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「食品衛生法」容器包装基準と陶磁器製耐熱食器
財団法人日本品質保証機構 JIS認証事業部 特別参事 遠藤洋一
 容器・包装を利用するユーザーから見れば、食品衛生法に合格した商品をすでに利用しているため、検査の過程についての知見は得られません。しかし、容器・包装を提供する側は、同法に規定するそれぞれのカテゴリに応じた規格に適合した製品を、食品メーカーをはじめ、量販店、小売店など、サプライチェーンの上流から下流にいたるさまざまな業種に供給しています。今回の改正で追加された加熱・調理に用いる容器の規格については、わかりにくい部分があるため、厚生労働省医薬食品局からQ&Aが提供されています。
 今回は、「ガラス製、陶磁器製又はホウロウ引きの器具又は容器包装の材質別規格及び器具若しくは容器包装又はこれらの原材料一般の規格の改正並びに器具及び容器包装の製造基準に係るQ&A」で説明された内容について、トピックを説明します。なお、Q&A本文は、原文のまま掲載してあります。
1.経過措置と販売
 食品衛生法には、経過措置が設けられ、製造業者、輸入業者には、期限の遵守が求められています。経過措置の詳細は、以下のとおりです。
Q1
新規格の適用はいつからか。また、在庫はいつまでに販売しなければならないか。
A1  
経過措置期間の終了後(平成21年8月1日以降)に国内製造又は輸入するものは、改正後の新規格に適合させる必要がある。
経過措置期間の終了日(平成21年7月31日)までに国内製造又は輸入するものは、改正前の旧規格に適合していれば、経過措置期間終了後も従来どおり販売できる。
Q2
製造又は輸入年月日を製品に明示する必要があるのか。
A2  
製造者及び輸入者は、平成21年7月31日までに製造又は輸入されるものであって、改正前の規格には適合しているが、改正後の規格には適合していないもの又は適合しているかどうか不明なものについて、経過措置期間の終了日(平成21年7月31日)までに製造又は輸入されたものであることが経過措置期間の終了後(平成21年8月1日以降)も記録等により確認できるようにしておくことが必要。なお、製品に直接、製造年月日又は輸入年月日を表示することを義務づけるものではない。また、流通業者に対して製造者及び輸入者と同様な義務を課すものでもない。
2.改正前に購入した容器・包装
 改正前の食品衛生法に適合しているものは、そのまま利用することができます。また、趣味の陶芸のような、販売を目的としないものは、同法の規制対象外です。陶磁器原材料には、有鉛の上絵の具やフリットのように、鉛を含有する材料があります。陶芸材料は、それほど有鉛材料が出回っていると考えられませんが、材料の購入時に注意する必要があります。
 Q5の他、Q6、Q12、Q14、Q17も参考になるかと思います。伝統的工芸品(Q6)と美術的な伝統的工芸品(Q12)で、対応が難しい面もありますが、楽焼の抹茶碗のように最初から鉛の使用を前提にしている場合、Q12のように対応するべきだと考えられます。鉛、カドミウムのような有害物の溶出量は、4%酢酸に24時間漬けた後、その酢酸への溶出量を測定します。ガラスやガラス質である釉薬やホウロウは若干酸に侵されやすいですが、お湯や水道水に浸しただけでは、溶出のリスクがはるかに低くなります。
 販促品のような不特定多数への頒布は規制対象となります。これは、Q4にも記述されているとおりです。
Q3
規格改正前に購入した食器で改正後の規格に適合しないものを営業上使用することは可能か。また、自宅で使い続けることは可能か。
A3
改正前の規格に適合しているもので、既に製造・輸入して使用されているものについて、営業上の使用を禁止するものではない。また、食品衛生法は、個人が自宅で使用することを規制するものではない。
Q4
「販売」は禁止されているが、「無償で授与する」のであれば、規制の対象外と考えてよいか。
A4
食品衛生法に規定する「販売」には、「不特定又は多数の者への販売以外の授与」も含まれることから、規制の対象となる。
Q5
陶芸教室、ガラスエ芸教室等の生徒が作るものも規制対象に含まれるか。
A5
食品衛生法では、規格に適合しない製品を、販売の用に供するために製造又は輸入することは禁止しているが、趣味として自分が使う目的で陶芸作品を作ることは禁止していない。
Q6
平成21年8月1日以降に製造又は輸入されたものは、改正後の規格に不適合であれば、たとえ伝統的な工芸品であっても、一切販売してはならないのか。
A6
伝統的工芸品であっても、販売等はできない。特殊な用途のものの取扱については、Q12、Q14、Q17参照。
Q7
平成21年7月31日までに海外で製造され、平成21年8月1日以降に輸入されるものは、なお従前の取扱いとすることはできるか。
A7
従前の取扱いとすることができるのは、平成21年7月31日までに国内で製造されたものか又は同日までに輸入されたものである。
3.新たに追加された過熱調理器具
 Q&Aでは、加熱調理を、概ね100℃を超えて調理を目的に使用される、加熱調理用、直火用、オーブン用、電子レンジ用などと明示されたもの規定しています。水の沸点が100℃なので、それ以上上昇しないようにも思われます。しかし、実際に土鍋を使って直火で調理した場合、炎と接する部分は350℃以上に上昇します。電子レンジを使う場合でも、温めではなく調理する場合、油を含んだ食材や器自身が100℃を超えることがあります。
 Q10は、加熱調理器具の適用されない例です。深さが2.5cm未満の陶板は、加熱調理器具の範疇に入りません。Q11のホウロウ引きの例では、まず2.5cm以上/未満を判断し、それから次の項、というように規格を適用します。これは、ガラス製、陶磁器製でも同様です。
Q8
加熱調理用器具とは、どのような製品を指すか。熱燗で使われる徳利等は加熱調理用器具と見なされるのか。加熱調理用と表示されていない普通のご飯茶碗、マグカップ等も電子レンジにかけることがあるが、これらについては、加熱調理用器具の区分の規格を適用しなければならないか。
A8
加熱用調理器具とは加熱して使用することを主目的として製造されたもの(鍋、グラタン皿など)又は、加熱調理用、直火用、オーブン用、電子レンジ用などと明示されたものであって、概ね100℃を超えて調理を目的に使用されるものをいう。したがって、カタログ等で料理レシピに食品の写真とともに当該製品に入れ電子レンジで○分加熱調理などの記載があるものは、加熱調理用に該当する。ただし、取扱説明書などに電子レンジでも使用できますなどの記載がある製品であっても、電子レンジでの加熱調理を目的とした製品ではなく、盛りつけた食品の温め直しなどに短時間電子レンジをかけるだけの普通のご飯茶碗やマグカップは、加熱用調理器具には含めない。
また、100℃以下で使用される熱燗の徳利や、蒸し器の中で使用され、主に水蒸気により100℃以下で加熱される茶碗蒸しの器等は、加熱用調理器具には含めない。
Q9
改正前の規格には適合しているが、改正後の規格に不適合なものは、「酢の物、梅干し、酸性果汁(オレンジジュース、レモンスカッシュ等)を長期間接触させないでください。」と使用上の注意を付ければ販売してよいか。
A9
平成21年8月1日以降に国内で製造又は輸入されるものは、新しい規格に適合していなければ、たとえ使用上の注意を付けても販売等は認められない。
Q10
ガラス製又は陶磁器製で、深さが2.5cm未満の加熱調理用ガラス器具の場合、規格値は、(1)液体を満たすことができないもの又は液体を満たしたときにその深さが2.5cm未満であるものの区分の規格値を用いるのか、それとも、(2)加熱調理用の規格値を用いるのか。
A10
(1)の液体を満たすことができないもの又は液体を満たしたときにその深さが2.5cm未満であるものの区分の規格値を用いる。
Q11
平成21年8月1日以降に製造又は輸入されたものは、改正後の規格に不適合であれば、たとえ伝統的な工芸品であっても、一切販売してはならないのか。
A11
(1)の区分の規格を適用する。このとき、当該製品が加熱調理用器具であるか否かにより適用する規格が異なり、加熱調理用器具の場合は、CdがO.5μg/c、Pbが1μg/cとなり、加熱調理用器具以外のものである場合は、Cdが0.7μg/c、Pbが8μg/cとなる。
4.さまざまなケース
 ここでは、例外について述べられています。2項のQ6とは逆に、法の適用外になるケースについて説明されています。Q13は、食品と接しない部分は適用外であると述べられています。鉛のように蒸気圧の低い金属は、焼成中に窯の中で揮発し、容器の内側に移染する可能性が示唆されており、実際に測定した場合にも、このようなケースがあると言われています。
 Q15には、有害物を溶出させない具体的な対応方法が記されています。規格を遵守するためには、原材料に鉛やカドミウムが入っていないものを利用したほうが安全です。また、無鉛とうたわれている原材料にも、不純物として自然界に存在する以上の鉛が混入する可能性もありますから、原材料の選択にも注意を払う必要があります。
Q12
絵皿や茶道で使う抹茶茶碗には規格が適用されるか。
A12
食器の用途に用いるものは規格が適用される。
ただし、美術的な価値のある伝統的な工芸品の絵皿や抹茶茶碗は、可能な限り鉛が溶出しないように工夫する配慮は必要であるが、例えば、以下のような注意書きを添付するのであれば、必ずしも改正後の規格に適合していなくても差し支えない。

例) 「本品は、鉛を含有する紬薬(又は絵の具)を使用しており、酸性になると鉛を溶出する可能性があるので、(抹茶以外の用途、特に)酢の物、果汁等酸性の食品には使用しないで下さい。」

なお、食器の形状をしているが、飾り紐がついていたり、実用に供しないよう小孔のあけられている観賞専用の絵皿は、対象外である。
Q13
食品と接触しない外側だけに有鉛の赤絵の具で上絵付している場合、食品衛生法では外側からの鉛の溶出も規格の対象か。
A13
食品衛生法では、食品と接触しない外側の面からのカドミウム及び鉛の溶出については、規格の対象外である。なお、窯で焼成する時に鉛が移染する可能性があるので十分に注意する必要がある。
Q14
婚礼・宴会用超特大装飾大皿は、婚礼等の儀式、大宴会等の特別な場面でしか使わない装飾性の高い超特大の大皿であり、1人の人が一生に何回も使わないような製品である。こうした製品まで、他の日常使用の食器等と同じ4%酢酸による過酷な条件での溶出規格の適用を受けなければならないのか。
A14
婚礼・宴会用のものであっても、平成21年8月1日以降に国内で製造又は輸入するものは、新たな規格に適合する必要がある。
なお、平成21年7月31日までに改正前の規格に適合し、適切に国内で製造又は輸入されたものは、平成21年8月1日以降も販売及び営業上使用してよい。
Q15
改正後の規格に適合したガラス、陶磁器、ホウロウ引きの器具又は容器を製造するためには、どうすればよいか。
A15
従来どおりの製造方法では、改正後の規格に適合させることができない場合、
(1) 焼成温度は、使用する紬薬に合わせて十分に高い温度とする。また、窯の改良を行う、
(2) 食品と接触する内側の面に使う上絵付け用の絵の具や釉薬(フリット)を無鉛のものに切り替える等原材料の見直しを行う、
(3) 食品と接触する内側の面には絵付けを行わない、
(4) 有鉛絵の具を使った上絵の面積を小さくしたり、上絵にセーフティー・コートを施す、
等の方法が考えられる。
5.食品用器具又は容器の製造・修理用金属
 Q16〜Q23は、金属について述べられているため、ここでは省略します。ただし、陶磁器製品でも、最近よく見かける焼酎サーバーは、金属製のコックが使用されており、「原材料一般の規格」を適用しなければなりません。
Q19
開栓したときのみ食品と触れる飲料用サーバーの金属製蛇ロや、食品が飛び跳ねた場合にしか食品と接触しない業務用食品製造器の金属部分等、常時食品と接触していない部分も鉛の含有量に係る原材料一般の規格の対象か。
また、炊飯器の内側の釜で多層構造を持つものの場合、規格をどのように適用するのか。
A19
短時間であっても食品や飲料と直接接触する部分は、原材料一般の規格の対象となる。
一部の電気炊飯器の釜のように多層構造を持つものについて、食品中に溶出するおそれのない2層目以降の部分に使用されている金属は、適用の対象にはならない。
6.試験検査
 食品衛生法では、検体の数を規定していません。
Q24
検査検体数は、何検体とらなければならないか。
A24
現在、食品衛生法のこの規格では、特段の定めをしていない。今回の規格改正の参考としたガラス、陶磁器、ホウロウ引きに関わるlSO規格では4検体使用することになっているが、検査に際しては、検体の代表性、試験成績のバラツキを考慮し、適切な検体数とされたい。
Q25
容量3L以上のホウロウ引きの器具・容器の試験片が入手できない場合、試験は、どのように試験を行えばよいか。ホウロウの表面に絵柄がある場合、どのような試験片を用いればよいか。
A25
4%酢酸を満たして試験液を調製し、測定後に表面積当たりの溶出量に換算する。ホウロウの表面に絵柄がある場合も、試験片が入手できない場合と同様に試験を行う。
財団法人日本品質保証機構
日本品質保証機構(JQA)は、昭和32年(1957)、輸出検査法による指定機関として「財団法人 日本機械金属検査協会(JMI)」設立(通商産業大臣認可)。平成5年(1993)、国際的なニーズに対応する総合的な第三者認証機関として、「財団法人 日本品質保証機構(JQA)」と名称変更され、現在に至っています。
ISO9001、14001に代表される各種マネジメントシステム規格に基づく審査登録をはじめとし、電気製品や機械製品等の安全性・性能・電磁環境特性等に関する認証・試験、計量計測器の校正・検定、JISマーク表示制度に基づく製品認証及び地球温暖化対策や環境保全に関連する審査・検証など、幅広い分野で信頼性の高いサービスを提供しています。
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