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腸炎ビブリオについて
1 概論
 腸炎ビブリオは、これまでにご紹介した黄色ブドウ球菌、サルモネラ属菌と同様に食中毒起因菌のひとつです。腸炎ビブリオは、一般的な海洋細菌であり、海水、海産魚介類から普通に検出されます。但し、ヒトに腸炎を引き起こすタイプの細菌は、海水、海産魚介類からは、稀にしか検出されません。食塩濃度3%で最もよく発育し、発育可能な温度帯は10〜42℃(至適温度:35〜37℃)、10℃以下では発育することが出来ません。
 したがって、主な食中毒原因食材は、海産魚介類及びそれらの加工品であり、これらが未加熱の状態で触れる可能性があるまな板、包丁などの調理器具などにも注意を払う必要があります。
 また、発育可能な温度帯(10〜42℃)を考慮すると、主に6月〜10月の比較的温度が高い時期に食中毒事例が多くなる傾向があります。
2 検査方法
 生食用鮮魚介類、生食用カキ、冷凍食品などが検査対象の場合は最確数法(MPN法)、煮かに、ゆでだこなどが検査対象の場合は、増菌培養法により検査を行います。ここでは、後者についてご説明いたします。
食材25gをアルカリぺプトン水で増菌培養後、表層部の一白金耳量をTCBS寒天培地やクロモアガービブリオなどに塗抹培養します。アルカリペプトン水を使用する理由として、海産魚介類や海水中に存在している腸炎ビブリオは、損傷を受けているものが多いため、そのような損傷菌なども発育させるためです。
 塗抹培養後、疑わしい集落について出来るだけ多く釣菌し、TSI培地、LIM培地、VP半流動培地を用いた培養試験、オキシーゼテスト、0、3、8及び10%塩化ナトリウム加ブイヨン培地に対する発育能などの確認試験を行い、腸炎ビブリオの同定を行います。
写真-1
TCBS寒天培地上に発育した集落
写真-2
TSI培地、LIM培地、VP半流動培地
写真-3
NaCl加ブイヨンに対する発育能試験
(左からNaCl濃度:0、3、8、10%)      
3 食中毒の予防
 腸炎ビブリオ菌の特徴は、その発育温度帯と好塩性にあります。したがって、腸炎ビブリオによる食中毒を予防する方法として、まずは原因となる食材の温度管理、即ち海産魚介類を低温で管理することであり、場合によっては加熱調理を行うことが重要です(腸炎ビブリオは熱に弱く、60℃の加熱で急速に死滅するとの報告があります)。
 また、食塩濃度が低いほど生育が困難になることから、海産魚介類を真水で洗うことも重要です。さらに、海産魚介類と直接触れる可能性がある調理器具に関する衛生管理を徹底することで二次汚染を防止することが出来ます。
参考文献
1) 食品衛生衛生検査指針 微生物編 2004、(社)日本食品衛生協会
2) 食中毒の科学、本田武司 著、裳華房
3) 食品微生物の科学 食品微生物T 基礎編 清水潮 著
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