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残留農薬残留基準と「食品分類」「試験部位」について
 ポジティブリスト施行時に厚生労働省からリスクコミュニケーションが各地で頻繁に行われ、そこで説明されてきたように食品衛生法での農薬の残留基準値の適否判断は、原則、「原材料とされる生鮮食品」での基準適合が必要とされます。しかし、輸入食品の中には既に商品形態の物や簡易加工(濃縮・乾燥)の物と様々な形態があります。また、先月号でもお伝えしたとおり、「輸入加工食品の自主管理に関する指針」1)では、残留農薬においても定期的な試験検査での確認が推奨されています。検査の結果、農薬などが検出した場合に、どの食品の基準値と比較して、どのように判断を行えば良いのかは非常に複雑です。今回は、残留基準値と比較するための「食品分類」と「試験部位」について、また「加工食品」での基準値の見方を紹介します。
「食品分類」について
 各農薬の残留基準は「食品」ごとに決められていますが、個別の食品がどの残留基準と比較すればよいかを調べるのは、非常に煩雑でしたが、最近は「農産物等の食品分類表 」2)として、厚生労働省食品安全部から公表されており、非常に便利です。ここを見ていただくと分るように例えば「にんにく」の葉・芽の場合の比較する基準は「にんにく」ではなく、「その他のゆり科野菜」となります。「コダチトマト」は、楕円種のミニトマトに似ていますが、食品分類としては「トマト」でも「その他のなす科野菜」でもなく、「その他の果実」に分類されます。
 一般的には健康茶と呼ばれる飲料、麦茶・甜茶・杜仲茶などの原料は「茶」ではありません。茶はツバキ科の葉のみ「茶」として分類されます。
 一般的な思い込みと判断が異なることがありますので、まずこの「農産物等の食品分類表」を確認されることをお勧めします。
「試験部位」について
  食品衛生法では「〜表3)の食品の欄に掲げる食品については,同表の検体の欄に掲げる部位を検体として試験しなければならず〜」4)となっており、上記に記載した食品分類ごとにその試験部位が決まっています。よって、残留農薬基準の適否を判定するには、食品分類ごとに指定された試験部位を取り出し、検査することが求められます。基本的な観点は可食部となりますが、バナナやパイナップル等のように皮を含めて試験するものなど、一般的な可食部と違う場合もあり注意が必要です。
 また、試験部位という観点とは違うのですが、「茶」には残留農薬基準の適否判定には「飲料茶(浸出液)」にして検査を行う農薬も有ります(将来的には茶葉での試験に変更されると考えられます)。多くは茶葉9gに対して540ml(1g当り60ml)の沸騰水で浸出する方法が取られます。
「加工食品」について
 加工食品の検査は該当の残留基準とともにその原材料としての残留基準の両者と比較をしながら適否判定を行うことになります*。
 例えば、加工食品の代表である「小麦粉」ですが、小麦粉(残留基準は全粉粒には12農薬、全粉粒以外は17農薬のみ)に残留基準がある農薬以外は全て一律基準で規制されるのでしょうか?原則はそうだと言えますが、食品衛生法では、「原材料が食品規格に適合していれば、その加工食品についても残留農薬等の残留値によらずに食品規格に適合する」とされています。小麦粉には残留基準の無いピリミホスメチルという有機りん系農薬が時々微量検出することがありますが、小麦には1.0ppmという基準があり、この場合は微量な検出では残留基準違反では無いと判断されると考えられます。
 また逆に、「干しぶどう」のボスカリド検査において検出されたとしましょう。「干しぶどう」の残留基準は、8.5ppm、「ぶどう」の残留基準は、10ppmです。この場合は「干しぶどう」で違反になった場合、原材料の「ぶどう」の基準内で有ったとしても、干しぶどうの基準値を超えている以上、残留基準違反で有ることは確実です。 加工食品についての残留基準は、まず当該食品の基準を調べ、そこに基準が無い場合はその原材料となる食品の基準を調べて、違反の蓋然性を判断することになります。
 更に加工食品が、「試験部位」の一部を除去したもので有る場合、例えば皮むきのバナナなどから、残留基準値と同値が検出されたなら、このバナナは残留基準違反の可能性が極めて高いといえます。バナナの例はすごく簡単な例ですが、求められる「試験部位」の除去が行われている場合は、そこでの除去率も考慮したうえで残留基準を見るべきでしょう。オイルシードから油を搾取する場合は、搾取した油の基の種子重量に換算して残留基準と比較することが必要な場合もあると考えられます。

 このように自主的な農薬検査による管理を行っていく上(特に農薬が検出した場合の判断をする場合)では、「食品分類」「試験部位」「加工法」などを含めて結果の判断を行う必要があります。

*最終的な判断は各地保健所等に確認ください。
参考資料
1) http://www.mhlw.go.jp/topics/yunyu/tp0130-1aj.html
2) http://www.ffcr.or.jp/zaidan/FFCRHOME.nsf/pages/MRLs-n-bunrui
http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/iyaku/syoku-anzen/zanryu2/dl/070516-1.pdf
3) http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/iyaku/syoku-anzen/zanryu2/dl/591228-1a05-02.pdf
4) http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/iyaku/syoku-anzen/zanryu2/591228-1.html
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