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食品表示の課題と方向
宮城大学食産業学部フードビジネス学科 教授 池戸 重信
1 食品表示の本来機能と現状
 食品は、本来安全であるべきことはいうまでもないが、消費者のもとに安心とともに届けられなければならない。また、その食品に関した由来や特長など、供給サイドとして是非伝えたい、逆に消費者にとって是非知りたい情報とともに供給されるべきものである。
 食品の表示は、こうした必要な情報を供給サイドから消費者へ伝達する重要な手段の一つである。
 すなわち、表示は本来、食品の供給サイドにとって大変「重宝」で積極的に活用したいツールであった。
 しかし、近年はルールが複雑化し、その的確な対応に関する負担が少なくないことから、取り扱いに苦慮し「やっかいな」位置づけとなっているという皮肉な現象も見受けられる。
 一方、当然のことながら、消費者サイドにおいても、食品表示のルールについて正しい知識と理解を有さない限り有効な利活用は期待できない。
 ところで、現在の食品表示に関するルールは、きわめて複雑になっていることから、消費者の理解度も十分でなく、安心を伝えようとする供給サイドの努力が十分反映されていない状況にある。
 こうした背景を踏まえ、今後食品の表示ルールに関する食品供給者及び消費者としての対応のあり方について、以下に記すこととする。
2 食品表示ルールの複雑化の背景と位置づけ
 食品の表示ルールが複雑化したのは、ここ数十年のことである。農林水産省に食品表示対策室が設置されたのは平成3年であり、間もなく20年を経ることとなるが、設置当初は製造年月日表示から期限表示への移行が検討内容であった。当時はこの日付表示問題が解決した後は、どんな課題があるか?ということを心配し、同室の仕事の継続を懸念した人もいたほどであった。しかし、その後続々と食品表示に関する課題が出来たことはご承知の通りであり、隔世の感がある。
 ところで消費者が食品の表示に対して関心が高まる背景には、生産から消費に至る流通システムの変化というものがある。ここ半世紀の間、種々の食材やそれらを用いた食品は、様々な経路や段階を経て消費者の手に渡ることとなった。すなわち、極端な例になるが、昔は母親が近くの田畑で採れた作物を家庭で調理・加工して家族に提供していたものが、時代とともに、生産・加工・流通・販売・外食という多段階を経るとともに、輸送技術の発展により単に国内だけではなく国際的な経路を経るものも増え流通形態が複雑化の一途を辿るようになった。この結果「フードチェーン」という概念が生まれるようになった。また、こうした生産〜消費の間の多段階化は、効率化を追う結果としての分業化の進展でもあった。
 いずれにしても、上記のような”食”の供給形態の変化を徒競走に例えれば、以前は母親一人が全て担っていた「単独走」だったものが、今や複数ランナーによる「リレー方式」や「駅伝方式」になったとも言える。すなわち、こうしたフードチェーンの形態においては、たった一人でも故障(不正)によりまともな走り(適切な取扱い)ができないと、他の走者の努力が無駄になるばかりか、消費者に多大な被害を及ぼすことにもなる。
 一方、効率化の追求の一環として、省力化による大量販売の進展も見られ、八百屋のおばさんや魚屋のおじさんたちも着実に町から消えていった。こうした人たちは、口頭による情報伝達媒体の重要な役割を果たしてきたが、次第に無言販売に移行して行った。
 以上のような食品の流通システムの大幅な変化は、供給サイドと消費サイドとの乖離をもたらすこととなる。すなわち、供給サイドにおいては、分業化やスケールメリットを追うなどの効率化追求の結果、日常業務からいつの間にか消費者に対する意識が欠落し、本来日常的に消費者のために大事に取り扱ってきた「食べ物」が、いつしか単なる「物」になり、つい不正を犯すという状況にもなりがちとなった。反面、消費者にとっても、供給サイド、特に日頃接することの無い生産者や製造加工業者は遠い存在となってしまい、それらの分野に対する信頼感が低下する結果をもたらすこととなった。
 こうした状況の中、伝えたい情報と知りたい情報の両者の伝達方法として、表示がますます重要な位置づけとなってきた。
3 食品表示ルールの変遷
 食品表示ルールが複雑化した最初の契機は、昭和35年のにせ牛缶事件といわれている。この事件は、東京都内の消費者が、購入した牛肉の大和煮缶詰を開けてみると一匹のハエが入っていたため保健所に届けたというものである。保健所は衛生管理の観点で調査することにしたが、同缶詰の肉が牛ではなく鯨であることが判明し、これを機会に行政当局が当時販売されていた同種の缶詰の肉種判別をしたところ、20数社が販売していた牛缶のうち2社のみが本物の牛肉を使用し、あとは鯨、馬肉等であることが判った。この事件を踏まえ、昭和37年に不当景品類及び不当表示防止法(景品表示法)が制定されるとともに、昭和43年には消費者保護基本法(のちに消費者基本法)が制定された。また、消費者保護基本法において示された消費者の保護に関する施策の中には「表示の適正化」も含まれたことから、昭和45年には農林物資規格法(JAS法)が農林物資の規格化及び品質表示の適正化に関する法律に改正され、それまでの品質についての基準に加え、品質に関する表示の基準も対象となった。
 JAS法はその後、有機表示、遺伝子組換え表示、さらには業者間取引における義務表示などの新たな制度が次々と加わって行った(表−1)。
こうした、表示制度の度重なる改正の要因としては、基本的には消費者の保護や選択に資することによるものであるが、有機や遺伝子組換え表示のように国際的調和の観点や、原産地表示のように外国産との区別による国内産業の振興的観点も影響した場合がある。しかし、最も影響が大きいのは、表示不正事件の発生に伴う規制強化であると思われる。
 特に、平成14年の罰則の強化は不正表示に対する大きな抑止効果につながったと判断される(図−1)。
 いずれにしても、表示をする立場にとっては、これまで表示義務項目が増え続けていく反面、少家族化の進展等により製品も小型化し、表示スペースが減少していることから、その対応にますます苦慮しているのが現状である。
 事実、過去30年間の表示制度の推移の中で、企業として最も重要な商品マークや商標の表示が犠牲になっている例も見受けられる(図−2)。
(表−1) JAS法に基づく表示制度の変遷
(図−1) 平成14年JAS法改正による罰則強化
(図−2) 醤油のラベルにおける表示の変遷例
4 食品表示制度に関する法的位置づけ
 消費者基本法(平成16年)の基本理念には、消費者の8つの権利が規定されているが、このうち「安全が確保される権利」、「必要な情報を知ることができる権利」、「(商品などについて)適切な選択が行える権利」及び「消費者教育を受けられる権利」などが食品表示制度に関連していることを、供給サイドとしても認識する必要がある。
一方、食品安全基本法(平成15年)における食品関係事業者の責務として、「正確かつ適切な情報の提供に努力」する旨の規定がなされており、表示は、この「情報」に位置づけされる。
 更に、食料・農業・農村基本法(平成11年)においても、国が食料消費の改善及び農業資源の有効利用に資するため、食料の消費に関する知識の普及及び情報の提供その他必要な施策を講ずるものとする旨の規定がされ、同法に基づく食料・農業・農村基本計画の最新版(平成22年3月策定)において、加工食品等における原材料に関し原産地表示の義務付けの拡大、インターネット通信販売等の情報提供につき可能なものからJAS規格化、並びに生産者の品質管理・消費者対応情報の積極的提供及び取引先・消費者による適正評価の機会の増大が規定されている。
 また、平成21年9月の消費者庁の設置に先立ち、同年6月に消費者安全法が制定された。同法は消費者の消費生活における被害を防止する等のために内閣総理大臣による基本方針の策定について定めるなどの規定がなされているが、同法において、虚偽・誇大な広告・表示を事業者がすることによる事故・事態も消費者事故等として位置づけられている。
 ところで、具体的な食品表示ルールは、主として食品衛生法、JAS法及び景品表示法によって規定されているが、これらが複層していることから、企業・消費者ともに判りにくい状況にあり(図−3)、一元化に関する検討もなされている。
(図−3)食品品質表示関連法規の関係
5 消費者庁の設置と今後を象徴する新たな食品表示ルール
 汚染米の事件が契機となり、平成21年4月に米トレーサビリティ法(米穀等の取引等に係る情報の記録及び産地情報の伝達に関する法律)が制定された。個別品目については、牛・牛肉のトレーサビリティ法に続く規制である。ただし同法に基づく規制が牛・牛肉と異なるのは、きわめて対象品目の範囲が広いということである。具体的には、国産・輸入の米穀、米製品(米粉、米こうじ等)、米飯類(おにぎり、弁当、赤飯等)、米加工食品(もち、だんご、米菓、清酒、味醂等)について、名称、産地、数量、取引日、取引相手の氏名、搬入・搬出場所、用途(入荷・出荷とのロット対応は努力義務)といった情報を、企画書、仕様書、伝票などの手段によって記録せねばならず(本年10月から施行)、産地情報伝達についても義務化される(平成23年7月から施行)。
 一方、加工食品については、原料原産地表示が義務化の方向にある。本年3月に閣議決定された新たな食料・農業・農村基本計画においても、加工食品等における原材料の原産地表示の義務付けを拡大することが明記されている。
 こうした、原料原産地表示やトレーサビリティの導入については、民主党のマニフェストにも示されているものである。
 米製品がトレーサビリティの対象となったことは、他の食品への対象拡大も予想される。
一方、加工食品の原料原産地表示を実行することが困難な理由の一つに、仕入先が頻繁に変るということが挙げられている。現に、他の国でこの制度が導入されているところはない。しかし、こうした困難な事情を考慮したとしても、消費者ニーズ等に対応して制度化するとなれば、これまで同じ理由により例外扱いされていた外食分野も対象となり得るといえる。外食業界は、すでに原料原産地表示のガイドラインにより自主的な対応がなされているが、更なる実効ある導入が求められるものと思われる。
 加工食品の原料原産地表示及び米のトレーサビリティの両規制が示しているものは、生産〜販売に至るフードチェーンにおけるいずれの段階においても、原産地をはじめ個々の食品のアイデンティティを客観的に証明することが求められる方向にあるということである。
 ISO 22000:2005(食品安全マネジメントーフードチェーンのあらゆる組織に対する要求事項)においては、Codexの定義に基づく「トレーサビリティ」を求めている。すなわち、製品ロット及びその原料のバッチ、加工及び出荷記録との関係を特定できるトレーサビリティシステムを確立し、適用する」こと、そして、トレーサビリティは、直接の供給者から納入される材料及び最終製品の最初の配送経路を明確にできること、としている。
 供給サイドとしては、今後こういう要件を満たすことが求められると思われる。重要なことは、自分の責任が及ぶ所管範囲(仕入れ先から納品先まで)における必要情報の記録とその保存に尽きる。
 平成21年9月に消費者庁が設立され、食品表示規制について一元化が図られたが、同時に全国の消費生活センターとの連携強化もなされることとなった。今後は、こうした公的機関を通じたきめこまかな表示に対する問い合わせや苦情、摘発が予想される。
 また、公的機関による監視のみならず、一般消費者の協力による食品表示ウォッチャーによる監視や、食品表示110番制度もより厳しくなることが予想される。
 現に、表示違反による検挙件数も激増の状態にあり、ケアレスミスも含め日常の管理体制が的確になされるよう努めることが一層必要と判断される(図―4)。
(図−4)産地偽装表示事犯の推移[警察庁調査報告2009.9]
6 消費者にとっての食品表示ルール
 上記のように年々複雑化している食品表示制度であるが、消費者は日常の食生活において表示に対しどの程度関心があり活用しているであろうか。また、その前提となるルールについての理解度はどの程度だろうか。
 食品の表示ルールは、日常の食生活において活用することから、出来るだけ若年層において普及・啓発することが望ましいが、現在、当該分野については、小学校の高学年及び中学校の家庭科において学習する機会がある。
 このことを踏まえ、小学校6年生と中学校2年生を対象にアンケート調査を行った。その中で、「食品を買う時に表示を見るか?」についての問いに対しては、両学年とも約6割が「自分が必要な部分を見る」と答えた(図−5)。
 また、最も見る項目としては、「価格」が約9割、「期限」が約8割、「原産地」が約5割であった。ついで高い「栄養」表示については、ダイエットを気にする観点で、特に中学生女子の約半数が見ていた(図−6)。
 また、こうした若年世代に対して、表示ルールを効果的に理解させる方法としてクイズ方式を試みた。「期限表示」、「有機農産物」、「遺伝子組換え」など各分野の表示ルールについて、クイズを出し、その正解率により理解度を把握するとともに、彼らたちに興味を持って理解してもらうことがねらいである。その結果、平均の正解率は33%で、特に食品マークに関する理解は低かった(図−7)。
 こうしたクイズ方式による学習方法に対して、小学生(約3分の2)、中学生(約4分の3)ともに関心を持つという結果が得られた。
 一方、高齢者(65歳以上)と大学生についての比較アンケート結果によれば、特に女性が表示に関心が高く、かつ不満も大きいことが明らかとなった(図−8,9)。また、高齢者は男女ともに、「細かくて見にくい・大きくして欲しい」という不満の意見が強かった。現在JAS法では、「8ボイント以上」の大きさを規定しているが、表示可能面積が「150cu以下の場合は5.5ボイント以上」でもよいことになっている。
 そこで、実際に販売されている豆腐、納豆、醤油など高齢者が日常よく購入する食品5種類延べ60検体について、表示の大きさを調査したところ、5.5〜10.5ポイントの範囲で表示されていた。
 一方、高齢者を対象に「正確に認識できる大きさ」を調査したところ、「14ポイント以上」を望んでおり、明らかに実態との差があった(図−10)。
 表示ルールが厳格化し、かつ不正事件が頻発する中で、食品の供給サイドとしては、法令順守に傾注せざるを得ない状況ではあるが、表示は法令のためではなく、本来消費者のためという原点に立った対応が望まれる。
(図−5) 小中学生の食品表示に対する関心度[266名対象]
(図−6) 最もよく見る表示としては、「価格」が約9割、「期限表示」が約8割「原産地」は約5割を占めていた
(図−7)クイズによる理解度の状況
10問の平均正解率:33%
特に正解率の低い分野:食品マーク
(図ー8)高齢女性は表示に関心が高い
(図ー9)高齢者は表示に対する不満大 
7 表示の原点を考察する「表示体験試験」
 表示は、供給サイドと消費サイドとを結ぶ情報の架け橋である。
 したがって、表示が本来の目的・機能を発揮するためには、表示に関し両サイドにおける認識や理解の共有化が必要となる。
 通常、供給サイドは、常に消費者の立場、すなわち消費者の心理状況になり、理解度を考慮した検討に基づき表示を行っている。しかし、実際購入する消費サイドの心理や理解度は、必ずしもその期待通りの状況ではない。
 こういう状況を踏まえ、通常とは逆に、消費者に供給者すなわち表示をする立場に立って表示をしてもらう「表示体験試験」を試みた。
 具体的には、白地の仮想食品パッケージを作り、消費者に対し「もしあなたがこの食品を売る立場に立った場合、どういう表示をしますか?」という課題を与えて自由に表示をしてもらうというものである。
 今回の想定品目としては、話題の「冷凍餃子」とし、一般消費者34人に自由に表示をしてもらい、各人が書いた内容を整理分類した。当然ながら、人によって書かれた内容(賞味期限、原材料等)はまちまちで、その記入数にも差があった。そこで、書かれた内容のうち、「冷凍餃子」について表示が義務化されている項目を整理したものが図−11である。
 これによると、「原材料名」、「賞味期限」、「内容量」及び「調理方法」は、多くの人が記載しており関心が高く、消費者の立場で供給サイドに書いてもらいたい項目であることがわかる一方で、「保存方法」や「名称」、「冷凍食品である旨」の項目については、義務表示であるにもかかわらず書いた人は少なく、比較的関心が低い結果となった。
 ところで、義務表示になっているにもかかわらず、今回消費者が供給者の立場に立っても誰も取り上げなかった項目もある。「飲食に供する際に加熱を要するか」、「皮の占める割合」、「油で揚げている旨」、「凍結直前に加熱されたものであるか」等である。
 上記のような実態を把握した後に、体験試験を行った消費者全員に対し、現行の「冷凍餃子」に課せられている義務表示項目をその根拠とともに「種明かし」し、その後再度「表示体験試験では記載しなかったが必要と感じた項目」についてアンケート調査を実施した結果が図−12である。この結果、「保存方法」、「飲食に供する際に加熱を要するか」、「凍結直前に加熱されたものであるか」や「油で揚げている旨」を挙げた人が多く、「学習」によりその重要性を認識したいことが推測された反面、「皮の占める割合」や「名称」は少なく、消費者にとっての関心度が低いことがわかった。
 いずれにしても、当該表示体験試験は、消費者にとって表示というものの機能をあらためて認識するとともに、表示ルールの理解度アップにも有効な手法であることが明らかとなった。
(図ー11)表示体験試験で記載された義務表示事項
(図ー12)表示体験試験で記載しなかったけれど必要と感じた項目
8 食品表示制度の機能を高めるために
 これまで記したように、食品の表示ルールは各々根拠や理由があって現行の制度となっているが、表示する側である供給サイドとそれを活用する消費サイドとが必ずしも同じ認識になっているとは言い切れない。義務表示項目が増える一方で、供給サイドが苦労している割には、消費者は十分な理解に基づく活用がされているとは言えない状況にある。
 今後、加工食品について原料原産地表示が義務化されると、企業はその対応に苦慮することになる。企業としての困難性の一つに、仕入れ先が頻繁に変わることからその都度の印刷が困難であることが挙げられている。今後当該制度が加工食品に適用されるとすれば、同様の理由で例外扱いされてきた外食分野についても義務化が求められるかもしれない。
 また、いずれにしても、情報量が増え表示スペースの問題が発生すると同時に、高齢化の進展に対応した活字の大きさの問題も生じ、表示するサイドはこれらの板ばさみになることが予想される。
 原料原産地表示に対して、消費者団体は必ずしも「産地の確認=安全性の確認」という捉え方はしていないという。ただし、当該分野については消費者基本法に基づく消費者の「選択」及び「知る」権利のみならず、我が国の食料自給率の問題などにも密接に関係している。また、上記スペース問題もあることから、原産地については、必ずしも「表示」に依存することなく、その他の手段で「情報」を伝えてくれる仕組みであればよいとの意見もある。
 いずれにしても、全ての消費者が全ての表示情報を欲しているわけではないことから、表示以外の手段で必要な時に必要な情報を伝える仕組みも検討することが重要と思われる。
 具体的には、例えば価格、期限表示、原産地など大半の消費者が買い物の際に確認する項目については大きな活字とし、それ以外の項目やサービス情報は2次元コード(QRコード)に入れ込む。また、2次元コードに入れ込んだ情報は、知りたい消費者に対し店頭のモニターにて容易に拡大表示することを可能にする。表示情報について説明する専門店員を配置し、それを積極的に消費者にPRする等々の方法である。
 一方、表示は情報伝達手段の一つであり、消費者はあくまで情報を知りたいことを認識する必要がある。特に販売店においては、消費者からの問いに正確かつ適正な情報を提供することが求められることから、個々の商品及びその商品に関する情報についてのトレースバックが可能なシステムを整備しておく必要がある。
 すなわち、販売者が必要な情報は、その川上に位置する生産〜流通の各段階の当事者は常に迅速かつ正確に伝える態勢でいることが必要となる。そのためには、必ず自分のテリトリーに関して必要な事項を記録し、かつそれを保持しておくことが求められる。冷凍餃子事件が残した教訓は、フードチェーン(生産〜販売)の各段階の当事者は、常に自らが客観性を持って対外的に「シロの証明」が出来る状態にしておくことが必要であるということであった。
 また、消費者に供給者の実情を食育の一環として機会あるごとに伝えることも有効である。工場見学や農業体験などはもとより、更には表示もそのルールとセットで伝える努力が必要である。しかも、学校教育の場やクイズなど興味を抱きながら啓発することが必要と思われる。 
 「表示」は供給サイドと消費サイドとの信頼の架け橋であり、食育の入り口であることを両者が再確認することに大いに期待する次第である。
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