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食品の「安全・安心」セミナー要旨
【講演】食品工場における食品の変敗と防止技術
愛知学泉短期大学 食物栄養学科 教授 内藤茂三
 食品工場内空気中の浮遊微生物及び落下微生物は、気候因子の他に工場従業員数、物品の種類、移動、屋外空気の流入等によってそこに分布する微生物の数、種類が異なる。そしてこれらの浮遊微生物や落下微生物は、特に食品工場においては食品、食品原材料、包装容器等を汚染し、食品の変敗を招く原因となる場合が多い。
 空気中の微生物は、普通微細な塵埃に小水滴が付着し、空気中で乾燥したものであり、塵埃は人間、動物、土壌、食品原材料等に由来し、その大きさが多種多様である。大きくて重いい粒子は短時間に地上に落下しますが、再び舞い上がる可能性がある。これは鞭毛等の有無に由来する微生物の種類により大きく異なる。工場従業員の中に保菌者がいる場合は患者の咳やくしゃみによって生じた病原菌を含む小滴が原因となって感染を起こすいわゆる飛沫感染は食品腐敗、食品の安全性に関与している。
 また食品工場の従業員の中に皮膚病患者がいる場合に、その微生物が工場に飛散して食品が汚染され、白色斑点となりクレームになった場合もある。
 食品が微生物により変敗する原因の90%は工場の床等から飛散する二次汚染菌によることが数々の研究で明確にされてきた。多くの食品工場では製造終了後、多くの水を用いて工場の掃除を行う。夏期においては東海地方では夜間の気温が25~35℃となる場合が多い。このため工場内に残った水は蒸発する。この水の蒸発時の上昇気流に乗って床の付着菌が上昇し、気温が低下する朝に工場機械等の上に落下する。朝一番に製造した製品に変敗品が多い原因となってきた。特に1996年の夏期においては大腸菌O157による食中毒が多発し、その多くの原因は食品工場内にあるとされた。多くの食品工場では古くから次亜塩素酸ナトリウム、エチルアルコール、ヨードホール、酢酸等の有機酸が殺菌に用いられ効果をあげてきた。しかし次亜塩素酸ナトリウムは強力な殺菌剤ではあるが、長年の100~300ppmの使用により大腸菌群等のグラム陰性菌に対して耐性菌が生じている。またエチルアルコールを工場殺菌剤として使用する製パン工場や製菓会社ではエチルアルコールを資化する真菌(カビ、酵母)が出現し、酢酸等の有機酸を工場殺菌剤として使用する食品工場では耐酸性のカビが出現し大きな問題となっている。そこで次亜塩素酸ナトリウム、エチルアルコール、有機酸類と殺菌機構の全く異なる殺菌剤を検討し、併用することは大切ことである。食品工場の微生物に由来する食品変敗微生物について説明し、更に効果的な殺菌方法について解明する。
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