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新年に思う
社団法人 日本乳業協会 常務理事  森田邦雄
 新年明けましておめでとうございます。
 新しい年を迎え、皆様にとりまして、今年もよい年でありますように心からお祈り申し上げます。
 昨年の、米国発サブプライムローン問題が、全世界の経済に大きな影響を与え、わが国の経済もその影響を受けて必ずしも快晴というわけではありません。
 食品産業界を見てみますと、一昨年、お菓子の日付表示の偽装等があり、人への健康被害がないにもかかわらず、消費者の食品に対する見方が非常に厳しくなってきました。
 その様な中、昨年1月には中国産冷凍餃子に含まれたメタミドホスによる、3家族10名の健康被害が発生し、消費者の食品の安全性に対する不安が非常に高まりました。
 その後、9月には、事故米穀の不正規流通問題、中国における牛乳へのメラミン不正使用により、それを原料とした粉ミルクを飲んだ赤ちゃんが死亡するという重大な事件の発生、10月には、中国産冷凍インゲンから高濃度のジクロルボスが検出されるなどにより、食品に含まれる農薬等化学物質に対する不安が高まっています。
 特に中国産食品に対する消費者の見方には非常に厳しいものがあります。
 昨年9月、内閣府大臣官房政府広報室が行った調査によると、国産品と輸入品の選択に関する意識では、89.3%が国産品を選択し、その理由として安全性をあげる人が89.1%を占めています。
 わが国の、食料自給率は、家畜の飼料の輸入も勘案したカロリーベースでは40%であり、輸入食品無しには、我々の食生活は成り立たないのが現状です。
 輸入食品は消費者が考えているように危険なのか、本当はどうなのか、冷静に検討すべきときに来ているのではないでしょうか。
 昨年から冷凍食品で問題になっている、中国からの輸入食品を例にして厚生労働省が実施しています輸入食品監視の結果(平成19年)をみますと、輸入重量では、総数3,236万トンのうち、最も多いのがアメリカで1,263万トン(39.0%)、次いで多いのが中国の456万トン(14.1%)です。次に、輸入届出数では、総数182万件のうち、最も多いのが中国で56万件(31.0%)、次いで多いのがアメリカの20万件(10.8%)です。これらは何を物語っているのかといいますと、アメリカからは、穀物等の1次産品が多く輸入されており、1つの届出の輸入重量が多いことを示しています。ちなみに、穀物等の農産食品は総数1,890万トン中アメリカからの輸入は1,040万トン(55.0%)を占めています。
 中国については、1つの届出の輸入重量が少ないのですが、これは、農産加工食品の輸入総数365万トン中、中国からのものは153万トン(42%)、畜産加工食品の輸入総数96万トン中、中国からのものは32万トン(33%)、水産加工食品の輸入総数127万トン中、中国からのものは54万トン(43%)といずれも第一位を占めており、中国からは加工食品が多く、したがって、1届出の重量が少ないことがわかります。
 輸入時の試験検査の結果を見ますと、輸入届出のあった182万件は、検疫所の食品衛生監視員がすべて書類検査を行い、更に、農薬、添加物等の試験検査が20万件(11.2%)行われています。
 輸入届出のあった182万件のうち、食品衛生法に違反していた届出は実数で1,223件(0.07%)、述べ数で1,285件(1届出で複数項目の違反数を含む)でした。違反件数の最も多かった国は、中国で409件、次いでベトナムの150件、第3位はアメリカで126件でした。
 この違反件数を届出件数に占める割合で比較しますと、中国は0.07%、ベトナムは輸入届出数が34,635件ですから0.43%、アメリカは0.06%で、試験検査が行われた数に占める割合を比較すると、中国は96,784件試験検査が行われており違反率は0.42%、ベトナムは14,700件に対し違反率は1.02%、アメリカは19,475件に対し違反率は0.65%となり、更に試験検査の実施数について届出件数に対する比率を見ますと中国は届出件数に対して17.2%試験検査が行われており、ベトナムは42.4%、アメリカは9.9%となっています。
 このような数値を見てみますと、輸入食品の違反件数は届出のあったものの内0.07%と低く、それら違反の食品はほとんどが輸入が認められず、一部が既に国内に流通しているものにあっては回収されており、それほど不安を持つ必要はなく、また、他の国に比較して、中国が特別食品衛生法に違反する食品をわが国に輸出しているということではないことがお分かりいただけたと思います。
 食糧資源の乏しいわが国として、世界の食糧事情を冷静に判断し、将来にわたって食糧を安定的に確保していかなければなりません。更に、中国における食品加工の力を借りなければわが国の食生活も成り立たないことを考えますと、食品の安全性に関しては、あくまでも科学的に判断していくことを基本とすることの重要性を改めて考えていかなければなりません。今年が少しでもそうなることを期待しています。
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