植物は、二酸化炭素と水から光合成により様々な有機物を作り出します。脂肪酸も光合成産物の一つですが、我々ヒトを含む高等動物は二重結合が二箇所以上ある脂肪酸を体内で全合成することができません。しかし、我々が生命を維持する上で必須であるプロスタグランジン(生理活性物質の一種)は、リノール酸やリノレン酸など一部の不飽和脂肪酸を前駆物質としているため、これらの脂肪酸がないと我々は生命活動を持続させることができません。そのため、これらの不飽和脂肪酸は必須脂肪酸と呼ばれています。我々は食事などにより必須脂肪酸を体内に取り入れ、これを原料に種々の生理活性物質を生合成することで生命を維持しているのです。不飽和脂肪酸は植物油に多く含まれており、勿論、大豆にも含まれています。
豆乳作りは、まず水に浸漬した大豆を磨砕するところから始まります。磨砕により大豆の細胞が破壊され、大豆に含まれるリポキシゲナーゼが不飽和脂肪酸に作用し、中間代謝産物である過酸化脂質を生成します。更に、この過酸化脂質にヒドロペルオキシドリアーゼが働くとn- ヘキサナールなどのアルデヒド類が生成し、これが青臭みの原因のひとつとなるのです。この機構を踏まえ、リポキシゲナーゼを欠損する大豆を原料とする、または製造工程にリポキシゲナーゼを失活させる工程を加えるなどの手段を講じることにより、青臭みを抑えた豆乳を作ることができます。 |