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近年、食に対する健康・安全志向の高まりなど、食を取り巻く環境は刻々と複雑化しており、これに伴う新たな課題が発生している。例えば、家畜の肥育や養殖・養魚などで高い生産性を得るために、飼料添加物やホルモン剤などの動物用医薬品などが以前より用いられている。しかし、動物用医薬品の使用が増えるに伴ってそれらによる環境や生態系への影響、畜水産物への残留の問題が大きくクローズアップされてきた。このような状況下、商品への残留や食品衛生法違反のリスク調査、品質保証などの目的の為の科学的根拠として、確かな精度の動物用医薬品等の分析の必要性が高まっている。ここでは一斉分析を中心としたポジティブリスト制度に対応した動物用医薬品の分析方法について、弊財団の現状をふまえて述べることとする。 |
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動物用医薬品とは、専ら動物のために使用される医薬品のことであり、主に病気の診断、治療、予防のために使用されている。これには抗生物質、合成抗菌剤、寄生虫駆除剤などの他にホルモン剤やワクチンなどが含まれる。特に抗生物質、合成抗菌剤は感染症の治療や予防などに高い効果が得られ、抗菌性を示す天然化合物やそれらが修飾された物質を抗生物質と呼び、化学的に人工合成された抗菌性物質を合成抗菌剤と呼んでいる。また、畜水産動物の成長促進のために用いられるのがホルモン剤である。一方、飼料の効率の改善や栄養成分の補給のために飼料添加物が使用されることがある。以上のような畜水産動物の飼育段階で使用される抗生物質等の化学物質をまとめて動物用医薬品等と呼んでいる。 |
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