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ミネラルの働きとその分析方法
ミネラルとは
 地球上には100種類以上の元素があり、人体の組織や器官を構成する成分として体内に存在する元素は約60種類といわれています。このうち、酸素(O)、炭素(C)、水素(H)及び窒素(N)の4元素が94〜96%を占めており、有機物を構成しています。残りの4〜6%の元素がミネラル(無機質)となります。ミネラルは体内で合成することはできないため食品や飲料から体内に取り込んでいますが、現代社会はインスタント食品やファーストフードなどに偏りがちな食生活のため、ミネラル全般が不足しているといわれています。
 ミネラルは体内に存在する量により4つのグループに分けられます。カルシウム(Ca)などの体重1g中に10mg以上存在する元素を「多量元素」、ナトリウム(Na)、マグネシウム(Mg)などの体重1g中に1〜10mg存在する元素を「少量元素」、鉄(Fe)、亜鉛(Zn)などの体重1g中に1mg〜100μg存在する元素を「微量元素」、セレン(Se)、モリブデン(Mo)など体重1g中に存在する量が100μg以下の元素を「超微量元素」と呼びます。体内のミネラル量はわずかですが、人体を構成する各種成分又は素材となったり、生命活動に欠くことのできない代謝調節作用などの多くの生理作用と密接な関係をもっています。ミネラルは炭水化物、脂質及びタンパク質とともに、私たちの体をつくる重要な栄養素となっています。
 栄養関連制度の中では、平成16年3月の健康増進法改正に伴い「栄養機能食品」及び「栄養成分の補給ができる旨の表示」の対象となる栄養成分に亜鉛、銅及びマグネシウムの3成分が追加されています。五訂増補日本食品標準成分表では、従来別表とされていたマンガンが本表に収載されています。また、「日本人の食事摂取基準2005年版」では13種類の元素について栄養所要量またはこれに準ずる数値が示されています。
 このように、ミネラルに対する注目度はますます高まっており、近年ではミネラル高含有食品、ミネラル成分強化食品が脚光を浴びています。
ミネラルの働き
 ミネラルの働きの中でまず思いつくものは,カルシウムやリンが骨の材料となっていることではないでしょうか。ミネラルにはこのような体の構成材料としてだけでなく、表-1に示すように身体のpHや浸透圧を調節、酵素やその他の生理活性物質の構成成分など様々な生理機能があります。しかしながら、現代人は食生活の欧米化、インスタント食品・ファーストフードの増加により、ミネラルが不足・偏りがちといわれています。ミネラルには体内における最適濃度範囲があり、不足あるいは過剰になった場合、様々な症状が見られます。不足したときに見られる症状(欠乏症)と過剰に摂取したときに見られる症状(過剰症)の例を表-2に示します。
 生体には、体内中の元素の濃度をある範囲に保つような機構がありますが、その能力にも限界があります。また、拮抗作用といって、特定のミネラルだけを過剰に摂取すると他のミネラルの吸収を妨げたり体外への排出を促進したりします。そのため、私たちは日常の食事に気を配り、バランスよくミネラルを摂取する必要があるといえるでしょう。
表-1 ミネラルの生理機能
生理機能 元素の例
生体組織の構成成分 骨・歯などの構成 カルシウム リン マグネシウム
有機化合物と結合 ヘモグロビンの鉄 リン脂質のリン
生体機能の調節 pH・浸透圧の調節 カリウム ナトリウム カルシウム リン マグネシウム
神経・筋肉の興奮性の調節 カリウム ナトリウム カルシウム リン マグネシウム
酵素の構成成分 マグネシウム 鉄 銅 亜鉛 マンガン セレン
生理活性物質の構成成分 鉄 ヨウ素 亜鉛 モリブデン
表-2 ミネラルの欠乏症と過剰症
元素 過剰症 欠乏症
カルシウム Ca 泌尿器系結石 ミルクアルカリ症候群 骨粗鬆症 歯・骨の発育不良
リン P Ca出納の不平衡 副甲状腺機能の亢進 骨軟化症 発育不全
マグネシウム Mg 下痢 神経・精神疾患 不整脈 心疾患
Fe 循環器障害 嘔吐 鉄欠乏性貧血
Cu ウィルソン病 肝硬変 運動障害 神経障害 メンケス病 貧血
毛髪・皮膚の色の脱色
亜鉛 Zn 鉄・銅の吸収阻害 めまい 吐き気 嘔吐 成長阻害 食欲不振 味覚障害
免疫能低下 創傷治癒障害
マンガン Mn 神経・運動障害 パーキンソン病 骨格形成障害 生殖線機能障害
糖質・脂質代謝異常
カリウム K 高カリウム血症 血圧低下 心不全 下痢 脱水感 食欲不振 吐き気 高血圧
ナトリウム Na 高血圧 動脈硬化 心筋疾患 胃潰瘍 神経痛 精神異常 発熱 めまい
ミネラルの分析方法
 ミネラル分析における試験溶液の調製方法は、希塩酸をもちいて粉砕した食品中のミネラルを振とう抽出する方法とミネラル分析では妨害成分となる食品中の有機物を湿式または乾式の灰化により除去し、酸性溶液にする方法があります。いずれかの方法で調製した試験溶液を直接またはさらに処理した後、測定機器に供します。ミネラルの測定方法は様々ありますが、栄養表示基準では吸光光度法、原子吸光光度法、ICP(誘導結合プラズマ)発光分析法が採用されています。
 このなかではICP発光分析法が最も新しい測定方法となっています。一般にICP発光分析法は多元素一斉分析が可能で、検量線のダイナミックレンジが広く高感度の測定が行える効率的な方法として紹介されています。近年では同じプラズマを利用した分析方法として超微量元素の測定が可能なICP質量分析法も用いられるようになってきました。
 これらの前処理方法や測定方法の選択は、検体となる食品の種類、測定元素及びその含有量などを考慮して決定されます。
参考資料
独立行政法人 国立健康・栄養研究所監修:健康・栄養食品アドバイザリースタッフ・テキストブック、
第一出版株式会社(2003)
厚生労働省監修:食品衛生検査指針 理化学編2005、社団法人 日本食品衛生協会
文部科学省、科学技術・学術審議会、資源調査分科会編集:五訂増補日本食品標準成分表分析マニュアル、株式会社 建帛社(2006)
厚生労働省策定:日本人の食事摂取基準2005年版、第一出版編集部(2005)
科学技術庁資源調査会編集:日本食品無機質成分表、大蔵省印刷局
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