従って清掃方法が適切でないと製品に危害を生じトラブルやクレームの原因につながります。本稿でいう清掃とは、乾燥環境での清掃を指し、湿潤環境で行う洗浄とは区別しています。
2.清掃における文書化・記録化について
 一般的衛生管理では、ハード(設備)とソフト(運用規則)から基準を定めています。一般的衛生管理は文書化、記録化ということが前提となっていますので、清掃においても「これは当たり前だから」「これは前からやっていることだから」という理由で、文書化しないことはあってはなりません。記録には、皆で設定し守ると約束し文書化したルールどおりに実施した作業結果に加え、そのときに気がついたことも備考欄に書いておくとそれがトラブルの前兆になることもあり、初期対応として効果的です。
 ハード面で衛生的な設備の基準を満たしていても、ソフト面で清掃が正しく運用されていなければ、一般的衛生管理の目的を達成することは出来ません。清掃を実施した結果を記録として残さなければ証拠が残らないため、トラブルやクレームが発生し調査が必要な際に本当にルールどおり実施したのかどうか判断することが出来ません。記録が無いと当事者が「きちんと決められたルールどおり行っていた」といくら言ってもそれを立証することができず、原因を特定することが難しくなります。文書化、記録化は確かに手間がかかるものですが、清掃においても上記理由より軽視せず作成と運用を行うことが重要です。
3.汚れが溜まりやすい箇所
・床、グリーストラップ、側溝、棚の下部
・冷蔵庫や冷凍庫の扉や取手、
・冷蔵庫や冷凍庫内の棚・床・壁・ファン等
・天井、照明器具などの上部
・エアコンの通風口
・フード内のダクト
・長期掲示物
・機器のボタン等々
4.清掃不足が原因で発生する問題
清掃不足によりもたらされる問題を以下に示します。
[1]埃・残渣による直接的または間接的な製品への微生物汚染
[2]汚れの蓄積による昆虫の内部発生
[3]壁や床の破損は昆虫、鼠族の温床となる
[4]粉だまりを好む昆虫の内部発生により、製品の汚染や混入の原因となる
[5]不衛生により発生したカビを好む昆虫が内部発生し、製品への汚染や混入の原因となる
[6]昆虫、鼠族による直接的または間接的な製品への微生物汚染
[7]昆虫、鼠族及びその死骸・排泄物の製品への混入
[8]整備不良や点検不足による機器の故障、ならびに機器・器具・備品の破損による製品への異物混入
鼠族は壁際を走る習性があり、壁際に原材料や製品を保管する場合には、点検時に痕跡が無いか確認ができるよう十分な隙間を設けることが必要です。
5.清掃のしくみづくり
 清掃のしくみづくりにはPDCAに従った手順で行います。
1)PLAN
・ルール作り
 [1]清掃場所 :エリアを明確にする
 [2]清掃方法 :掃き掃除、ブラッシング、掃除機などの使用
 [3]清掃頻度 :一日1回、週1回、月1回など
 [4]判定基準 :残渣、粉だまり、埃、鼠族・昆虫及びその死骸・排泄物や痕跡の有無
 [5]実施担当者と確認者を明確にする
 [6]清掃用具の保管方法:清掃用具は吊り下げ保管し、清掃用具同士が接触しないように保管する
 [7]清掃用具の識別:清掃用具は交差汚染を防止するために用途、場所に応じて色分けをする
 [8]清掃用具の交換時期:何時交換したか、次回何時交換するのか見える化する
 [9]清掃用具の整頓:定位置管理(置き場所)、定数管理(本数)
2)DO
・計画に基き清掃を実施する。
3)CHECK

・現場調査により清掃ルールの運用状況を確認する。現場に戻る。
・調査結果から問題点を見つけ出す。

4)ACTION

・問題点が見つかった場合、改善行動を現場任せにせず関係者が情報を共有しながら、原因の本質がどこにあるかを検証し実施する。
・ルールに問題があれば、内容を見直す。
・実施状況に問題があれば、正しく運用するように教育訓練などを行う。

 このようにPDCAサイクルを繰り返すことによって、製品だけでなく、会社全体のスキルがスパイラルアップしていきます。但し、PDCAを行うに当たっては、まず自社の能力を十分把握した上で、最初は確実にできることから取り組みを開始し、やればできるという成功体験を持たせることが大切です。文書化が先行したり、現場に馴染まないルール作りを行うと現場を混乱させるだけで頓挫してしまいます。関係者が目指すべき目的と内容を十分理解した上で取組みを開始することが重要です。
3.汚れが溜まりやすい箇所
 清掃は機器・器具・備品に異常・破損がないか点検することも含みますので、日常点検でチェックを行い、製造機器の故障や異物混入の発生を事前に排除する必要があります。   
 清掃のしくみが現場で機能すると気づきが広がり、汚さない工夫をするようになります。汚れがあることを認識しながら放置するということは、すなわち現場に顕在化している問題を放置していることと同じです。汚れを見つけたらすぐに清掃をするという習慣をつけておけば、問題を発見してもすぐに対処することができ、トラブルやクレームにつながる前に問題を排除することができます。正しく清掃が実施できる環境を整えるためには、まずその前提として整理・整頓をきちんと運用することが重要です。
参考文献
食品工場の点検と監査 河岸宏和 同文社出版、平成21年6月1日発行
ISO22000のための食品衛生7S実践講座
米虫節夫、角野久史、冨島邦雄 監修
(第1巻)食の安全を究める食品衛生7S(導入編)
(第2巻)食の安全を究める食品衛生7S(洗浄・殺菌編)
(第3巻)食の安全を究める食品衛生7S(実践編)
日科技連出版、2006.02.20 発行、A5版
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